第3章 オーネスト王国激震篇
「…………………」
リーファンスへ戻った僕達は、先ずハンターギルドへの報告の為に受付に並んでいたが、僕達に気付いたレニーさんが大きな声をもあげた事で副ギルド長のアイシャさんにギルド長室へと連行された。
そこで、僕達を待っていたいたギルド長が僕達と一緒にいるポンコツ幼女に気付き、恐る恐る素性を聞いて来たので新しいパーティーメンバーと説明をしたところ、冒頭のように無言で眉間をグリグリと揉んでいるのが現在の状況だ。
流石に元A級ハンターだっただけあって、このポンコツ幼女がS級ハンターの【剣姫クラウディア】だと知っていたって事か?
「何で、新人パーティーのがお前等が…………S級、それも世界最強ハンターと云われてるクラウディア様をパーティーメンバーに加えてるなんて非常識な事になってんだよ?」
「何でって…………成り行き?」
「ハンターのパーティー結成はハンターの権利であり、ハンターギルドが口を挟む権限はありませんわよ?」
絞り出すように質問してくるリチャードさんに僕は正直に答えたが、クラウディア様は『余計な口を挟むな』とでも圧力を掛けるように平然と言う。
「そ、それは勿論。しかし、世界最高峰のハンターである貴方様が新人パーティーに加わるなど想定外というか…………、予想の斜め上をドラゴン並のスピードで飛んでいるとでも言いますか……」
「これまでも非公式ではありますが、将来的な見込みのがある新人を育成した経験はありますのよ?」
「は、はい。噂話ではありますが、そのようなお話は幾度か耳にした事があります。…………この度は、うちに所属するハンターに目を掛けて頂き恐縮です」
こんなにガチガチになっているゴリ……ギルド長を見るのも初めてだけど、あのアイシャさんが一言も発する事が出来ないくらい緊張しているってのは意外だな。
ゴリラの調教師であり、実質的なリーファンスハンターギルドの支配者であるアイシャさんが緊張?
このポンコツ幼女ってそんなに凄い存在なのか?
『この私を人間と認識しているこの者達でも、私を相手にこの程度の敬意を示して来ますのに、私の正体を知った上で尚、不遜なのは貴方くらいですわよ(# ゜Д゜)』
人間に対し博愛を持っていると言ったり、塵芥のような存在として扱っていたり、その上で『自分を敬愛しろ』なんて承認欲求丸出しみたいな事を言ってる残念女神を尊敬なんて出来るか!!
変なところだけ人間臭いんだよ、アンタは!!
『人間を深く知らずして、博愛の精神を持つ事が可能だとでも言ってるのですかね? 私が人間臭いって言うのはある意味では私を誉めているのと同義ですわよ(笑)』
…………あぁ、もう!!
ああ言えばこう言う!!
「おいっ、カイト! 間違ってもクラウディア様に失礼な態度をとるんじゃねえぞ。この方はS級って括りに入れられてはいるが、本来ならSSS級って扱いをされなきゃ可怪しい程の方だ。お前等を育成してくれるなんて行幸は本来有り得ないんだからな!!」
念話での会話で、僕もクラウディア様も顔には出していない貶し合いだった筈なんだけど、何故かギルド長は聞いていたかのような反応をしてくる。
本当にゴリラじゃなく人間なのか?
野生の勘が半端ないんだけど!?
でも、この残念女神様は異世界の肖像権を借りパクしてるような最低な存在なんだけど?
知らないってのは幸せな事なんだねぇ………
『証明する事も出来ない事で最低呼ばわりですか(笑)』
証拠が無いから自分は無罪みたいに言ってる犯人と一緒だよ?
それが最低じゃないって可怪しいだろ!?
『世界の発展の為には、多少の清濁は併せ呑むものですわよ?』
開き直った独裁者みたいな事言ってんじゃねえぞ!!
「この空気は……」
「また、二人でイチャイチャしてる(# ゜Д゜)」
ルナ達が僕達の念話に気付いて拗ねた空気を醸し出す。
「イチャイチャって何!? いつも言ってるけど、僕はこんなロリババアに興味は無いからね!?」
「ロリババア?(# ゜Д゜)」
バチンッ!!
咄嗟に弁解をする僕の発言にクラウディア様が怒りの表情を見せると同時に、アイシャさんが僕の頭を叩いた。
「カイトさん! クラウディア様に失礼な態度をとるなとギルド長から注意されたばかりでしょう!!」
蒼くなった顔で、僕の胸ぐらを掴み揺らすアイシャさんの必死の表情に僕は驚いて声を出せずにいると、ゴリラがガバッと頭を下げた。
「も、申し訳ございません、クラウディア様。このバカには私が後でしっかりと礼儀ってものを叩き込んでおきますので!!」
「それは無理でしょうね。少なくとも、この私が直接鍛えている者ですので、貴方では制御出来ない程度の力は既に持ってますわよ。それに、心配しなくとも鍛錬時に本人が死ぬ程後悔する事になりますわ(笑) 文字通りに…………」
冷や汗を流し謝罪するギルド長に対し冷静な表情で対応した後、僕の方へ酷薄な笑みを向ける残念女神様。
死ぬ程後悔?
