第3章 オーネスト王国激震篇 5
「……で、だ。今更お前に常識なんてもんを期待してはいないが、ソチラにいらっしゃるのはS級ハンターのクラウディア様で間違いないか? 何でお前等と一緒におられるのかは分からないが、シシリアが『師匠』と呼ぶ存在は他にはいないからな」
「何なら引き取って頂けます? この迷惑な物体……」
「貴方は黙っていなさいな。バーナードさんとおっしゃいましたか、私の事は内密でお願いしますわね。ここではB級ハンターとして登録されていますので」
話が一区切りついたところで、バーナードさんが恐る恐るといった表情で僕の隣に座る絶壁女神様に視線を向けて聞いて来た。
普通ならS級ハンターって存在と関わる機会なんて無いだろうし、人間として規格外って認識だろうから恐る恐るって反応なんだろう。
その認識は間違っていないよ……
こんな絶壁な女なんて人間なら存在しないだろうし(笑)
初対面で幼女と間違えてしまった身長と体型、こんなチビクロ絶壁が世界中のハンターの頂点なんて疑わしく思うのが普通だ。
だから、普通に返事をしたつもりだったんだけど、次の瞬間に時間を停められた上で変な空間に引きずり込まれて細切れにされてしまった。
トンデモな事を普通にしてんじゃねえぞ!!
僕は本当の事しか言ってないたろ!!!!
しかも、時間を元に戻すと同時に僕を『ゴミクズ』呼ばわりかよ!
人を細切れにしておきながら、何も無かったかのように、バーナードさんに無言の圧を掛けてるところもどうなんだ…………
一日に何回も眷属と呼ぶ存在を細切れにする女神様なんて聞いたことないぞ!!
『それでも懲りないあたり、あの子と同じドMかしら?』
変態クソトカゲと一緒にするんじゃねえ!!
この世界の神格持ちに、マトモな存在は居ねえのか!?
『それはコチラの台詞ですわ。私にはマトモな眷属に恵まれない運命でも決められているのかしら?』
この世界の摂理、運命、因果律を決める存在が運命を語ってんじゃねえぞ??
『私が言ってるのは『この世界の運命』ではなく『私自身の運命』ですわよ? 変態な上にお馬鹿なんて……本当に眷属に恵まれないですわねぇ』
だ・か・ら、神が運命を語るなって言ってんだよ!!
『神は賽をふらない』って言うだろ!!!!
だいたい、こんな馬鹿なやり取りを念話でしながら、普通にバーナードさんと話出来てるのが不思議なんだよ。
『魔法の多重展開の為に、並列思考くらいは早々にマスターしなさいな。これも修行の一環ですのよ?』
「わ、分かりました。B級ハンターのクラウディア様ですね」
「話が早くて助かりますわ。ついでに、ソコの残念なクランマスターの手綱をしっかりと握ってて貰えると助かりますわね」
「わ、私は師匠に対し、何時でも従順な弟子ですよぉ!?」
「私に弟子は居ませんわ!!」
無言の圧に対し、直ぐ様対応するバーナードさんだけど、残念女神様曰く残念クランマスターのシシリアさんが台無しにする。
頑なに残念女神様を師匠呼びするシシリアさんを、バッサリと切り捨てるのはシュールな光景だよなぁ。
事情を知らない人間が見たら、『幼女に縋る美魔女』って光景にしか映らないんだから(笑)
ってか、ルナとラナでさえもその光景を見て茫然としているし……
事情を知ってる二人からしても、ロリババアに縋り付く美魔女って凄い光景なんだろうね(笑)
「私達って弟子じゃなかったの?」
「カイトと一緒に、『眷属』って括りに入ってる?」
「そうかぁ、カイトと一緒なら問題無いね」
ルナ達が小声でやり取りしてるけど、他人の前で『眷属』って単語はNGだよ?
僕みたいに、変な空間に引きずり込まれて細切れにされちゃうかもしれないんだから気をつけないと。
『この娘達は素直だから、そんな事をする必要はありませんわ』
前から思ってたけど、アンタ僕に対してだけ当たりが強過ぎなんじゃないかな?
『ゴミクズの思考から人間レベルに達したら扱いも変えますわ』
絶壁寸胴残念女神様に言われたくない!!
最近ではルナ達もアンタと念話してるのに気付いたところで嫉妬しなくなってるくらい酷い扱いされてんだからな!!
どう考えてもやり過ぎだろ!!
『あの二人は貴方と違い、私の言葉を素直に信じる事が出来るっすだけの言葉ですわね。私が貴方を決して殺す事はないと信じているからこそ黙っているだけですわよ。出来の悪い眷属の教育をしているだけと理解しているなんて賢い娘達ですわねぇ』
殺さないって事と、死ぬ程な目にあわせるって事が同義じゃないのは認めるけど、僕がどんな目にあってるのか二人は知らないってだけじゃないのか!?
『そうとも言いますわね(笑)』
…………確かに、僕がこの短期間でかなり強くなってるのはこの残念女神様のおかげだろう。
それは素直に認めるが、この理不尽の権化を素直に信じているルナ達が心配で仕方が無いんだけど?
「し、師匠は現在、カイトさん達を鍛えていらっしゃるのですか? なら、ついでに私も一緒に――――」
「ストーカーに師匠呼ばわりされる云われはございませんわ」
「ストーカー????」
何度否定されても滅気ずにグイグイ来るシシリアさんも大したもんだけど、本当に容赦無く切り捨てるよなぁ。
でも、ストーカー呼ばわりされてるシシリアさんは自身がストーカーって認識が全く無いって感じなんだけど?
「『オーネスト王国の政治にまで関わる権力を持つ者を弟子になどしない』と何度言ったと思ってますの? 私は特定の一国に肩入れするつもりはありませんわ。それなのに、私の意思を無視して自分の欲望を押し付けてくる貴方がストーカー以外の何者だと言うのですか?」
「わ、分かりました。私はクランマスターを引退した上でオーネスト王国を出れば良いんですね(∩´∀`)∩ワーイ」
「全然分かってませんわよ!!(# ゜Д゜)」
なんか、絶妙に会話が噛み合ってないのはよく分かる。
自分の立場では弟子になれない→地位を捨てれば問題ないって発想がかなり痛すぎる。
それじゃ、エルディーニ聖国の重鎮であるS級ハンターが他国の重鎮を引き抜いたって型にしかならないんだから、更に問題が大きくなってるだけなんだけど…………
エルディーニ聖国は現代社会のスイスみたいな立ち位置なんだから、他国とそういった問題を起こす訳にはいかないだろうし。
スイスって国は永世中立国として有名だけど、それは決してお花畑な思想で言ってる言葉じゃない。
他国を侵略する事は無いが、侵略してくる国は皆殺しって発想の国民総皆兵が大前提としてある。
日本って国にはお花畑的に勘違いしている人もいるみたいだけど、戦う力無く権利は主張出来ないって当然の事なんだよね。
自身は攻めないって事と他国が攻めて来ないって事は決して同義で語られる事じゃないんだから…………
話が逸れたけど、エルディーニ聖国は他国を攻めないし攻めさせないって国是がある以上、他国を煽るような真似は出来ないよねぇ。
今回ばかりはクラウディア様の方が正論だな……残念だけど。
テンションMAX状態のシシリアさんの隣で頭を抱えてるバーナードさん、そろそろ貴方のところのクランマスターを止めて下さいね。
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