第3章 オーネスト王国激震篇 8
「あれがアーノルドですわ」
「ふ〜ん、普通のおっさんって感じ?」
ハンターギルド内に設置された酒場に座る【黎明】を遠巻きに見る群衆の後方に僕達はいる。
ギルド長から直接警戒を促された身としては、ここハンターギルド内で接触するなんて論外だし、情報収集を始めた段階でいきなり絡むなんて馬鹿な事をするつもりも無い。
ここから見た感じ、身長の倍近い長槍とショートソードを装備した三十路のおっさん、装備自体はA級ハンターらしく高級な装備ではあるが、特に脅威を感じるって感じは受けない。
「普通の人だよね?」
「A級ハンターってあんなもんなの?」
他のハンター達を刺激しないように声を抑えているが、ルナ達の感想も僕と似たり寄ったりって感じだ。
『今の貴方達からすれば当然の感想でしょうけど、普通に人間種としてはかなり高レベルな能力値ですわよ』
●アーノルド=バーンズ
●人間 Lv 163
●HP 821
MP 291
戦闘力 718
体力 528
素早さ 583
防御 721
●槍術Lv9・剣術Lv8・武術Lv9・魔法Lv6・指揮Lv8・隠密
クラウディア様の促すような念話に応じ【鑑定】してみたが、確かに同じA級ハンターであったギルド長よりもレベル、能力値は高い。
ってか、スキルに隠密って出てるんだから真っ黒だよね~。
『マイアール帝国貴族能力末端、子爵家の二男ですが、その能力を買われて帝国情報部に与している諜報員ですわね。末端とはいえ、曲がりなりにも貴族家の出自に加え、帝国情報部での立場も併せてパーティーメンバーもそれなりの者を揃えているって事ですわ』
僕の鑑定スキルでは隠密ってスキルまでしか分からなかったが、一応創造主を名乗るクラウディア様は更に詳しい情報を得る事が出来るみたいで、ドヤ顔で僕に情報を伝えて来る。
……そのドヤ顔、何かムカつくな。
『一応? 名乗る?』
念話でドスの効いた声出してんじゃねえよ!?
まあ、こんな感じであっさりと人の考えを読める残念女神様なら、あのアーノルドっておっさんの目的も計画も看破してるんだろうけど、そういった事は一切教えてくれないんだよなぁ。
教えてくれた方が話が早いんだけど……
『甘えたがりの変態で終わりたいならそうしますよ? 貴方が【神格】をサッサと獲ればこの程度の事は特に難しい事ではありませんが、その自信が無いなら土下座して泣き付く事ですわね』
舐めた口をきいてんじゃねえぞ!?
誰が甘えたがりの変態だ!!
アンタみたいなチッパイ陥没残念女神様に土下座なんてするかよ。
僕に土下座させたいのなら、ボン・キュッ・ボンになってから言えってんだ!!
『このやり取りで何回細切れにされても懲りませんわね、このドMは。本当にあの子と同類の変態ですわね』
だからぁ、一々人を細切れにしてんじゃねえ!!
死なないってのと、死ぬ程痛いってのは同義じゃねえんだよ!!
何か気に喰わない事がある度に【時間停止】なんてトンデモな魔法を使ってまでやる事かよ!!
何処の世界にこんな拷問好きなドS女神様がいるんだよ!!
『この世界ですわね(笑)』
ひっ、開き直りやがった!?
「カイトぉ、イチャイチャしてる?」
「フンっ(# ̄³ ̄)」
【時間停止】してる筈なのに、このやり取りの気配を察するルナ達って何なんだよ?
『魔法と神の権能に親和性の高いエルフではありますが、この二人の才能は特に見所ありますわねぇ』
才能?
その一言で物理的に説明出来ない不思議現象を纏めるの?
ってか、話が逸れ過ぎぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!
●ドラン
●人間 Lv 121
●HP 852
MP 116
戦闘力 568
体力 828
素早さ 267
防御 884
●棒術Lv8・盾術Lv9・武術Lv3・魔法Lv2
このおっさんはタンクっぽいステータスしてんな。
●ネーナ
●人間 Lv 119
●HP 524
MP 183
戦闘力 492
体力 418
素早さ 832
防御 516
●ナイフ術Lv8・武術Lv6・魔法Lv3・哨戒
このお姉さんは斥候職って感じ。
●マンティス
●人間 Lv 116
●HP 556
MP 646
戦闘力 368
体力 534
素早さ 526
防御 492
●杖術Lv6・武術Lv1・魔法Lv8
このおっさんは魔法使いの定番って感じだな。
●マルキス(マディス)
●人間 Lv 101
●HP 521
MP 316
戦闘力 403
体力 399
素早さ 428
防御 413
●剣術Lv6・盾術Lv6・武術Lv6・魔法Lv2・埋伏
このおっさん一人だけ少しレベルが落ちるな。
ってか、名前も偽名を使ってるみたいだし、スキルの埋伏ってところから察するに、アーノルドに対する目付け役って感じか?
マイアール帝国情報部所属の隠密であるアーノルドですら目付けを付けられるって世知辛い話だねえ。
でも、後暗い仕事をしている人間なんだから、信用されなくても不思議じゃないのか?
異世界定番のパーティーならここに回復役が加わるところだけど、この世界の人間種の回復魔法は身体強化の亜種でしかないからこんなもんかな?
回復は各自でって感じだから、ハンターってほぼ全員に魔法のスキルがついているんだよなぁ。
スキルって、その技術をどれだけ使用して練度を上げているかの指標みたいなもんだから、身体強化を使う機会の多いハンターや軍人にはほぼ付いているのは当然の話だ。
って事で、ステータスを確認した結果、この【黎明】ってパーティー自体に脅威度は感じないって結論が出た。
でも、それは安易な考えだって事を僕は知っている。
そうやって相手をナメた結果が魔帝国の滅亡と僕自身の破滅に繋がったんだから、もう油断なんてしない。
『勝兵先勝而後求戦 敗兵先戦而後求勝』って兵法も言ってる。
先ず、勝算を構築してから奴等に対する対処を決める。
最終的にはグスタフ達と同じ目にあって貰う事は決まっているが、その過程次第で今後の難易度に雲泥の差が出るのは間違いない。
僕の目的はこんな小物を始末する事じゃないんだから、大局の為なら今回は見逃すって選択肢すら有り得る。
策はこれから考えないといけないけど、鍵になるのはマルキスって目付け役になるような気がする。
アーノルドのパーティーメンバーであるが、アーノルドの味方とは限らない存在。
利用価値があるかどうか、まだまだ情報収集の必要があるが、内部分裂を誘う策になれば有用な駒になるだろう。
『兵法を語ってますが、本で読んだ知識を実践するのは一つの才能が必要ですのよ。貴方が過去の経験からどれだけの事を学んだか、それを活かせる才能を持っているか見極めて差し上げますわ』
いつもお読み頂きありがとうございますm(_ _)m




