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第2章 エルディーニ聖国篇 12


「【鑑定】」


●カイト


●人間? Lv 1938


●HP 13621


 MP 19648(+932)


 戦闘力 10831


 体力 9562


 素早さ 12385


 防御 15381


●剣術Lv∞・槍術Lv10・創造魔法Lv∞(全)・魔力増幅・魔力転化・身体強化・召喚術・神化(疑似)・痛覚遮断・肉体再生・逃げ脚


 ダンジョンに潜って二日、僕のステータスは人外としか表現出来ないレベルでぶっ壊れていた。

 実際の時間が二日ってだけで、僕達の体感時間では二十年を超える時間が経過してるんだけど。


「【神格】すら持っていない状態で自身を人外とは笑わせてくれますわね」


 いや、その突っ込みは間違ってると思うよ!?

 人間が神になれるのは神話の中だけだからね!?

 だいたい、二十年修行したからってこのステータスになるのなら、ベテランハンターは全員Sランクどころじゃない実力者になるだろ?


「そんな言い訳をするような性根だから、ステータスに【逃げ脚】なんてみっともないスキルが付与されるのですわ」


「あんなとんでもない魔法をいきなり連射されて逃げる以外の選択肢がある訳ないでしょ!? それに戦略的撤退は立派な兵法だし!!」

 

「あれが戦略的撤退なら、街の水路で隠れているドブネズミも大層な軍略家ですわね」


「ぐぬぬぬ」









――――――――――二日前?


 ダンジョンの六階層にある通路の行き止まり、そこにクラウディア様が手を翳すと魔力の渦のような扉が現れた。

 茫然としているところを後ろからクラウディア様に蹴り込まれて入った扉の中には、某格闘漫画の『精神と時の部屋』のような空間が拡がっていた。

 思わず『パクリだ、肖像権侵害だ!!』と叫びそうになったけど、無言で殺気を放って来るクラウディア様の圧力で黙らざるをえなかったが、僕は間違ってないと思う…………………

 まあ、神殿の型も違うし、鍛錬場は黒い空間になってたし丸パクリではないと無理矢理納得する事にした。


「先ずは体力作りを含め剣術から鍛え直しますわよ。貴方のようなヘナチョコでも、最低限生き残れるだけの技量を持たせる事が最優先になりますから」


「僕の特性を考えたら魔法を強化する方が効率的だと思うんだけど? それに剣術は一応一通り修めてるつもりなんだけど」


 僕を鍛え直すと豪語するクラウディア様だけど、『僕はあんたと違って魔法使いなんだよなぁ』と言外に伝える。


「お子様レベルの基礎程度で剣術を修めたなんて恥ずかしいとは思いませんの? それに、私は剣も使えるだけで本質は魔導師ですのよ。つまり、私が貴方達に教える剣術は魔導師が修める程度の基礎剣術でしかありませんわね」


 圧倒的なステータス差があるとはいえ、僕に全く感知させず斬りつけた剣術からクラウディア様の本質は剣士とばかり思っていたんだけど、あれが本質から外れた技量?

 

「『無拍子』程度は戦闘における基礎ですわよ」


 …………前世で武術の経験など全く無かった僕でも知ってるぞ?

 『無拍子』は汎ゆる武術の到達点と言っても過言じゃない『極意』としか表現出来ない技術だろ!?

 生物の身体が動くという事は、最適な動きをする為の予備動作から始まる。

 身体を動かすって事は『重心を移動させる』という事であり、それは筋肉に負荷を掛けるって事だ。

 その動き出しに予備動作が含まれるのは当然であり、予備動作無しで動ける生物は本来なら自然界に存在しない。

 ボクシングでも圧倒的な動体視力で相手の動き出しを探り防御するように、極限まで鍛えられた一流アスリートですら予備動作無しで動き出すなんて不可能だ。

 その予備動作無し、その上で目的に対し最速で最低限の動きこそが『無拍子』と呼ばれる技術であり、漫画の中でしか存在しない理想論でしかない技術なんだけど…………

 それが基礎!?


「ねえ、カイト。『無拍子』って何?」


「カイトの反応からして、とんでもない事を言われてるって事だけは分かるわね」


 僕の反応を見て不安になったんだろう、ラナとルナは『無拍子』って言葉の意味は分からないが、クラウディア様が要求しているハードルの高さについては感じ取っているみたいだ。


 しかも、クラウディア様は『戦闘における基礎』って言ってた。

 それが意味するのは、魔法に関しても同様って事であり、魔力的にも『無拍子』を求められるって事だよな?


 …………ルナ、


 …………ラナ、


 僕達は今直ぐ逃げた方が良いかもしれない。


「私から逃げる事が出来るなら、それも修行の成果と見做して差し上げますわよ(笑)」


 僕の背中から首筋に剣を突き付けたクラウディア様が楽しそうな声で語り掛けて来るが、あんたさっきまで僕の正面に立ってたよな!?

 何で背後に居るんだよ!!


「そのような甘えを捨てなさいな。『どうして』なんて戦闘中に相手に聞けますの? 自分で考えた上で対処する訓練からですか…………、本当に手間の掛かる駄々っ子ですわね」


 いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!


 誰か、この化け物を何とかしてえぇぇぇぇぇっ!!


