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第2章 エルディーニ聖国篇 8


「そんな悲壮な表情をなさる必要はありませんわ。何故、私が貴方達の事を知っているのかは順を追って説明して差し上げますわよ」


 聖都から少し離れた草原で、周囲に人の気配が無い事を確認した僕にロリババアが語り掛けて来た。

 その表情と声色から悪意、敵意を感じないって事実が、僕の警戒心を更に刺激してくる。

 そんな僕とは対称的に、ルナとラナは落ち着いた表情で警戒心も見せない。


「ルナ、ラナ…………何で落ち着いてるの?」


 僕と同等以上の魔法を使うSランクハンター、その実力の一環は隠蔽魔法の一件で明らかになっている。

 そんな存在が僕に対し生前の名前で呼び掛けて来るなんて、不思議を通り越して不気味でしかないってのに、二人の反応は薄い。


「えっ、だってこの人……高位の精霊か何かでしょ?」


「私達も初めて遭ったけど、そうよね?」


 ラナ、続けて発せられたルナの言葉に僕の警戒心は更に跳ね上がる。

 『高位の存在』その言葉が意味するのは、僕がザマァの対象と考えている『神』に近い存在の可能性が高いからだ。

 この国が創造神を祀る宗教『エルディーニ聖教』の聖地を有する宗教的な中心地である以上、その可能性はかなり高い。


 ルナ達が特別って訳でなく、エルフって種族には『長命』と『魔法との親和性が高い』といった特徴とは別に、人間種が知らない特徴がある。

 それは、『精霊との親和性が非情に高い』というものである。

 魔帝国で他の種族よりも重視される立場をあった理由でもあり、僕を含めた歴代の皇族の伴侶がエルフから選ばれるって慣習は、その特徴から来ていた。

 より『神に近い存在』である精霊との親和性が高いエルフの血は、神の眷属を自認する魔人種にとって言葉に出来ない程の価値を持っていたからだ。


 僕達『魔人種』は、人間種からは『魔を統べる邪悪な存在』という偏見で誤解されているが、それは僕達魔人種に創造神から与えられた役割が人間種にとって不都合なものであり、屈辱的と感じる者がいるものだった事に依存する。

 『欲に溺れ易く、短絡的な判断を下す事の多い人間種の暴走を止める』為に生まれた種族が魔人種であり、本来の役割は『人間種を管理する』とも捉えられるものだった。

 しかし、自らを『神の写し身』と増長した人間種は、『神』以外の自分達よりも高位な存在を憎み貶める為に、魔人種の存在を『絶対悪』と定義した宗教を拡めるようになった。

 その宗教の総本山がこのエルディーニ聖国の起源なんだから、僕の正体を知る高位な存在に対し警戒しない訳がない。

 本当に『神』って存在がいるのなら、自身の役割を護り続けて来た魔人種を見捨てた理由が何なのか、態々『転生者』まで用意してチートを与え魔帝国を滅ぼした理由が何なのか、それが分からない以上……納得する理由が無い限り僕の中で『神』って存在は敵に近い。

 ルナ達はエルフの本能から、精霊に対し無条件に近い親近感を抱いているが、僕にとっては敵対する存在の一部って感覚だ。


「先ず誤解を解いておきますが、マイアール帝国の行いは『神の意思』ではありませんわ。魔人種を滅ぼすという愚かで増長した行為は創造神様にとって想定外の事態であった為、因果律そのものを狂わせ世界の理に影響を与えてしまいました。とはいえ、貴方の運命に深刻な影響を与えてしまいました事には真摯に謝罪させて頂きますわ」


 淡々と理解の範疇を超えた話を始めたロリババアが、その表情を無表情から沈痛なものに変えて頭を下げる。

 って事は何か?

 自らが神の代弁者だとでも言うつもりか?

 ルナ達の反応を見ていると確かに高位の存在ではあるのだろうが、この世界を創造した神の代弁者であるって証拠にはならない。


「因果律って言ったよね。僕が知ってる言葉と同義なら『神の定めたシナリオ』って言っても過言じゃないと思うんだけど?」

 

 そう、因果律そのものが『神の意思』であり、全てが予定調和に進む為のシナリオ的なものの筈だ。

 僕の転生も含めてね…………


「当初の予定では『魔人種に転生した人間が、人間種の増長に神罰を加える』と定められていましたの。本来、『神の意思』である因果律で定められた運命が改編されるなんて事は有り得ませんわ。しかし、この度の事態は既に起こってしまいました。それは『神の意思』をも書き換える傲慢な者の存在を意味します」


 このロリババアの頭がおかしいのでなければ、神の代弁者として当事者である僕に向き合っているって事になるが、情報不足の状態で判断を下すような規模の話ではない。


「それと、口に出していないだけで私の事をロリババア呼ばわりするのは止めて頂きたいですわね」


 言外に心の中を読める事を伝えて来るロリババア……もとい、チビクロは不満気な表情を見せる。


「で、その創造神様ってのは、この世界の因果律を書き換えられる程度のポンコツって説明と判断して良いんでしょうか? そもそも、貴方の正体も分からないのに、この話に信憑性を感じるとでも?」


