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第2章 エルディーニ聖国篇 19


「もしかして…………この世界にウランは存在しない?」


 幾度となく行って来た土魔法による放射性物質『ウラン』の生成が成功しない理由について検証した結果、僕が導き出した結論はウランって物質自体が存在しないのではないかというものだった。


「やっと気付きましたか?」


 僕の独り言に対し、残念陥没寸胴女神様は無表情で答える。


「どっ、どういう事だよ!! 僕の考えを知った上で容認するような言葉を返したのは誂っていたって事かよ!?」


 当然の結果、僕は一気に頭に血が上った状態になり、ルナ達に剣の指導をしていたポンコツ女神様に詰め寄る。


「お、お姉ちゃん、ウランって何?」


「さ、さぁ? でも、カイトの慌て様を見たら大事な物みたいね」


 いきなり激昂して乱入してきた僕の様子に戸惑うも、ウランに対する知識の無いルナ達は状況が掴めずに茫然と僕達を見ている。


「貴方のような異世界の知識を持つ者、それも科学者と呼ばれる人間をこの世界に呼ぶ以上、この世界に必要以上の影響を与えないように対策を施すのは当然ではありませんこと?」


「そういう事を言ってんじゃねえよ!! 僕に無駄な努力をさせて陰で笑ってたのかって聞いてんだ!!」


 そう、この世界に存在しない物質の生成を試みてる僕に何のヒントも与えなかったどころか、容認するような言動で更なる努力を煽ってたってのは悪意以外の何物でもない。

 僕がどんな知識を持ち出そうが、どれだけ必死で努力しようが、【神の権能】で存在させないと決められている物質の生成など不可能なんだから。

 僕の復讐に限定的ながらも協力するって話は何だったんだよ?

 協力どころか、僕をコケにして誂って来たなんて悪意を通り越して害意すら感じる。


「私が言った事の中でも『自分に都合の良い話』しか覚えてませんのね。よく考えた上で物を言いなさいな」


 ため息交じりに呆れた視線を向けて来る残念女神様に対し殺意が湧き上がって来るが、今の僕にこの自称女神様を殺せるのか?

 いや、殺してやる!!

 僕の家族を残虐に殺した連中、あのクズ共を護る為に僕を誂っていたなんて赦せる訳が無い!!


「知るか!! 上からものを言ってんじゃねえ!!」


 ルナ達を巻き込まないように、回り込む型でルナ達を背後になる位置取りにした上で【超電磁砲・改(レールガン)】を多重起動させた僕は、弾丸の着弾と当時に剣を片手に爆煙の中へ突っ込む。

 単発の【超電磁砲・改(レールガン)】は剣で簡単に防いでいたが、至近距離からの多重起動、今の僕に出来る最大数三十を超える弾丸を無傷で防ぐ事なんて不可能だろう。

 トドメは皮肉を効かせて、お前が護ろうとしているヴォルクの得意技【魔法剣】で粉々にしてやるよ。


「頭に血が昇って冷静な判断が出来ないようでは戦いに勝つ事は出来ませんわよ?」


 爆煙の中には、僕の【絶対零度(アブソリュートゼロ)】を更に進化させた魔法により無傷のクラウディア様が剣をダラリと下げた状態で待っていた。

 運動エネルギーの完全停止効果によるダメージ無効化、弊害となる気温の低下による視界不良の改善、【神の権能】じゃなく、僕の魔法を進化させた同条件での対応。

 それを易々と熟してみせるクラウディア様の技量に対し、僕の背中には冷たいものが走った。


 確かに、僕の不完全な【絶対零度(アブソリュートゼロ)】でも、今の僕の攻撃は完全に防ぐ事だけは出来る。

 なら、僕よりも上位の実力者であるクラウディア様が対処出来ない筈が無い。

 

 返り討ちにされる?


 完全に殺意を向けた僕は、今度こそは本当に殺される?


 鍛錬のような【不殺】を付与された攻撃ではなく、【神】への反逆者として誅殺される?


