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第2章 エルディーニ聖国篇 9


 【魔王】として転生させた?


 その剣で運命を斬り開く?


 このロリババアが僕を転生させた?


 目的は『僕を【魔王】にする事』?


 なら、父上達があんな……モブのように滅ぼされた理由も、魔帝国の臣民が現在(いま)も苦悩の中で生きているであろう現状も、全てコイツにとっては予定調和だってのか!?


 いきなりの情報に動揺よりも凄まじい怒りが呼び起こされる。

 そんな僕の内心を見通したように、ロ塗リババアが口を開く。


「先ず、貴方の認識されている【魔王】と、この世界での【魔王】では役割が違うという事から説明する必要がありますわね」


「役割が違う?」


 努めて冷静さを保とうとしているって感じの口調でロリババアが語り掛けて来るが、僕は怒りの感情を抑え切れない低い声を絞り出す事しか出来ない。

 そもそもの元凶かもしれない存在が目の前にいるのだ。

 感情を抑えるなんて無理だろ!!


「この世界における【魔王】とは『魔を統べる存在』であり、世界に敵対する存在ではありませんわ。ここで言う『魔』とは、『魔法』というこの世界の根幹を為す現象を意味し、貴方が以前生きておられた世界における『魔』とは幾ばくか違う意味となりますの。これは他世界の言語との翻訳機能的な問題ですわ」


「………………」


「つまり、貴方が先程考えておられた【魔王】のように『世界征服』や『破壊』を目的とする悪しき存在ではないという事ですの。本来の役割は、私の眷属として世界に直接干渉する権限を与えられた管理者といったところですわ」


 コイツが本当の事を言ってるのか、それとも僕を丸め込もうとしてるのか判断がつきかねるが、一気に頭に昇った血が落ち着いてきたおかげで多面的に判断するだけの余裕は出て来た。


「その合理的で俯瞰的な視点こそが貴方を選んだ理由ですの。自身の感情すら俯瞰的に判断する冷静な頭脳こそ管理者に必要不可欠な素養ですものね」


 さっきから、他人の頭の中を勝手に覗いてんじゃねえよ!!

 そういった不可思議な能力(ちから)から自身を護る魔法を構築しないといけないな。

 じゃないと、考えを読むだけじゃなく、知らない内に洗脳される可能性が高過ぎるぞ!

 記憶の改竄すら疑ってかからないと…………


「可能、不可能で言えば可能ですわね。しかし、私がそれを望んでいないからこそ、こうやって説明している事は聡明な貴方には分かっているのではなくて?」


「だから、口にしてない事に答えんじゃねえよ!!」


 さっきから、僕との間では会話が成り立っているが、ルナとラナは会話の脈絡が掴めずにオロオロとしてるだろうが!!

 たぶん、お前の頭がおかしいって思ってるぞ!


「コホンッ、では説明を続けさせて頂きますわ。私がこの世界を創造した時に定めた因果律では、貴方はこの世界を管理する【魔王】として人間の増長を抑える役割となっていました。しかし、私に覚らせる事なく因果律を改編、改竄し、この世界を滅亡の危機に踏み込ませている者がおります。その改竄により貴方の運命にも齟齬が生じたという訳ですの」


「自分も被害者だとでも言うつもりか?」


「私が被害者? この世界を創造した私がこの世界を見捨てたところで何の問題が生じると仰るの?」


 ああ、そもそも会話の根底が違い過ぎるんだ…………

 陶芸家が失敗作を割るように、神が創造した世界が失敗作と判断すれば滅ぼしてリセットすれば良いだけなんだから。

 人間である僕からすれば傲慢極まりない考えに見えるが、それは僕が蟻の心情を理解出来ないって事と変わりない現実でしかない。

 その生態を観察し考察する事はあっても、その心情までは思い至れないって感じなんだろうな。


「失礼ですわね、貴方の考え通りなら既にリセットしてますわ! 私が今回干渉しているのは全て貴方のためだというのに失礼だと思いませんの!!」


「僕の為?」


「私の世界の都合で他の世界から呼び寄せた貴方に申し訳ないと思ったからこそ、全てをリセットする事よりも『貴方の意思を尊重する』という選択をしたんですのよ」


「それは、僕がマイアール帝国を滅ぼそうが干渉しないって意味って考えても良いのか?」


「それも『増長した人間種への神罰』の範囲内ですわ」


 ウッシャー!!

 この世界の神からザマァのお墨付き頂きました!!

 まあ、このロリババアが本当に創造神だったらって条件付きなんだけどね(笑)

 …………何より、このロリババアもザマァの対象って可能性はまだ消えてないしな。


「先程から私をロリババア呼ばわりされてますが、この姿は私が人間として生きてた頃の十七歳時の姿ですわよ」


「………………」


 十七歳?

 その壊滅的に平面な…………いや、陥没すらしてそうな胸で?

 そんなウソを信じろと?

 僕がドーテイだからって馬鹿にしてんのか?

