第3章 オーネスト王国激震篇 2
「そういえば、【暁】のシシリアから『【幻想審判】が帰って来たら連絡をくれるよう伝えて下さい』って言われてたが、護衛中に何かあったのか?」
「僕達の実力を報告されたでしょうから、クランに勧誘したいんじゃないですか?」
クラウディア様の件が一区切りついたところで、ギルド長が思い出したように【暁】の事を口にした。
『何かあったのか?』って聞かれたところで、態々口止めしてもらってる翼竜の件を口にする訳無いっての(笑)
【緋色の剣】のバーナードさんに僕から口止め料の話を振った以上、【暁】に顔を出して情報隠蔽を正式にお願いしないといけないんだけど…………マジで勧誘して来そうだから面倒なんだよねぇ。
あそこのクランマスター、シシリアさんって見た目は美魔女なんだけど、話をしていると『魔法オタク』って雰囲気で怖いんだよなぁ。
いや、別に人間性に問題があるって訳じゃないんだけど、前世でもコアなオタクは何処にトリガーがあるか分からなかったからね。
「自画自賛してんじゃねえぞ。確かにお前等は新人パーティーって範疇からはみ出しているが、このクラウディア様みたいに……上には上がいるんだからよ」
うわの空で話を聞き流していた僕を睨んだゴリラがクラウディア様を持ち上げているが、当のクラウディア様は露骨に嫌そうな顔をしていた。
「【暁】って、あのシシリアのクランだったんですの?」
「『あのシシリア』ってのが『どのシシリアさん』かは知らないけど、確か【明星】って二つ名を持ってるって言ってたかな?」
「出来れば関わりたくない存在ですわね……。とはいえ、この私が小娘相手に逃げるなど有り得ませんし…………」
逃げる?
この傍若無人な残念女神様が逃げたい相手?
実力的な意味ではないだろうけど、この残念女神様が逃げ出したい程の存在だったのシシリアさん?
ってか、二人が知り合いだったって事にビックリなんだけど。
。。
『あの魔法オタクがどれほどウザい存在か…………、オタクである意味同類の貴方には理解出来るのではなくて?』
誰がオタクだ!!
いや、多少その気があるとは思ってるけど…………
『自覚症状のないオタク程ウザい存在はありませんのよ。ある意味では、開き直ったオタクよりもタチが悪い存在ですわね』
何でいきなり僕をディスってんだ!?
今はシシリアさんの話題だったんだけど!?
「あの魔法オタクは、数年前にいきなり私のところへ押し掛けて来た挙げ句、勝手に弟子を名乗って付き纏って来たストーカーですわ」
「なっ、クラウディア様に師事した事があるとは聞いていましたが、クラウディア様の同意無く付き纏っていたという事ですか?」
「私が寛容だから放置しておりますが、相手次第ではハンター資格の抹消すら有り得る程の迷惑な存在ですわね」
「…………………………………………………」
心底、嫌そうな顔で語るクラウディア様の表情を見て、ゴリラは二の句が継げずに茫然とした後で頭を抱えた。
そりゃあ、この国最高の魔法使いで、オーネスト王国国王から直々に二つ名を授けられた英雄が問題行動を起こしていたなんて知ったら、形の上とはいえ上役に当たるハンターギルド長としては頭を抱えるしかないだろうなぁ。
事と次第によっては、リーファンスハンターギルドが世界中から白い目で見られる可能性すら有り得るんだから(笑)
「そ、その…………ウチの所属ハンターが大変ご迷惑をお掛けしたみたいで申し訳ございませんでした。普段は理智的で探究心の強い求道者といった認識でしたが、魔法オタクと呼ばれるのは…………そのような側面があったからだったという事とでしたか。我々の認識不足により、クラウディア様には大変ご迷惑をお掛けしました」
非公式とはいえ、有望なハンターに自ら指導をするS級ハンターから心底嫌そうな顔をされるって、一体どんな事をしでかしたんだ?
何をしでかしたかは分からないけど、それで頭を下げるゴリラには同情してしまうな。
「貴方が頭を下げる必要はありませんわ。だいたい、あの者が自分の知らない魔法を前にして理性を保つなんて考えられませんし…………、今回オタクは変態に押し付けましょう」
ハアッ!?
ここで僕に振って来やがるかぁ!?
「僕は遠慮しますよ(笑) クラウディア様を慕ってるなら、それを受け入れてこそのS級ハンターじゃないですかね(笑)」
「残念ながら、あの者にそんな理性は御座いませんわよ? 貴方の魔法の話を聞けば高確率でストーカーになる…………いえ、間違い無く絶対にストーカーになりますわ(笑)」
面倒事を押し付ける為に、お互い笑顔でありながら視線でバチバチと火花を散らしていると、周りからは呆れた視線が飛んできた。
「お前、クラウディア様を敬えと言った端から、何を喧嘩を売ってんだよ!!」
ゴリラが喚き散らしているが、この残念女神様相手にそんな高尚な気持ちになれるかってんだよ!!
「オーネスト王国きっての将来有望なハンターに指導してあげれば良いんじゃないですかぁ?」
「残念ながら、私は今指導している変態無能の相手で手一杯ですのよ。魔法に関してだけなら、貴方でも指導出来るのではなくて?」
「格下の僕が、この国を代表するハンターに指導するなんてできるだけ訳無いでしょ?」
「あの者は、魔法に関してだけは格なんて気にしませんわよ?」
「シシリアさんが良くても、クランの構成員やはり、オーネスト王国の国民が納得しないんで(笑)」
「そんな程度の問題は何とでもなりますわよ?」
珍しく念話じゃなく、他の人にも分かるように口論をする僕とクラウディア様の醸し出す空気が部屋の温度を下げた。
比喩的な表現じゃなく、僕とクラウディア様から吹き出す魔力が物理的に部屋の温度を下げている。
『頭に血が昇ったら負け』って感じで皮肉をかます僕とクラウディア様の間に入れる存在はいない。
この口から生まれたような残念女神様を言い負かす事が出来るとは思えないが、黙って面倒を押し付けられて溜まるかってんだ。
「カイトぉぉ!!、S級ハンターのクラウディア様、この街最高ランクのクラン【暁】のマスターシシリアの二人に対して、お前は何様のつもりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
不意打ちで後頭部を殴って来たゴリラの拳を躱す事は簡単だったけど、それをやると更にムキになりそうだったので、素直に殴られた僕に顔面を高潮させたゴリラが喚き散らす。
「僕様?」
「カッ、カッ、カッ……カイトぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
これから面倒を押し付けられるであろう僕に配慮してくれても良いんじゃねえか?
ゴリラにはそんな機微も分からないのか?
「カイト、そろそろ挑発をヤメた方が良いよ?」
「うん、ちょっとやり過ぎ」
場の空気が混沌としてきた事で、流石にルナとラナからも指摘されてしまった……。
(´Д`)ハァ…
面倒臭いけど、シシリアさんに会いに行く事は決定事項だし、諦めて面倒な思いをしますかね。
いつもお読み頂きありがとうございますm(_ _)m




