第3章 オーネスト王国激震篇 18
「いやぁ、B級パーティーどころか、その実力ならA級認定されていても不思議ではありませんね」
「アンタ達程、個人の能力が無いから連携を磨いただけだよ。二十代でA級認定されてるアンタ達から言われてもむず痒くなるだけだな」
リーファンスの北東にあたる森、かつて【魔の森】と呼ばれた魔境に繋がる森でオーガ三体を無難に討伐した【緋色の剣】のバーナードに対し、【黎明】のアーノルドが賛辞を贈る。
自身の方がハンターとして格上ではあるが、目上のバーナードに対し礼をもって接するアーノルドの態度に不遜さは見えない。
最近リーファンスにやって来た【黎明】が、既に若いハンター達から受け入れられているのも納得だとバーナードは考える。
ハンターは『舐められたら終わり』という不文律があり、その為に不遜な態度をとる者も少なくない中、現状リーファンスで最上位であるA級パーティーでありながら偉そうな態度を見せない【黎明】は、事情を知らない者達からすれば礼儀正しい青年達としか見えないだろう。
しかし、バーナード達は【黎明】がマイアール帝国の諜報員である事、その任務を円滑に行う為に下手に出ている事を知っている。
こうやって、相手に取り入り情報を聞き出していくのが【黎明】の常套手段なのだろうと警戒するバーナード達だが、それを面に出すような真似はしない。
あくまで、格上のハンターが謙遜しているのを理解しているといった顔で無難な対応を続けているが、そろそろアーノルドは本題であるカイト達【幻想審判】について聞いてくる頃だろう。
そう考えているバーナードは、相手にボロを出す前に話題を有利に進める為に敢えて【幻想審判】について触れる事にした。
「この前、エルディーニ聖国への護衛依頼で【幻想審判】ってパーティーが同行したんだが、あいつ等ならアンタ達に追い付ける可能性があるな」
「ほう、そんな有望なパーティーが?」
「ああ、まだ十代のD級だけど将来性は抜群って感じたよ」
直接カイト達に確認した訳では無いが、バーナードは【竜の咆哮】の行方不明にカイト達が絡んでいると認識している。
そのため、将来性はあるが……あくまでもD級パーティーであると強調して話を進めていく。
【黎明】の情報収集能力ならば、既に自分達とカイト達が合同依頼を受けて同行した事は掴んでいるだろうし、それを隠す事は余計な詮索を受ける事になると判断した為だ。
「ほう、それほど将来性のあるパーティーなら一度会ってみたいものですね」
「俺達もそう思っているんだが、ギルド長の話によれば『修行』って言って長期で街を離れているそうだ。間違った方向に行かないように少しは指導してやりたかったんだけどな」
「それほどの逸材なら、実力的にはD級パーティーという器では収まり切らないんでしょうね」
「うちのクランにも若手はいるが、ソイツ等と比べて将来性があるってだけの話さ。このリーファンスは辺境だけあって魔物が多いから実力があれば直ぐにC級、B級に認定されているよ」
【竜の咆哮】は昇格したばかりとはいえC級パーティーであり、カイト達【幻想審判】よりも経験、実力共に格上であると暗に匂わせながら話を進めていく。
「しかし、私が聞いた話によると、元A級ハンターであるギルド長を手玉に取った逸材らしいじゃないですか」
「不遜と実力が正比例するなら……な。あの面でギルド長は若手には優しい人だからなぁ(笑)」
「ハハハッ、優しいギルド長が手を焼いているという事ですか。それなら、この街で最高峰のクランである【暁】の皆さんが気にかけて指導したくなるのも分かりますね。秩序は大事ですから」
「まあ、その理解で概ね間違いないかな(笑)」
「若手ハンターの指導まで考えるなんて、やはり貴方達はB級認定なのが勿体ないですね。ギルドも見る目が無い(笑)」
バーナードの方から話を振って、更に自分達の【幻想審判】に対する評価まで話した型だ。
この話に疑念を持とうとも、これ以上踏み入ろうとするならバーナード達【緋色の剣】を敵に回す事に為りかねない以上、アーノルド達がこの話に深入りする事は不可能に近くなった。
【緋色の剣】との敵対はクラン【暁】との敵対を意味し、そのクランマスターであるシシリアにおいてはオーネスト王国の重鎮という顔も持っている以上、マイアール帝国の諜報員であるアーノルド達が独断で敵対する事は出来ないのだから。
今後の自分達の諜報活動が不利になる事だけで終われば良いが、下手をすればマイアール帝国がオーネスト王国にチョッカイを出した型で紛争が起こる可能性があり、その場合は大義名分という面で分が悪い事になる。
内心で悪態をつきながらも、その感情を面に出さずアーノルドは自身のパーティーメンバーに対し目配せをする。
現状の理解が出来ないような馬鹿はこの場にいない筈だが、万が一でも【暁】を敵に回す事が無いようにと…………
実質的に【暁】を相手の情報収集は不可能である事を悟ったアーノルドは、この合同依頼の後に思考を向けるのであった。
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