 この走馬灯のように思考が超加速した状態…………


 今度こそ死んだな。


 





 残念女神様を殺すどころか、冷静な思考なら選ばない攻撃方法について考え、更には諦めの境地に達する僕を柔らか…………く無い平坦な胸が受け止めた。


「どれだけ不敬であろうが、私の愛しい眷属の子孫である貴方を殺しはしませんわ」


 生きてる?

 ポカンとした表情の僕を抱きとめたクラウディア様が、僕の頭を撫でながら語り掛けて来る。


「『愛しい』と言っても、勿論恋慕の情ではありませんわよ? 貴方に分かりやすく言えば博愛(アガペー)ですわね」


 本来なら、母親の胸に抱かれた安心感に包まれる場面なんだろうけど、この男のように平坦な胸では母性を感じる事は出来ないな……


「私も、貴方が相手ではトキメキませんわね(# ゜Д゜)」


 そう言うと、クラウディア様は僕をポイッと投げ出す。


「かっ、カイト!? 何してんのよ!!」


「私やお姉ちゃんだけじゃ不満なのぉ!?」


 後ろでルナ達が何やら見当外れな事を喚いているが、死を覚悟した僕の血の気は一気に冷めていた。

 冷静になると、さっきクラウディア様が言ってた『自分に都合の良い話』云々が脳裏に甦って来る。


「(# ゜Д゜)やっと冷静になりましたわね。【神格】を持つ者により定められた概念ならば、それを覆す為に必要な条件くらいは想像に難く無いと思いますが?」


 さっきの事を根に持った不満気な表情で、クラウディア様が僕の思考を読んだ上で語り掛けて来た。


「つまり、僕が【神格】を獲れば、この問題も解決する?」


「逆に聞きますが、【神格】すら保持していない人間風情が放射能を完璧に制御出来るとお考えですか?」


 放射性物質の存在を消滅させている理由が『僕の邪魔をする』という意図ではなく、超えるべき試練の一つだと暗に言ってる?

 確かに、この女神様は僕の復讐方法に対し『完璧に相手を限定する』って条件を付けて容認していた。

 その完璧って概念が人間基準ではなく、世界の摂理基準だったって事なのか?


「貴方は『因果律』というものをかなり軽視しているみたいですわね。貴方が考えている『運命』と同義ではありませんのよ?」


 いきなり話が跳んで理解に苦しむが、僕の認識がアンタよりもかなり浅いって事は理解したよ。

  

 でも、とりあえずは後ろで喚いき続けているルナ達をなんとか落ち着かせるのが先かな。


「それは貴方の問題ですわよ」


「でも、一緒に睨まれてますよ?」


「私がこのような虫ケラを相手に恋慕の情を抱くなど有り得ないと説明しておきなさいな」


「虫ケラぁ!? この陥没胸女神が!!」


「『殺さない』とは言いましたが、『死んだ方がマシ』って思いをさせる事を躊躇はしませんわよ?(# ゜Д゜)」


 や、やべぇー!?


 本気でムカついてやがる!!


 とにかく、ルナ達をも落ち着かせて、このカオスな状況をなんとかしなきゃ。


『元凶が被害者ぶるものではありませんわよ』


 こういう時だけ、脳内に直接語り掛けてんじゃねえよ!!


 僕が悪かったって認めるから協力して下さいm(_ _)m


『自分に都合の良い時だけ素直なクズでも私の眷属の末端……………グラノス(あの子)といい、私は眷属に恵まれませんわね(´Д`)ハァ…』


 『類友』ってヤツじゃねぇの?


ドM(グラノス)尻好き(貴方)と同列にされるなんて怖気が走りますわ』


 だから、僕は尻好きじゃねぇ!!


 ……いや、厳密にはお尻のラインは気になるけど。

 フェチって程じゃねえからな!!










―――――――――グラノス


「ディスられ続けている気がするのは何故!?」

いつもお読み頂きありがとうございますm(_ _)m

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