第2章 エルディーニ聖国篇 10
「間違い無く、貴方のせいですわね」
「だから、人の頭の中を除いてんじゃねえ!! 世が世ならあんた犯罪者だぞ!! 個人情報保護法はこの世界には無いのか!?」
「そんなもの有りませんわ(笑)」
うん、知ってた。
ちょっと言ってみただけだよ…………orz
「情報整理をする時間稼ぎの為に、表面上では頭のおかしい事を考えながら、深層では私の反応を探ろうとする。本当に面倒臭い性格をしてますわね。そんな心配をしなくても、全て説明して差し上げますわよ?」
残念ながら僕は神様じゃないから、その話の真偽を確かめる術が無いんだよ!
一方的な情報が詐欺じゃ無いと判断する為には、コチラの望む情報を少しでも多く手にする以外に方法はない。
超常の能力を持つ相手って事だけで、この世界の創造神なんて信じられるかってんだ。
そんな事で信用してたら、Mr.マ○ックみたいな手品師でも神様扱いする事になるだろうが!!
「本当に面倒な性格ですわね。いっその事、本当に洗脳でもした方が話が早いかもしれませんわ」
洗脳…………
それが可能か不可能かは分からないが、こうやってこの自称創造神様を疑わしく思っているって事実は、僕に自我があるって事を証明している。
そういった点では、このチビペチャパイ……美貌の女神様(自称)の話が信用出来るって方に一票だ。
そんなに殺気を垂れ流さないでくださいm(_ _)m
「カイト、本当は分かってるんでしょ?」
「高位精霊様でもこんな神気をも持つ存在はいないわよ」
僕の内心を看破したようにラナが、続けてルナが確認してくる。
…………そうだね、分かっていたよ。
でもそれは、僕達魔帝国の臣民が滅亡した事を許容する存在が目の前にいるって認めるって事なんだ。
本当に創造神様だってんなら、魔帝国の滅亡を防ぐ事だって可能だったんじゃないのか?
因果律を改編した存在がいるって言ってたけど、それを改編し直す事が出来る存在だろ?
それをしないって事は、僕達のこの運命を許容してるって事だ。
「因果律は数十次元という世界で紡がれたものであり、それを安易に改編する事が、この三次元世界にどれほどの影響を与える事になるかは『バタフライ効果』の定義を知る貴方に説明する必要は有りませんわね? 今回、この三次元世界が崩壊していない事が奇跡的な確率の上で成り立っているとだけ理解してくださいな」
地球の反対側で蝶が羽ばたくってだけの動きが、繋がり続ける因果により嵐をも引き起こすって理論だよな。
点が線になる一次元、線が平面を形造る二次元、平面から立体となる三次元、四次元は更に時間軸が加わるって考えだったか?
数十次元ってどんな世界なんだよ…………
『ドラ○もん』どころじゃない話で理解出来ねえよ!!
そんな次元からのバタフライ効果を考えると、安易に因果律を弄る訳にはいかないって考えは分かるが、それが出来るから【神】なんじゃないのか?
「数多の世界の創造と廃棄、貴方が考えるように【神】が真に万能ならば必要のない事ではありませんこと?」
うん、地球の神話でも思ってたよ。
そもそも、政教分離を完璧に成した国家が皆無なんだから、神話に人間の思惑が入り込んで当たり前、御都合主義な神話しかないってのに『神様の御心は人間に理解出来ない』って言葉で全てを誤魔化しているってね。
日本でも戦国時代には下剋上の精神で軍学が奨励されていたが、江戸時代になると統治者の都合で『忠義』に重きを置く朱子学が奨励されたように、宗教の教義も時代と共に贅肉的な教義が付随されたってだけだ。
時の権力者にとって都合の良い教義へと変貌していった神話に矛盾が生じるのは当然であり、それを誤魔化す為の贅肉的教義を加える事で更なる矛盾が生まれていった。
それを誤魔化す伝家の宝刀が、『万能な神を疑う事は赦されない』って空気なんだよなぁ。
「つまり、神って存在は『完璧な世界を求めて創造と廃棄を繰り返す事の出来る高位存在』って理解で良いんだろ?」
「本当にバカなのか、不敬なだけの効率主義者なのか分からない存在ですわね」
この反応を見る限り、当たらずとも遠からずって感じかな?
「今はその理解で問題無いですわ。話を進めますが、貴方には改編された因果の糸が複雑に絡み付いていますの、それを断ち切る為の神剣がこの【神滅の剣】ですのよ」
「因果の糸?」
「先程話したバタフライ効果が起こらないようにする為の処置ですわ。貴方が【魔王】として神罰の代行者となるつもりなら、世界にどれほどの影響を与える事になるかは理解してるでしょう? そんな存在に改編された因果の糸が絡み付いている事の危険性の排除という訳ですわね。貴方の存在を抹消するのではなく、こういった方法を選んでいる事から私の意図を察してくれると助かりますわ」
表面上は『捻じ曲げられた運命に対する贖罪』って感じに恩着せがましい事を言ってるが、僕の存在を抹消するよりも都合の良い理由がありそうだな。
『まだ使える』から抹消しないでおいてやるという意味にも取れる物言いだ。
『神は賽を振らない』って言うけど、そもそもの前提となる因果律が捻じ曲がった状態で予定調和も何もあったもんじゃない。
って事は?