「とりあえず、最低限の基準を見せて差し上げますわ。貴方の魔法で最高のスピードのものを私に撃って来なさい」


 瞬時に僕から五メートルくらいの距離に移動したクラウディア様は、ダラリと剣を下げた状態で平然と言う。


 これから無茶振りをさせないためにも、ここで僕の実力を思い知らせた方が良いと判断した僕は、躊躇無く【超電磁砲・改(レールガン)】を最大威力で発動させた。

 仮にも『神』を名乗ってるんだから、これであっさりと死んでしまうなんて無いよな(笑)


「自惚れてんじゃねえ!! 【超電磁砲・改(レールガン)】」


 正真正銘、僕の全力で放った【超電磁砲・改(レールガン)】、マッハを超える弾丸を数メートルの距離で放ったにも関わらず、クラウディア様はあっさりと剣の一振りで両断してしまった。


「はあっ!?」


「「ええええぇぇぇぇぇぇぇっっ!?」」


 有り得ない結果に変な声が出てしまったが、ルナ達も二人でシンクロしたように驚愕の声をあげている。


「この程度では、私の眷属を名乗らせる訳にはいきませんわね。鍛え直す事にして正解でしたわ」


 当のクラウディア様は呆れ切った目で僕を見ながら、顎に手をやり何か考えるような仕草を見せている。

 『来る』と分かっている攻撃を準備万端で防いだだけで偉そうにしてんじゃねえよ!!

 『今ならヤレる』と確信した僕は、不意討ちの【超電磁砲・改(レールガン)】を無詠唱で発動するが、クラウディア様の頭上に現れた真っ白い一本の矢が発射された弾丸を相殺して爆発した。

 

 視線すら動かさず、僕の不意討ちを完璧にいなしたクラウディア様がポンッと手を打つ。


「不意討ちするなら気配は完璧に消すべきでしたわね。やはり、先ず貴方に必要なのは無拍子を体得する事という私の考えは間違いではありませんでしたわ。そのためには、剣術の基礎から教え込む必要がありますわね。あそこで不意討ちを選択する精神面は戦闘向きですはありますが、私に対する敬意だけは叩き込んで差し上げますわね」


 そのにっこりとした表情が怖いんですけど!?

 

 だいたい、この距離、あの時間で不意討ちしたってのに、余裕を持って対処してみせるなんて反則じゃないでしょうかぁ!?


 それに、さっきの白い矢…………

 あれってただの魔力の塊だよな?

 それを【超電磁砲・改(レールガン)】の弾丸以上の速度で飛ばして、弾丸の運動エネルギーすら相殺した?


 有り得ないんですけどぉぉぉぉっっっっ!?


「この程度の魔力矢、数千本くらいならどこぞのお馬鹿でも簡単に斬り伏せ晴れるものですわよ? …………そうですわね、あのお馬鹿と同じ修行から始めるもの一興ですわね」


 空間魔法?

 僕の【異次元収納(アイテムボックス)】と似た空間に手を突っ込んだクラウディア様の手に、一振りの剣が握られている。

 その剣をポイッっと僕に向けて投げてきた。


「その剣は鍛錬用の特別製ですのよ。私の意思で重量を加減する事ができますの」


 クラウディア様がそう言うと同時に、普通の剣と同じ重さだった剣が数十キロの重さになり、僕は剣ごと地面に倒れ込んだ。

 

「とりあえず、準備運動として素振り一万回からですわ。身体強化しては意味がありませんので魔力は制限しておきますわね」


 同じようにルナ達にも剣を持たせたクラウディア様が、さも当然のように言って来る。

 

「いや、無理だろこれは!?」


 思わずっていうか、至極当然な反応をする僕の横でルナ達は素直に剣を振り始めている。


「普通の剣よりは少し(・・)重いけど、出来る限りは頑張ります」


「いっ、一万回が準備運動?」


 精霊等の神性を持つ存在に対し親和性を持つルナ達は、クラウディア様の無茶振りにも逆らう意志が無いみたいだけど…………


 少し(・・)重い?


 二人の言葉に違和感を感じた僕は、ジト目でクラウディア様を睨むが、


「私の眷属である貴方に甘えは許されませんわよ? それとも、女子供と同じ扱いを希望するクズでしょうか?」


 ゴミ虫を見るような目で宣言された。


 数十キロの剣を持ち上げるだけでも洒落にならないのに、ソレで素振り一万回!?


「いや、無理なものはどうやっても無理だろ!!」


 そんな僕の言葉に冷ややかな答えが返って来る。


「あの遺伝子的バグの英雄に復讐するんじゃありませんの?」


「遺伝子的バグ? それってヴォルクの事か?」


「そうですわ。彼の者は数千年に一人生まれる遺伝子的バグの持ち主ですの。勿論、そんなバグが子々孫々続く訳がありませんが、彼の者に限れば人間種を超える能力を持って生まれました。その上で、貴方に絡まった因果の糸の影響を受けてしまった」


「どういう意味だ?」


「この程度の鍛錬も熟せ無いようでは、彼の者に復讐するなど夢物語という意味ですわ」


 言ってる事は抽象的で具体性が全く無いけど、その話が嘘ではないって事だけは本能的に理解出来た。

 ヴォルクのクソヤローは特別な存在であり、普通に僕が鍛錬したところで勝つ事は難しいって事だろ?

 なら、やってやるよ!!


「ぐぬぬぬ、ぐおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


 素振り一万回だよな!!

 絶望的なノルマだけど、これはヴォルクのクソヤローに勝つ為に必要な最低条件なんだよなぁ!!

いつもお読み頂きありがとうございますm(_ _)m

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