第2章 エルディーニ聖国篇 17
「目標金額は達成出来たね」
「じゃあ、ご飯食べに行こう。私カレーが良い!」
ハンターギルドに大量のゴールドシープの毛を納品した僕達は、依頼達成報酬と余剰分の素材買取により目標としていた金額を無事に稼ぐ事が出来た。
割の良い依頼だったので順当な金額だったのだけど、ギルド職員の受付嬢さんの表情が強張っていたのは何でだ?
「おい、あいつアイテムボックス持ちだったみたいだぞ」
「クラウディア様がパーティーメンバーに誘うだけの理由は有ったって事か…………」
「三日で二十二階層まで到達かよ…………。まぁ、クラウディア様が一緒なら当然の結果だろうけどな」
「あいつ等のアイテムボックスが目的でクラウディア様が誘った訳じゃ無いだろう? クラウディア様自身もアイテムボックス持ちなんだからな。なら、あいつ等自身の戦闘力も?」
「じゃないと…………、説明がつかないよな」
「あの、クラウディア様が認めるだけの戦闘力? それは無いんじゃねえか?」
周りのハンター達もザワついているが、コレはダンジョンから転移魔法陣で帰還する際に合流した残念女神様に対する興味が大半ってところかな?
ずっとソロで活動していたSランクハンターが、他国から来たばかりの新人パーティーと同行しているんだから、ハンター達の話題にならない訳がない。
僕達が目立つ可能性を少しでも減らす為に、Sランクハンターを利用したつもりだったけど。返って目立つ結果になってしまったよ。
「【午後一番】ですか? なら、貴方のアイテムボックスにあるチキンカツを提供しなさいな。私がオーナー権限で新メニューとして提案する事にしますわ」
衆目など一切気にせず、僕にチキンカツの供出を求めて来る残念ポンコツ女神様…………
自分がトッピングして食べたいだけだろ?
「カレーにチキンカツって合うの?」
「チキンカツはタルタルソースが一番じゃない?」
「貴方達に、カレーの幅広い懐の深さを実感させてあげますわよ」
ルナ達にドヤ顔でチキンカツカレーについての説明を始めるポンコツ女神様…………
アンタ、偉そうに語ってるけど、ただのパクリだろ!!
過去の転生者の知識+僕の知識と料理、全て他人の手柄じゃねえか。
何を、自分の手柄みたいに語ってんだよ!!
インドからカレーを学んだイギリス人、更に発展させた日本の料理人達に謝れってんだ!!!!
無視してるけどどうせ、この思考も読んでるんだろう?
この場で僕が転生者だとバラす訳にはいかないから黙ってるけど、突っ込みどころが大き過ぎるんだよ!!
色々と言いたい事はあるが、チキンカツカレーを想像しただけで腹が減って来るのは元日本人の本能みたいなもんだ。
この世界の文明レベルで一番辛いのは料理だしね。
決して不味いって訳ではないんだけど、飽食時代の日本を知ってる僕からすれば、物足りないのは当然だろ?
牛丼、ラーメン、すき焼き、寿司、ピザ…………
再現出来るならもっとやってくれよ!!
「そのうちですわね。あまりに加速した文明は弊害しか生み出しませんのよ? 例え食文化といえどですわね」
もっともらしい理由を澄まし顔で語る残念女神様だけど、自分は何時でも再現して楽しめるんだろ?
「…………」
その、無言でニヤリってのは腹立つから止めろ!!
『仮にも、【創造主】である私を利用しようとしている無礼者に対価を供出させるのは当然の事ではなくて? 悔しかったらサッサと【神格】を得る事ですわね。そうすれば、多少の便宜くらいは自身で図れましてよ』
正論っちゃ正論だろうけど、ルナ達と話しながら念話で話しかけてんじゃねえよ!!
ルナ達も、こんな不気味で不条理な物体を相手にしてるってのに、何で平気なんだ?
周りのハンター達も、このトンデモ物体に違和感を抱いていないのは何でだ?
『【認識阻害】の効果ってだけですわね。まぁ、この娘達には使ってませんが、彼女達は私を敬ってますから(笑)』
【認識阻害】の効果を其処まで限定出来るのか?
