第3章 オーネスト王国激震篇 3
「お待ちしておりました。【審判】の皆様ですね」
【暁】のクランハウス……っていうか、その辺の大店と呼ばれる商会の建物よりも大きな御屋敷に訪れた僕達は、先ずギルドハウスの玄関に設置されている受付で名を名乗り、クランマスターのシシリアさんへの面会を申し入れた。
新人パーティーでしかない僕達に対し、受付を担当している女性が礼儀正しい対応をしてくれるあたり、報・連・相が徹底しているしっかりとした組織だという事が覗える。
【暁】程の大手クランとなると、依頼を直接持ち込み交渉する人間が後を絶たないので、先ずは受付で要件を伝えた後に交渉の可否を案内されるようだ。
直接依頼を持ち込まれてはいるが、下交渉をも行った上でハンターギルドに指名依頼を入れさせる方式となっているそうで、ハンターギルドとの関係性も重視しているあたり、かなり慎重な判断をするクランだという事が分かる。
いくら大手クランとはいえ、厄介事の全てを自分達で対処する事は難しいだろうし、ハンターギルドっていう超国家組織の後ろ盾を自ら棄てるなんて馬鹿のやる事でしかないしねぇ。
話は戻るが、不特定多数とまではいかなくとも、かなり多くの取り引き先を持っている筈の【暁】で受付を担当する以上、この女性が如何に優秀であろうと全ての顧客を覚える事は不可能だ。
何せ、必ず取り引き先の代表者が訪れる訳ではなく、相手が大きな組織であれば担当者が決まってはいるだろうが常に時間が取れる訳ではないだろうし、平穏な日本と違い……魔物や盗賊の跋扈するこの世界では不幸な事故も多く、不幸な事情でいきなり担当者が変わる事もあるだろう。
つまり、受付担当者が取り引き相手の顔を覚えていたところで、事情によっては意味が無い事になってしまうんだよね。
エルディーニ聖国行きの護衛依頼についての話し合いのため僕達は数度このクランハウスを訪れているが、受付担当者が僕達の顔を覚えていたって事よりも、僕達を賓客として扱うように連絡が徹底されているって事にビックリした。
だって、僕達【幻想審判】は、対外的には只の低ランクな新人パーティーでしかないんだから。
そんな僕達に対し、オーネスト王国きっての大手クランの受付担当者が下手に出るなんて、余っ程職員に対する教育が行き届いてなければ有り得ない話なんだから、僕が驚くのも当然だろう。
現代日本と比べて文明的に遅れている世界……しかも、王宮等ではなく私人の経営する組織でそこまでの教育レベルってかなり凄い事だと思うよ…………別に、ハンターギルドで色々と教育されている筈なのにポンコツ臭が抜けないレニーさんと比べてる訳じゃないからね(笑)
「こちらの都合で面会までに時間を掛けてしまいご迷惑をお掛けしました。無事にエルディーニ聖国から帰って来ましたので、【緋色の剣】のバーナードさんとの約束通り、クランマスターのシシリアさんにお時間を取って頂きたいのですが?」
「はい、クランマスターのシシリアから『【幻想審判】のカイトさんがいらっしゃれば最優先でお通しするように』と言付かっております。直ぐにシシリアに繋ぎますので少々お待ち下さい」
「はい、宜しくお願いします」
この国のトップとも言える大手クランの玄関ホールは待合室を兼ねており、様々な人間がソファに腰掛けている。
名門クランである【暁】との取り引きを担当している者達だけあって、静かに大人しく待っているって顔はしているが、その眼は様々な情報を少しでも探ろうとしている。
そんな人達の手前、僕達【幻想審判】も下品な真似は出来ないので、何時になく丁寧な言葉を選んで受付娘とやり取りをしているんだけど…………、
『貴方のように傲慢な者が丁寧な言葉遣いをしている姿は薄気味悪いですわね。下品な本性は顔に出ているのですから、変に上辺を取り繕うような事をしても無駄ですわよ(笑)』
残念チッパイロリババア女神様が念話で茶々を入れて来る。
人の外的要因を貶すような下品な女神様に言われたくはないよ!
だいたい、この顔はヴォルクのクソヤローの血を引いたロード君の顔なんだから下品でも仕方が無いだろ!!
『あら?、私は顔のパーツについて話をしてはいませんのよ? 内面から滲み出る下品な本性について話ているだけですわ(笑)』
その言葉、そのまま熨斗を付けて返させて貰うよ(笑)
自分で言う程、他人に対する包容力が無いって点が絶壁な胸に現れてんじゃねえのか?
『ほう? では、次からは包容力が皆無な修行にして差し上げますわ。今更、後悔しても遅いですわよ?』
……………………アレで包容力が有ったって言う、アンタの感覚にビックリだよ。
ってか、廊下の向こうから猛スピードで走って来てるのはシシリアさんだよね?
「カッ、カイトさぁぁぁん、お待ちしてましたわぁぁぁぁっ!」
黒のロングスカート、見た目は二十代半ばにしか見えない美人さんがすんごいスピードで走って来る。
このロリババアだけでも持て余してんのに、今度は面倒そうな美魔女かよ!!
「ま、まて、シシリアぁぁぁっ!!」
シシリアさんの後ろから必死で追い駆けて来てるのはバーナードさんかな?
おかしいなぁ?
前衛職のバーナードさんが追い付けない後衛の魔法使い?
この世界の【身体強化】は、一般的なラノベの魔法と違って肉体の潜在の能力を開放するだけのものだった筈なんだけど、何でシシリアさんがバーナードさんをぶっちぎってんだよ?
ってか、怖いわ!!
魔法オタクって陰で呼ばれてるシシリアさんが目の色を変えて僕に向かって来ている理由が思い当たらない。
「翼竜を一撃で堕とす魔法が知りたいとか?」
「カイトの魔法をバーナードさんから聞いてたら当然だよね~」
ルナ達が何やら言ってるが、あの程度の魔法で目の色を変えられてたら何も出来なくなるじゃん?
そんな程度の魔法よりも、ココに存在事態が不可思議なロリババアがいますよぉ!!
「わっ、更に師匠まで♡ 最っっっ高!!!!」
「ゲッ!?」
シシリアさんがその存在に気付いたとたん、僕の後ろに隠れる残念女神様。
女神様らしくないってか、淑女なら決して出さない声を出してしまう程嫌なんですねぇ。
笑いたいところだけど、今は気持ちが分かるよ。
何せ、クラウディア様に気付いたシシリアさんが放つ狂気じみた空気は、僕から見てもかなりヤバい。
『な、なら、貴方が犠牲になりなさい!!』
嫌だよ〜ん(笑)
死なば諸共、地獄への道連れGETぉぉ(笑)
ヤバい薬でもキメてるかのような目をしたオーネスト王国最高の魔法使いに捕獲される前に逃げ出そうかなぁ?
そんな事を考えてはいるものの、逃げ出す訳にもいかないし、シシリアさんの興味の対象を何とかクラウディア様に押し付ける方法を探さないとなぁ(´Д`)ハァ…
『人間の面倒は人間がみなさいな!!』
嫌だよ〜ん(笑)
大事な事だからもう一回言うね、嫌だよ〜ん(笑)
いつもお読み頂きありがとうございますm(_ _)m
仕事の都合と秋祭りの関係で少し短めになっちゃいました。




