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第3章 オーネスト王国激震篇 4


クラン【暁】のクランハウス自体が立派な建物だったけど、クランマスターのシシリアさんの後頭部を問答無用で引っ叩いたバーナードさんの案内で通された応接室は想像以上に立派な内装だった。

 見ただけで分かる高級な机とソファ、壁に掛けられた絵画等の調度品も落ち着きのある雰囲気を創る事に一役買っている。

 

 …………前回来た時よりも扱いが上がってる?


「あ〜、言いたい事は分かるが、お前の扱いはウチのクランにとっても雑にする訳にはいかないって事だ。あんな魔法を見せつけられた以上、それは仕方が無いって理解してくれ」


 僕達の対面にシシリアさんと共に座ったバーナードさんが、後頭部を掻きながら気不味そうに言う。

 いきなり対応を変えたって事だから、そりゃあ気不味いよね。


「ソコはお気になさらず……。でも、ここまでの対応をしてくれる程の金額を提示出来るのか不安にはなりますね(笑)」


「いや、金額云々じゃないって言ったんだけどよ?」


「すみません、冗談ですよ。…………ところで、シシリアさん大丈夫なんですか? さっきから後頭部を抑えたまんまで俯いてますが」


 このクランのサブマスターの一人であるバーナードさんが話の主導権を持つ事は不自然ではないんだけど、その理由がマスターが痛みに悶絶したまま喋れないってのはどうなんだろう。

 戦闘職の高ランクハンターであるバーナードさんが手加減無く殴ってたんだから『痛い』で済んでるシシリアさんも大概なんだろう。

 けど、痛みに悶絶して喋れないクランマスターの襟首を掴んで応接室まで引きずって来た場面はシュールな絵面だったよ(笑)


「…………良いんだよ、いつもの事だ」


「い……いつ……もより…………い、痛い……んです……けど?」


「『いつもより痛い』じゃねえよ!! たく、毎回毎回いい加減にしろよ? お前はクランマスターだって自覚はあんのか?」


「あ……ありますよ、……………………一応」


 うん、何のドツキ漫才をも見せられてるんだ?

 目の間でコテコテのコントを始めてんじゃねえぞ?


 『いつもの事だ』と言うバーナードさんに涙目で抗議したシシリアさんだったけど、更に説教された上で睨まれてしまい、シオシオとした態度でゴニョゴニョと反論している。


「だ、だいたい、滅多にお目に掛かる事も出来ない師匠が態々いらして下さったんですから、テンションが上がっても仕方が無い――」


「何度も言ってますが、私は貴方の師匠ではありませんわ!!」


「そ、そんな〜、酷いです師匠!?」


 シシリアさんの言い訳の途中で、その言葉に被せるようにクラウディア様が否定の言葉を入れるが、涙目のままでシシリアさんはクラウディア様に抗議をするような目を向ける。

 

 僕としては…………創造主と、彼女を尊敬する(自称)弟子との間を取り持つべきではないだろうか?(笑)


『冗談でもやっていい事と悪い事があるのは分かりますわよね? この面倒な女には冗談は通じませんわよ?(# ゜Д゜)』


 冗談?

 人の心を読める女神様が何を寝言言ってんだ?

 僕が本気だって事くらいわかってるでしょ(笑)


『摂理と因果律を組み替えて、貴方とこの面倒な女を結婚させてあげましょうか?(# ゜Д゜)』


 …………押し掛け弟子って迷惑ですよね!!

 ストーカーと変わりねえな、この女!!

 こんな女がクランマスターだなんて、【暁】ってクランも、このオーネスト王国も良識ってもんが無えのか?


『クズの自衛本能が働くくらい面倒な女なんて、このシシリアくらいですわね(´Д`)ハァ…』


 いや本当に、見た目だけなら美魔女なんですけどねぇ(笑)

 【明星】なんて二つ名持ちの無詠唱魔法の遣い手、実力と名声を兼ね備えたクランマスターがこんな残念な性格だって事を、このクランのメンバー達は知ってるのか?

 しかも、バーナードさんの前だと子ども返りしてねえか?


『この二人は幼馴染み……っていうか、少し年の離れた兄と妹のような関係ですわね。変にシシリアの名声が高まったせいで、それ以上の関係に発展していませんが…………そういう関係ですわ』


 なる程、それならバーナードさんの態度も、シシリアさんの甘えたような態度も納得だ(笑)


「おいっ、何で俺を生温かい目で見てんだカイト!?」


「えッ!? いや〜、バーナードさんも色々と苦労してるんだなぁって思って」


「苦労だと? それなら何で同情や憐れみのかぁ目じゃなく、そんな生温かい目で見て来るんだ!!」


 生温かい目って(笑)

 

 ムキになってるバーナードさんはスルーして、サッサと要件を終わらせて面倒事に巻き込まれない内に帰らないとな。


「コレが先だってお約束させて頂いていた翼竜(ワイバーン)の素材売価相当のお金です。利息分として二割程上乗せさせて頂いてますのでご確認をお願いします」


「…………お、おう。」


 【異空間収納】から取り出した金貨の詰まった袋をテーブルに置き、バーナードさんに確認を促す。

 金額に関しては、エルディーニ聖国のハンターギルドに持ち込んだと仮定して、あちらでの相場をハンターギルドに問い合わせた上で算出している。

 利息分の上乗せは、迅速に口止めを行ってくれたバーナードさん達の対応に対する謝礼の意味もある。


 微妙な表情で金貨を確認し始めたバーナードさんの横で、シシリアさんが目を瞬かせながら僕を凝視してるのは何でだろ?


「カ、カイトさん、【アイテムボックス】からサラリと出してましたが、魔力総量も規格外なんですねぇ」


 ああ、そういう事ね。


「防犯って意味で、コチラにお邪魔するまで収納していただけですよ。魔力的に厳しくなる前に話を進めたかったので、不躾な対応になってしまい申し訳ないです」


 自分の【異空間収納】が、この世界で一般的に知られている【アイテムボックス】の魔法と違うのでうっかりしていたけど、普通は収納した物の容量と時間で魔力を消費するんだった(笑)

 僕の【異空間収納】は文字通りに別の空間に放り込んでるだけだから、空間接続時に魔力を消費するだけで、恒常的な魔力消費は無いからあまり気にして無かった。

 でも、話をぶち切って本題に入った言い訳になるし丁度いいか(笑)


「金額は申し分ないどころか、こんなに上乗せしてもらって良いのか? これじゃソチラに――――」


「カイトさん!! やっぱりウチに来てください!! 勿論、それなりの待遇はお約束させて頂きます。直ぐにサブマスターの――――いっ、痛あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」


「人の会話の途中に割り込んでんじゃねえ! それに、無理な勧誘はしないって自分で言ってただろうが!!」


 金貨を数え終わったバーナードさんの発言を遮って、テンションMAX状態のシシリアさんが身を乗り出して勧誘を始めたが、バーナードさんが再び後頭部に拳骨を喰らわせて黙らせた。

 かなり良い音がしてたけど、自分達のクランマスターに対する扱いじゃないよなぁ。

 この辺りが、クラウディア様の言ってた微妙な関係ってところなんだろう。


 でも、更にグダグダな空気になってしまい話が進まないのはどうにかならないかな?


『貴方にそれを言う資格があると思ってますの?』


 念話で茶々を入れてるアンタこそ資格が無えんだよ!!

いつもお読み頂きありがとうございますm(_ _)m

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