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序章 ロード=ベンズ6


「…んっ……痛ぅ……!?」


 湿気った岩肌、獣臭い空気の中、俺は目を覚ました。


「生きてる……のか?…………俺は」


 洞窟の外から光が差し込み、自分の傷の状態を確認しながら安堵した。

 光が差し込むと言っても森の深部である以上、薄暗い程度ではあるが、光の存在そのものが、昨晩の不安を和らげてくれる。

 痛みに顔を顰めながらも、残る不安を払拭する為、俺は洞窟内の様子を把握する事にした。





「コレ…………くらい…か…」


 洞窟はそれ程奥域もない物であったが、入口と比べると奥の方が天井も高く、それなりの広さがあった。

 只、奥の方が獣臭が強い事から、つい最近まで此処に獣もしくは魔獣が住み着いていた事が想像出来る。

 

 そんな洞窟内に、土を被った状態の腕輪が一つ落ちていた。

 腕輪に刻み込まれた装飾は細く、中心部には赤い宝石の様な物が嵌め込まれている事から、コレが高級品だと予想出来た。

 散々な目にあったが、コレが高級品なら少しは小遣いになるかもしれないなんて考えていた時、


―――――かなり酷い怪我をしてるね


「ッ!?」


 人の気配なんて無かった筈が、いきなり声を掛けられた俺は、焦って周りを見廻した……が、人は見当たらない。

 隠れる事が出来る場所なんて無いこの場所に……

 身体の痛みでぎこちない動きになってしまったが、黙って剣を構えた俺は周囲を警戒する。


―――――驚かせてしまったかな。大丈夫だよ、僕は君に何もしない……いや、何も出来ないって言った方が良いかな(笑)


 俺を落ち着かせようとしているかの様に、穏やかな声で語り掛けて来たのはコイツか?


 先程、腕輪を拾った場所に、ボンヤリと人影の様な淡い光が立っている。


―――――そんなに警戒しないでも大丈夫だよ。僕は既に死んでしまった身だ。現世の君達に何かをする事自体、本来は出来ないんだから。


 変わらず穏やかに話し掛けて来るが……


「本来? なら、何故俺には干渉出来てるって言うんだ!?」


 矛盾しているコイツの言葉に、俺は更に警戒せざるを得なかった。


―――――う〜ん、多分だけど、僕の腕輪を君が持っているからかもしれないね。この十七年、僕の言葉が聞こえた人なんていなかったし。って言っても、此処に人が来た事自体十七年ぶりなんだけどね(笑)


 魔物の中にはゴーストなんて存在もいると聞いた事がある。

 只、ゴーストはうめき声の様な声を挙げながら襲って来るって聞いた筈…………

 こんな……近所の知り合いが気楽に話し掛けて来る様な……気の抜けた感じとは思えない……

 とはいえ、安心出来る材料なんて無い事に変わりは無い!


―――――やっぱり簡単に信用は出来ないよね(笑)。~どうすれば信用して貰えるかな? そうだ、君は【回復魔法】を使えるかい?


 警戒を解かない俺に、この変な奴は困った感じを出しながら【回復魔法】を使えるか確認して来た。


 【回復魔法】というのは、【身体強化】の亜種とも言える存在で、体内の魔力を循環させ自身の免疫力、回復力を増幅させる魔法だ。

 

「起きてからずっと使ってるぞ、馬鹿にしてんのか?」


 【回復魔法】無しの状態なら、俺の怪我は完治までに数ヶ月は要するだろう。

 でも、この調子で【回復魔法】を掛け続けていれば、二週間程で完治出来る筈だ。


―――――えっ!? 今、君が使ってるのは【身体強化】だよね?


 はっ!?

 意味分かんねえ!?


―――――……いや、人間が使う魔法では…そうなのか? なら、どうすれば…………


 本気(マジ)でイミフだが、コイツは本気(マジ)で驚いているのが分かる。


―――――そうだねぇ~、君は解剖学の知識…いや、人間の身体の造りについて知識はあるかい?


「俺は騎士になるんだ。人間の何処を壊せば死ぬか、何処を壊せば死なせず無力化出来るかの知識くらいある!」


―――――あ〜、そうだよねぇ。【身体強化】で傷を治してるんだからそのくらいだよね。…………少し長くなってしまうけど、僕の話を聞いてくれるかい?


 呆れた様にも聞こえるし、何処か上から目線で見ていやがる気もしてムカつくが、


「お前……さっき、『人間が使う魔法』って言ったよな。お前、人間じゃない……人間じゃない種族だったのか?」


 聞き流したフリをしておく事も考えてたが、この上から目線が俺の警戒感を刺激した。

 コイツは地縛霊か? その程度に軽く考えていたが、明らかに人間以外の種族だ。

 ソコをはっきりさせないとヤバい気がする……


―――――えっ? ソコ!? 今更ソコ!? 


「…………」


 警戒心を刺激された俺は、コイツが答えるまで何も話さないつもりだったが、コイツはあっさりと自分の正体について語り始めた。


―――――あ〜、自己紹介がお互いにまだだったね。失礼しちゃったかな? 僕はアルベルト、種族的には魔族……だったと言った方が良いのかな?(笑)。まあ、今はしがない地縛霊みたいなモノさ


 コイツ魔族だったのか?

 親父達の世代まで戦争してた相手だが……

 コイツ十七年前に死んだって感じの事言ってたし、戦争世代そのものって事か……

 それにしては、人間に対して馴れ馴れしくないか?

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