 

「貴方もこのポンコツのように細切れにされたいのですか?」


 世迷言を抜かす自称女神の目が座り、寒気どころじゃない悪寒が背筋に走った。

 自称女神にチラ見されたカタツムリトカゲがガタガタと震えだしたって事が、その言葉を裏打ちしているように見える。

 その真偽はともかく、女神を自称するだけあって今の僕じゃ逆立ちしても勝てない力を持っているのは間違い無い。


「それよりも、『人間として生きてた頃』ってどういう意味ですか? 人間が神になったとでも?」


 ヤバい空気を変えたいってのも本音ではあるが、それよりも引っ掛ける言葉が僕の疑念を擽る。

 日本の神話のように、実在したであろう人物を神格化して自分達の権威を底上げしたって話か?

 それなら、このロリババアがどれだけの能力(ちから)を持っているとしても、神を詐称する人間モドキでしかないって事になる。


「ほう、『祟り神』……『和御魂』に『荒御魂』ですか。興味深い話ではありますが、私は正真正銘の神格を持った神の一柱ですわ。もっとも、私よりも神格が上の大神は存在しますが」


 コイツ…………僕の思念だけじゃなく、記憶や知識まで覗けるって伝えたいって事か。

 『祟り神』なんて日本人でも知らない人の多い観念を瞬時に理解する知能と、それを可能にする能力(ちから)

 日本では、祟りをもたらす存在とされた人間を神として祀っている事が多かった。

 地震や火山、疫病といった災害は、権力争いの敗者として死んで行った人間の恨みから引き起こされた祟りと考えられ、その者の恨みを鎮める為に祀り神格化したのだ。

 鎮められた神様は『和御魂』として人間に恩恵をも与え、祀りが不十分な神様は『荒御魂』となり災厄を呼ぶっていう考えが神道にはある。

 某学問の神様はその典型だね。


 この世界には存在しない神道の考えを瞬時に理解してみせる、それは確かに『神の権能』と言っても過言ではないものだ。


「この表現を借りるなら、私が予定していた貴方の役割は『私の荒御魂としての代行者』ってところですわね」


 僕にだけ分かるように、僕がより深く理解出来るように、そんな意図から出た表現なんだろう。

 僕が転生者だって事をナチュラルにルナ達の前でバラしたが、その前世の世界についての情報は検閲するって事か?


「その()達が、その程度の事実を突き付けられたところで貴方から離れるとでも思っているのなら、貴方は私が期待している程には他人をの気持ちを理解出来ていないみたいですわね」


 このロリババア、あまりにも唐突な展開と情報量に茫然自失状態のルナ達に眼をやりながら、僕に向かってため息を吐きやがった。


「ルナ、ラナ、今まで黙ってた事は本当に申し訳ないって思ってる。でも、あまりに荒唐無稽な話だからアルベルトだった頃から誰にも話した事はなかった話なんだ。決して君達を信用していないって事じゃない」


「う、うん」


「ちゃんと話してくれるよね?」


 言葉通り荒唐無稽な話ではあるが、こうやって自称女神なんて存在が不思議な空間に僕達を連れ込んでいる現実の方が本来なら荒唐無稽な話なんだ。

 多少の信憑性は出て来るだろう。


 …………あっ、そういえばロード君には前世の話をしたなぁ。

 まあ、今は僕本人でもある訳だし問題無いか。


「貴方もなかなかのクズですわね…………」


 自分の発言の誤りを認めない為に言い訳を考える僕に冷たい目を向けながら自称陥没女神がポツリと呟く。

 

 何だよ、文句でもあるってのか!?

 人間なんて、バカ正直に生きて行く事は不可能な生き物なんだよ、人間だったってんなら分かんだろうが!!

 その胸と一緒で寛容さが全く無いって、とんだポンコツ女神様だよ!


「ふふふ、貴方の口に出していない暴言を赦しているだけでも、私が如何に寛容であるかを証明していると思いますわよ」


 !?

 すみません、調子に乗ってました!!

 殺気って表現では生温い、死そのものを実感する程の殺意を向けられた僕は、言葉に出来ない謝罪を頭に浮かべる。

 口から言葉なんて発する事が出来ない圧迫感、指一本動かす事が許されないと思える威圧、グダグダな空気で忘れかけていたが、目の前の存在は僕にどうにか出来るような存在じゃなかったんだ。

 しかも、ルナ達に一切気付かせずに放たれている威圧と殺意は、彼女が常識の範囲に収まる存在ではないって証明でもある。

 僕に向けられた殺意は、僕に『自身が細切れにされる』イメージを鮮明に植え付けた。

 それが妄想ではないって実感と共に…………


「カイト!? 顔色が悪いよ!!」


「どうしたの!?」


「心配する必要はありませんわ。自身の無礼に後悔しているだけの話ですのよ」


 いきなり顔面蒼白になり固まった僕に気付いたルナ達が取り乱すが、残念め…………もとい、クラウディア様が簡易な説明をする。

 その説明で理解出来る訳ねえだろうが!!





 …………出来ない筈だよね?

 何で二人共、呆れた視線を僕に向けてんだ?


「カイト、仮にも魔人種の皇太子だったんだから、神様や精霊に敬意を払うべきだと思うわよ」


「私もお姉ちゃんに同意だよ」


 …………僕の味方は、僕に憐れみの視線を送っているカタツムリトカゲだけなのか?

 

 そんな中で貧乳めが……クラウディア様が口を開く。


「(´Д`)ハァ…、全く話が進みませんわね」


 ため息ついてんじゃねえ!!

 誰のせいだ、誰のおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!


いつもお読み頂きありがとうございますm(_ _)m

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