ソレも【神格】の能力って事か?
…………ルナ達がこの物体を敬ってる?
それは、ルナ達を教育する必要があるな。
詐欺師を信頼しているってくらい危ない話じゃねえか。
鍛錬って名目で、僕が何回この物体に細切れにされたか知ってるだろうに…………
『何回細切れにしても懲りませんわね、この愚か者は。不敬にも程があるって思いませんの? いや、グラノスと同じドMとか?』
誰がドMだ!!
あんなクソトカゲと同類扱いしてんじゃねえぞ!!
『グラノスはアレでも我が子だから赦せますが、この愚か者がドMで懲罰を【ご褒美】と思ってるなんて…………気持ち悪いですわね』
話を聞けよ!?
ってか、僕の思考を読めるんだから、僕が【ご褒美】なんて思ってないのは分かってんだろ!!
ルナ達にカレーについて語りながら、人を誂ってんじゃねえよ!
『本当に【煽り耐性】が低いですわね。そんなだから、ヴォルク程度に遅れを取るなんて結果になったんですわよ(笑)』
【不殺】を付与した剣で、僕の事を細切れにするなんてトンデモな事をしてるアンタに言われたくはねえよ!!
なんだよ、そのトンデモ変態理論は!?
【不殺】って、細切れにされても効果あるもんなのか!?
あるんだよね…………、結果が証明してるし。
でも、僕の挑発に簡単に乗ってるアンタに言われたくない。
『【創造主】に不敬を働きながらも、【不殺】を前提とした【神罰】で済ませて貰える事に感謝しなさいな』
何で、ハンターギルドから食事に行こうって話になっただけで、ここまで長い時間が掛かるんだよ!!
実際は数秒程度のやり取りだけど、僕の心労的には数十分だよ。
チキンカツカレーの話から、何でドM扱いされた上に、僕の心労がMAXになってんだよ…………orz
「オーナー、お久しぶりです!!」
開店前で『準備中』の札を掛けた【午後一番】に入るなり、店長がクラウディア様に頭を下げる。
「今日は、新しいメニューの提案に参りましたわ。ほら、サッサとチキンカツを出しなさいな」
店長に対し穏やかな笑顔を向けながら、僕にチキンカツの提供を強要してくる残念オーナー。
気楽に言ってるけど、グリフォンの肉って世間一般的には高級食材だぞ?
「チキンカツ?」
クラウディア様から新メニューの提案と聞いて、僕の手元に鋭い視線を向けて来る店長。
真面目な性格なんだろうなぁ。
オーナーがこんな残念女神様じゃなかったら幸せだろうに。
「コレがチキンカツですか…………。察するに、カレーの上に乗せる食材といった感じでしょうか?」
目をキラキラとさせてチキンカツを見詰める店長。
「油で揚げた食材? コレはパン粉?」
料理人だけあって、初めて見るチキンカツに使われている素材に興味が行ってるみたいだけど、材料や料理法について即座に当たりを付けるあたり、かなり腕の良い料理人なんだろうな。
「論より証拠ですわ、先ずは試食しましょう」
『私が選んだ料理人ですわよ? 腕は折り紙付きですわ』
だからぁ、同時進行で僕に突っ込みを入れるのはヤメて!?
普通に会話出来ねえのか?
「チキンカツとカレー…………」
「最高の組み合わせの一つ……」
既に、クラウディア様からチキンカツカレーについて語られているルナ達は、生唾ゴックン状態でカレーが提供されるのを待っている。
当然と言えば当然の結果、ルナ達にチキンカツカレーは大好評だった。
店長も、普通のチキンカツカレー、更にタルタルソースをトッピングした物を試食して絶句した。
三日後、新メニューを提供し始めた【午後一番】に長蛇の列が出来たのは別の話だ。
ちなみに、【午後一番】の売り上げの数パーセントがクラウディア様のマージンとして、教会の孤児院に寄付されているって店長が話していた。
まぁ、ちゃんとした社会福祉に使われるなら、異世界知識の盗用については黙ってても良いかなって考えてしまったところ、ドヤ顔をされた事に少し腹が立ったのは秘密だ…………
『貴方に秘密は無理ゲーですわよ(笑)』
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