「様子見って事かな?」
「理解が早くて助かりますわ」
少し冷めた表情の僕の問いに満面の笑みを返して来る女神様。
ここでその笑顔は怖えよ!!
歪んだ因果律の行方を様子見はするが、事と次第によっては問答無用で僕の存在を抹消するって意味だろ?
殺されるんじゃなくて抹消だ。
存在そのものが無かった事にされる?
それを満面の笑みで宣言してくるって…………、このポンコツ女神様は本当に良い性格してやがるな。
被害者である筈の僕に対し、執行猶予付きの抹消宣言?
やっぱり、このポンコツベチャパイ残念女神にはザマァする必要があるって事だな!
世界を創造するような高次元の存在からすれば、僕の存在なんて塵にもならない程度の価値なんだろうけど、僕にも意地ってもんがあるんだよ、好き勝手に利用されたままで終わってたまるか!!
「その気概には好感を持てますわね。『悟った』と勘違いした『諦め』じゃなく、何処までも自身を貫く意思には敬意を評しますわよ」
僕の考えを読んだ残念女神様が満足気に頷いているが、その余裕が気に入らない。
そりゃあ、この世界を創造したような存在からすれば『僕の自由意思の尊重』なんて破格の慈悲かもしれないが、そもそも自身の管理不十分から起こった問題だろうが!!
『譲歩してやる』的な態度をとってんじゃねえ!!
人間は感情抜きで生きていけるような高尚な存在じゃ無いんだよ。
理屈では自分の立場を理解してるけど、理解してるって事と納得出来るかって事は別の問題なんだ。
僕の立場から見れば、あんたの譲歩は傲慢でしかないんだよ。
「私達が目指しているのは人間が神格を持つに至る世界ですの。貴方が私にザマァする為には貴方が神格を持つ事が必要最低条件になる訳ですので、私は貴方のザマァを歓迎いたしますわ」
「………………」
価値観の隔絶ってヤツか?
僕の怒りの感情に対し、本当に嬉しそうな表情を見せやがる。
「『駄目な息子ほど可愛い』が一番近い表現になるのでしょうか? 私に反抗してくる貴方も愛しい存在ですの。勿論、親愛の情であって、恋慕の情ではありませんわよ」
誰がロリババアの息子だ!!
この世界でも、僕には立派な父上と母上がちゃんといたんだよ!
それよりも…………
色々と理解不能な状況に流されて大事な事を忘れてた。
「【鑑定】」
●クラウディア
●人間?(神格保持) Lv ????
●HP ??????
MP ??????
戦闘力 ??????
体力 ??????
素早さ ??????
防御 ??????
●剣術Lv??・神聖魔法Lv??(全)・時空魔法Lv??
……………………(ノ ̄皿 ̄)ノ⌒==┫
予想通り?の結果に対し啞然とするしかないなぁ。
『神格保持』以外は『?』だらけじゃねえか!!
ステータス部分とLv部分の『?』の個数の違いって、まさか六桁ってオチじゃないよね?
Aランクだったゴリラでも三桁だぞ!?
「貴方程度の実力では私を【鑑定】する事は出来ないでしょうが、サービスでヒントだけは表示を許可しておきましたわ。勿論、私本来のステータスではありませんが(笑)」
ドヤ顔のロリババアって本当にムカつく(# ゜Д゜)
『本来のステータスじゃない』ってのは、世界に干渉する為の分体のステータスって意味だろう。
本体のステータスは六桁以上って意味だよな…………
「当たらずとも遠からずですわ。このステータスはソコのポンコツと同等に抑えたものですので」
そう言いながら自称『完璧な存在』に視線を向けるロリババア。
えっ!?
あのポンコツトカゲってそんなに強いの!?
「このポンコツが強いというよりも、貴方達が弱過ぎるってだけの話ですわね。私達が人間として過ごしていた時のステータスでもこのポンコツ程度は顎で扱き使えましたわよ?」
僕達が弱い?
「あんたが『人間』だった頃ってのがどれだけ昔の話かは分からないけど、それはこの世界での話なのか?」
「私達を時間なんて概念で捉えようとするコト事態がそもそもの間違いですのよ。アレは過去でもあり未来でもある…………貴方も神格を得る事が出来れば理解出来るかも知れませんわね」
何じゃそりゃ!?
ああ、もう、会話が成り立たねえよ!!
いつもお読み頂きありがとうございますm(_ _)m