 謝罪されようが、僕自身がその謝罪を受け取った訳ではないし、敬意を払えって言われても、敬意に値する存在なのかすら分かっていない現状では更なる情報を引き出す以外の選択肢はない。


「流石に『神罰の代行者』に選ばれるだけの知性は持っているみたいですわね。それとも、過酷な過去が貴方に警戒心を植え付けたのでしょうか? しかし、貴方の疑問はもっともですわね」


 チビクロがそう言うと同時に目の前の世界が激変する。

 星々を散りばめた宇宙を想起させる空間に僕達は浮かんでいた。


「えっ? えっ!?」


「お、お姉ちゃん!? カイト!?」


「これは結界? いや違うな……魔力の存在すら感じない。ここは何処だよ!?」


 いきなり世界が激変したんだからルナ達が狼狽するのは当然だし、僕自身も動揺している。

 何せ、この空間では魔力って存在を感じる事が出来ない。

 つまり、僕の魔法で事態を打開する事が不可能って事なんだから。


 そして、目の前にいるロリババアの姿が変質して行く。

 グニャグニャとモザイクでも架かったかのように直視出来ない状態ではあるが、身体の大きさを含めて存在そのものが変質して行く事だけは理解出来る。


『我は【調停者】グラノス、神の眷属である古代竜(エンシェントドラゴン)だ』


 変質を終え、巨大な竜の姿になったロリババア……

 って事は、このトカゲは雌か?


『我の姿を見ての感想がそれか!? 我は神の眷属であり性別など存在しないわ!!』


「あぁ、雌雄同体って事ね、ミミズみたいな存在だねぇ」


『きっ、貴様、我をミミズ呼ばわりだとぉ!? 例えるとしてもカタツムリの方が数千倍もマシだわ!!』


 ルナとラナへの講義の意味を兼ねて雌雄同体って存在を口にした僕に、ミミズトカゲが激昂する。

 いや、本人の希望的にはカタツムリトカゲかな?


『そもそも、『完全たる存在』であり『不老不死な存在』として女神様に生み出された我に性別など存在しないのだ!! 性別とは不完全な存在である貴様等の子孫繁栄の為の機能であり、完全たる我に必要な機能ではない!!』


 …………『完全たる存在』ねえ、ポンコツ臭がプンプンするな。


「『女神様』って言ってたけど、アンタを生み出した存在に必要な性別は完全ではないって意味かな? 暗に神を批判してる?」


『ハッ、ハアアアアァァァァァ?!』


 明らかに狼狽し始めたカタツムリトカゲに呆れた表情を向ける僕と違い、ルナとラナはただ茫然としている。


『神に存在する性別を持っていない我は完全ではない? いやいやいや、☆◐✖✥✔⚪様は我を『完全たる存在』として創ったと仰ったではないか。神を疑うのか?………』


 何かブツブツと呟き始めたトカゲが古代竜(エンシェントドラゴン)

 魔帝国に伝承されていた古代竜(エンシェントドラゴン)って存在は、『神の代行者』であり、神に次ぐ最高位の存在じゃなかったっけ?

 日本のような多神教国家で生まれ育った僕には理解し辛いが、この世界に神は創造神しか存在せず、その眷属って呼ばれる存在が世界の管理をしている筈なんだけど…………

 その最高位がこのポンコツトカゲ?

 僕達、魔人種の上司に当たる存在がこのポンコツ?

 やっぱりこの世界って滅ぼした方が良いんじゃね?


 なんて考えてた僕に不意に声を掛けて来た奴がいる。


『(´Д`)ハァ… 【魔王】として転生させたとはいえ、そんな動機でこの世界を滅亡させる訳ないでしょう。このポンコツは放っておいて私がお話ししますわ』


 クラウディアって名乗ってた時のトカゲと同じ声が僕に話し掛けて来た。


『私の名は☆◐✖✥✔⚪、人間の発音ではクラウディアが一番近い発音になりますの。この世界の創造神と言えばお分かり頂けますか?』


 姿を見せる事無く、声だけで僕達に語り掛けて来る存在。

 って思ったら、トカゲの後ろからSランクハンターのクラウディアが現れた。

 いや、装備が似ているが違う。

 型こそ似ているが、その存在感が全く違うって事が見ただけで判断出来るレベルだ。

 特に剣、その存在そのものが僕にとてつもない威圧感を与えて来る。


『分かりますか、この剣こそが貴方を此処へ呼び寄せた理由。貴方の運命を斬り開く為の神剣【神滅の剣(レーヴァテイン)】ですわ。(………………レプリカですけど)』


 その剣が僕を呼んだ理由? 

 って事は、この世界にザマァを考えている僕を始末する為に呼び寄せたって事か?


いつもお読み頂きありがとうございますm(_ _)m

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