表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/77

閑話


 『魔帝国皇太子アルベルト殿下の仇を討つ』、『マイアール帝国に復讐する』、何故か僕の責務のような重圧を感じる。

 マイアール帝国の貴族、辺境の貧乏貴族家とはいえ帝国の臣下として生きて来た僕が考える事じゃない。

 

 不思議な記憶に困惑しながらも、マディクスは自身の中に芽生えた感情に対し否定的な気持ちを持っていた。

 木剣で頭を打たれた事による記憶の混乱?

 しかし、捏造された記憶と考えるにはリアリティがあり過ぎる。

 マギクスが首を落とされる瞬間に感じていた怒りの感情、殿下と呼んで抱きしめていた魔帝国皇太子アルベルト、自身が学んだ魔帝国の滅亡話では『魔帝国皇太子』としか記されていなかった存在。

 何故、アルベルトという具体的な名が自然に出て来たのか?

 そんな名前の知り合いはいないし、自分が読んだ物語にも出て来ない名前。

 あの時感じた激情は他人事とは思えない。

 有り得ない事だと理解してはいるが、自分自身が経験したとしか思えない臨場感を感じた感情…………。


 何よりも、あの時自身が使った回復魔法、それがマディクスの思考を混迷に引き込む要因となっていた。

 既存する回復魔法とは違う魔法…………、そんな魔法の存在については聞いた事すら無い。

 自身が習って来た回復魔法とは原理からして違う魔法。

 その効果は、既存の回復魔法では考えられない程の回復効果を自身にもたらし、瀕死状態から即時の回復を促していた。

 僅かに残った意識から行う魔力操作だけで、これ程の回復効果を持つ回復魔法を行使出来たという事自体も驚きだったが、その行使する魔力操作を『何故、自分が知っていたのか?』という疑問が、脳裏に浮かぶ自身の人生とは違う記憶に信憑性を与える。


「前世の記憶? 僕は人間じゃなかった?」


 自身に行使した回復魔法を論文にして学会に提出すれば、この世界の回復魔法に革命を起こし、自身の名は歴史に刻まれるだろう。

 しかし、人間種を利するその行動を採る事に嫌悪感を抱く自分。

 それが、この魔法について口を閉ざしている理由であり、直感的にそうすべきと確信した事実であった。


「【回復魔法・極(オールヒール)】……アルベルト殿下の魔法」


 日に日に蘇って来る記憶、その中には前世の自分が遣えていた魔帝国皇太子アルベルトの事が多く含まれている。

 その皇太子から教えられた魔法、その新たな魔法理論習得の為に鍛錬に励み続けた自分。

 記憶通りに行使した魔法は全て、それまで自身が使って来た魔法の効果を大きく上廻り、マイアール帝国上位の魔法使いの行使する魔法の威力すら超えかねない。

 いや、一部の魔法に至っては、この世界における魔法の常識を覆してしまう事が容易に想像出来る。

 その事実こそが、自身に蘇り続ける記憶が本物であるという証明であり、今後の自分の行動について悩む元凶となっていた。


 選択肢としては大きく分けて二つある。


 ●後世に名を残す魔法使いとして生きて行く。


 ●前世の記憶に従い、アルベルト殿下の仇を討つべく生きて行く。


 前者を選んだ場合、下級貴族家出身の自分の功績を正しく評価される事は難しいという現実が壁となるだろう。

 この魔法知識を世界に広める為には学会を通して世界に周知させる必要があり、その行程で自分よりも上位に当たる存在が功績を横取りしてくるのは確実なのだから……。

 功績の横取りだけで済む筈も無い、口封じの為に自分は命を狙われる事が確実であり、暗殺の全てを自分が防ぎ切れるとはとても考えられない。


 では、後者を選んだ場合はどうか?

 この知識については口にする事がなければ他人が知る事はなく、今まで通りに生きて行く事も可能ではある。

 その中で、マイアール帝国の弱体化、或いは仇となる存在を暗殺する機会が巡って来るかもしれない。

 問題は、記憶が蘇って来る度に強くなる復讐心であり、これを何処まで我慢出来るか? である。


「このまま騎士学園を退学した方が良いのかな?」


 この学園に在籍し続ける限り、あのランド達からの虐めは無くなるどころか加速する可能性が高い。

 この復讐心を抱えたままで、彼等を殺さず我慢するという選択肢を選び続ける事が出来るのか?

 以前の自分なら刃向かっても無駄だと諦める事が出来たかもしれないが、今の自分には彼等など簡単に消せるだけの力がある。

 『消せる』というのも比喩的な表現ではなく、文字通り彼等の存在を地上から消し去る事すら可能な力。

 それを隠し続ける事が出来るのか?

 それなら、いっそ退学してハンターとして生きて行く方が安全性が高いのではないか? という考えがマディクスを支配する。


「そういえば、マディス兄さんが任務でオーネスト王国へ行くって言ってたな」


 ハンターとして生きて行くという考えに関連して、諜報員としてハンターの殻を被って行動している次兄の事が思い浮かぶ。

 マディクスの次兄マディスは表向きはハンターだが、マイアール帝国諜報部に所属する諜報員でもある。

 そして、次兄が所属しているパーティーはマイアール帝国と紛争を起こす可能性の高い国への諜報を任務としていた筈だ。


「帝国に対し忠誠を誓うにしても、記憶の感情に従うとしても…………オーネスト王国に向かうのは良いかも……」


 自分の気持ちに整理がつかない現状、将来的に未来の無い騎士学園に在籍し続けるよりも、ハンターとして生きて行く道を探る選択肢も現実的には悪くない。

 騎士学園の退学も事後承諾にはなるが、名門伯爵家との諍いを避けたと説明すれば父親も納得するだろう。

 もし、納得して貰えなくても、その時は家を出てハンターとして生きて行けば良い。


 何日も悩み続けたマディクスであったが、そう決めると明るい表情を浮かべる。

 独りで悩み続けた結果の考えは悪い結果に繋がる事も得てして多いが、マディクスの特殊な事情がどんな結果をもたらすのか。

 結果は神のみぞ知るである………………











































『想定通りですわね<( ̄︶ ̄)>』

いつもお読み頂きありがとうございますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