第3章 オーネスト王国激震篇 6
「(´Д`)ハァ…本当に疲れましたわ」
【暁】のクランハウスを出て早々、普段は疲れ顔など見せないクラウディア様が心底疲れたって表情でため息を吐いた。
この高慢傲慢勘違い女神様をここまで追い詰めるなんて、シシリアさんってある意味凄い存在だよなぁ…………
【暁】との話し合いはサブマスターであるバーナードさんとの交渉だったようなもので、本来決定権を持っている筈のシシリアさんは終始残念な人と化していた。
あの姿を見ても見捨てずに支え続けているバーナードさんって、本当に苦労性な人だよね。
でも、そのおかげでエルディーニ聖国行きの時に約束していた事を正式に取り決める事が出来たので感謝してるよ(笑)
●【幻想審判】についての情報を拡散しない
●今後、依頼内容を精査した上で協力体制を敷く
●あくまでも、外部協力団体として扱う
主な取り決めはこういったところだ。
「あのクランマスターって凄い人だったよね」
「クラウディア様に対する執着心が半端なかったし、いくらバーナードさんに殴られてもカイトを勧誘してたし…………」
疲れ切っているクラウディア様と違い、端から眺めている立場だったルナ達もシシリアさんの言動にドン引きしているみたいだ。
まあ、僕も前世ではオタク予備軍みたいなものだったから、シシリアさんの言動を多少理解する事は出来る。
でも、それは僕が対象になってない部分だけだ…………
正直、僕もクラウディア様と同じくらい、精神的な疲れから疲労感を感じているし。
「他人事みたいに言ってますが、あの女は貴方達の事も狙っていますわよ。今回は私とカイトで頭が一杯でしたが、チャンスと見れば貴方達にも言い寄って来る事は間違い無いですわね」
「「」工エエェェ(´д`)ェェエエ工!?」
クラウディア様がルナ達に釘を差してくれているので黙っているが、ルナ達も決して他人事じゃないんだからね?
既に、一般的なエルフから逸脱した存在のルナ達を、あの魔法オタクが放っておく訳がない。
「でも……私やお姉ちゃんって、クラウディア様やカイトと違って普通だよ?」
「そ、そうよ。私達は常識の範囲内なんだから!!」
現実逃避したいのか、本当に自覚が無いのか分からないけど、そんな甘い事を考えてたらダメだよ?
「シシリアさんは、ルナ達二人だけでグリフォンを簡単に討伐したって報告をバーナードさんから受けているのは間違い無いよ。しかも、それはクラウディア様の鍛錬を受ける前の事で、現在の君達は歴史上でも類を見ない高レベルのエルフになってしまってるんだから」
「「ウエエェェェェェェェェ!?」」
さっきまで他人事みたいな発言をしていたルナ達に現実ってものを教えると、心底嫌そうな声をあげた。
うん、やっと現状把握が出来たみたいだね。
僕達全員、シシリアさんから見れば襲う事確定の獲物みたいなものだ(´Д`)ハァ…
とにかく、必要以上に関わらないのが一番だろう。
――――――――――【暁】クランマスター室
「おいっ、いくら何でもさっきのは酷過ぎだぞ、シシリア!!」
「でも…………どうしても、あのパーティーの力が必要になりそうなのよ。最悪でも、敵の戦力にする訳にはいかないし」
「敵? お前、何を言ってるんだ?」
【幻想審判】との会談時、シシリアの性格を誰よりも知っている筈のバーナードから見ても異常に感じたシシリアの態度について言及されていたが、シシリアの口から想定外の言葉が出てバーナードは困惑する。
現在、このクランマスター室にはシシリアとバーナードの二人しか居らず、他者の目を気にする必要も無い。
加えて、この部屋には防音の魔導具が組み込まれており、余計に他者を気にする必要が無い為、今更シシリアがバーナードに対し体裁を気にした誤魔化しをする必要が無いからだ。
「これは極秘情報だから他言無用で…………、二日前に国の情報部から麻衣帝国情報部の人間が入国したと通達されたの」
「何でそんな情報をハンターに………………その情報部の人間はハンターとして入国したって事か?」
「ええ、ハンターって肩書は情報部の人間にとって非常に都合が良いのは当然だし、ハンター相手に入国規制は掛けれないもんね」
「そりゃあ……その通りだが」
魔物を狩る事を生業とするハンターは民間の人間ではあるが、国の治安と言う面で非常に貢献度が高く、国として規制を掛ける事で他国に流出させてしまえば国の運営にすら影響を与える事となる。
それぞれの国家は軍隊を持つが、それは他国に対する防衛力という点が最上位の理由であり、それが常に魔物討伐に駆り出され戦力の分散、疲弊している状態となれば国家防衛に大きな影を残す事になる。
余程強力な魔物が出現した場合やスタンピードが起こった場合を除き、魔物の討伐はハンター協会に委託しているのが現状であり、それがハンターの存在意義と言っても過言ではない。
軍事力の維持似は経済力が不可欠であり、経済力が小さな国家程ハンターの存在が大きな意味を持つ。
オーネスト王国は弱小国家という程ではないが、この国の西部は強大な覇権国家であるマイアール帝国と隣接しており、常に圧力は掛けられているのが現実であり、軍事力の低下は国家としての命運に直結しかねない事態となる。
つまり、ハンターを蔑ろにする政策をオーネスト王国として執る訳にはいかず、ハンターの入国を制限する事は出来ないのである。
そういった事情から、オーネスト王国出身者であり、同国でクランを運営するシシリアが非公式ながらも国家の重鎮と同列扱いされているのはバーナードも当然理解している。
各国を渡り歩くハンターも多くいる中、オーネスト王国に根を下ろした活動をしている【暁】がオーネスト王国にとって重視される存在なのは当然の事であるし、シシリア程の魔法使いの流出を避けたいオーネスト王国が色々な手段で首輪を着けに来るのは当然の結果だろう。
そんな事をしなくても、クランマスターのシシリアだけでなく、殆どのメンバーをオーネスト王国出身者で構成している【暁】が、オーネスト王国に対し叛意を持つ可能性は皆無に近いのだが、それは内部の人間以外には分からない事だろう。
「で、どうするんだ?」
「どうもこうも……何も出来ないわよ。出来るのはそれとなく監視する事だけね。目的も分からないし」
「二十年近く前に、魔の森の制圧をしてから大きな軍事的活動をしていないマイアール帝国が再び動く可能性がある? いや、それを探れってのが国からの依頼か」
「非公式にね(苦笑)」
マイアール帝国から派遣されていた【竜の咆哮】が公的には消息不明となっている件の調査が目的だろうと二人は思っている。
しかし、事前情報も無い状態で、自身の思い込みで断定する事ほど愚かな事は無いという事も二人は知っている。
そう、二人が知らないのは、この件にカイトが深く関わる事…………というか、全ての元凶がカイトであるといういう事。
そして、カイト自身は相手戦力の各個撃破という点で、この事態を歓迎するという事も…………………
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