僕が何度細切れにされたと思ってんだよ。
【不死】を付与された斬撃じゃなければ、それこそ本当に何度殺されていた事か…………
死んでないってだけで、死ぬ程痛い思いだけは数え切れない程してるよ!!
でも、『反省はしても後悔はしない!!』
言ってみたかった台詞の一つだけど、今なら本心から言える。
『猿でも反省すれば行動を改めるといいますのに、本当に学習しないクズですわね(´Д`)ハァ…』
そもそも、テメーの念話が全てを原因だろうが!!
学習能力が無いのはテメーだ、テメー!!
「『文字通り』? あ、あの、これでもこのガキはうちのギルドの期待株ですので、殺さずに済ませて頂けると…………」
「失礼ですわね(´Д`)ハァ… 私は殺人狂ではありませんわよ? 本人が反省出来る程度の懲罰を与えるという意味ですわ」
恐る恐る、残念女神様に穏便な処置をお願いするギルド長に対し、呆れた表情を向けながら返答が反る。
人外キャラが人外にお願いをする構図って、傍から見ると凄い滑稽な図だよなぁ…………
そんな事を考えていると、アイシャさんがコチラを睨んでいた。
「それと、私の名を表に出すと、余計な騒動を引き起こす可能性がありますので、コチラのギルドではこのギルド証で登録をお願いしますわ」
そう言いながらクラウディア様が取り出したハンター証には、B級の刻印が成されていた。
本来、ハンター証の二重発行は犯罪行為であり、ハンターギルドとしても容認出来るものではない筈だけど、世界に五人しかいないS級ハンターの所在は政治的な意味を持つ事になる。そういった問題を緩和する為の処置か何かか?
あらゆる国から爵位の授与を打診されたクラウディア様は、その全てを断っていると聞いているが、この残念女神様が一つの国に加担するなんて選択肢がある筈も無く、最初にハンター登録したエルディーニ聖国聖都のハンターギルドから所属を動かした事は無いという。
エルディーニ聖国は国是として侵略行為をしない。しかし、侵略者には徹底的な懲罰を加える事を公言している国であり、その武力的背景にこの残念女神様の存在があるってのは、ハンターギルド内での常識なんだろう。
つまり、この残念女神様が自由に動く為には身分証を複数用意する必要があるって事だ。
そうでなければ、この残念女神様を自国に取り込もうとする国が現れる事が容易に想像出来るし、更なる心配として、残念女神様が離れている確証を得た国がエルディーニ聖国へと攻め込む可能性が出て来る。
国家単位の武力と同視されるって、何処のオーガだよ!!
オーガっても、この世界の魔物じゃなく、某漫画の父親だよ?
ともかく、ハンターギルドが特殊な対応をしないといけない程の特権を持つハンターがこのクラウディア様って事だ。
現在の僕達なら、例えマイアール帝国全軍を相手にしても勝ち切れる自信はあるが、それは相手が正面から正攻法で挑んで来た場合でしかない。
数の暴力ってのは単純な戦力って意味じゃない。
あらゆる搦め手、別動隊による謀略と牽制。
僕の身体が一つしか無い以上、多方面からの侵略に対し全て対応する事なんて不可能だ。
僕が本当に全てを無くしているのならそれでも各個撃破して終わりだけど、元国民を人質にした上で攻めて来られると手の出しようが無い。
だから、僕の情報がマイアール帝国に伝わる事に対し敏感になっているし、時間が掛かっても慎重に動いているって訳だ。
でも、この残念女神様は違う。
その存在が戦争の抑止力となる程の勇名と能力があるとされている。
一体、何をすればそんな事になるんだよ?
『世界の摂理を創ったのは私ですわよ(笑) そのように摂理を創っただけですわ(笑)』
どこまでもインチキじゃねえか!!!!!!!!
『【転移】に【時間停止】、三次元や四次元程度の問題に簡単に対応出来るってのは本当の事ですわよ?』
そりゃ、そうだろ。仮にも神様なんだから(呆れ)
『分かりました』って粛々と手続きを指示するアイシャさんを止めたい願望に襲われるが、目立つ事を避けるって僕達の目的からすれば邪魔する事は出来ない。
ドヤ顔の残念女神様にはムカつくが、ここは我慢しよう。
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