第2章 エルディーニ聖国篇 7
「貴方達、この私のパーティーメンバーにして差し上げますわ」
エルディーニ聖国、聖都のハンターギルドに入るなり、変なお子ちゃまに絡まれた。
「いや、僕はロリコンじゃ無いしパーティーメンバーは間に合ってますので、別の方を誘って下さい」
「ロリコン? 失礼ですわね。私は貴方達よりも年長ですのよ!?」
僕は優しく丁寧に返してあげたってのに憤慨した様子で反論してくる幼女、何を言ってるんだよこのお子ちゃまは!
仮に、君が僕達より年長ってのが本当なら立派なロリババアって事になるんだよ!!
長命種族のエルフでも十七、八までは人間と同じ加齢具合で、そこから長期間老化しないって生態なのに、君の見た目で僕達より年長だったら怖いわ!!
どう見てもラナより年下じゃねぇか(苦笑)
「うんうん、そうだね。……じゃあ、勧誘頑張ってね」
「ちょっ、ちょっとお待ちなさい!」
いきなりの展開に茫然としているルナ達を連れて、護衛依頼達成の報告と報酬受け取りの為にカウンターを目指す。
こんな子供が聖都のハンターギルドでパーティーメンバーを勧誘してるなんて、この国のハンターギルドは大丈夫か?
「お、おい、あいつクラウディア様に喧嘩売ってるぞ」
「マジか? 知らねえってのは恐ろしいな」
「それよりも、あのクラウディア様がパーティーメンバーにしてやるって言ってなかったか?」
「それは無いだろ、あの方とパーティーを組めるのはSランクでも一握りしかいねえんだぞ」
「いや、確かに言ってたんだよ」
周りのハンター達がボソボソと不穏な事を喋っているが、クラウディア様って誰の事なんだろうね。
話の内容から高ランクハンターだと推測出来るが、それらしい存在は見当たらない…………
まあ、変な少女に絡まれている僕には関係無いか(笑)
「すみません、護衛依頼達成の報告はこちらで大丈夫ですか?」
「あっ、は、はい!」
ムッキーッって擬音が似合いそうな表情ではあるが、カウンターで依頼達成報告を始めた僕達の邪魔をしないように黙って待ってる幼女の様子を覗いながら、受付のお姉さんは慌てて対応を始めてくれた。
「はい、確かにサインも登録されている店印も問題無いですね。では、報酬を用意しますので少々お待ち下さい」
ハンターギルドは魔導具により情報の共有化がなされており、今回のような護衛依頼で別の街で依頼達成報告をしても依頼者の情報確認をして貰える。
じゃないと、勝手にサインして虚偽報告する輩が出ない訳が無く、ハンターギルドの業務が成り立たないんだから当然っちゃ当然なんだけど、そんな高度な魔導具を造る技術がこの世界にある訳ではない。
なんでも、遥か古代の神殿から発掘されたオーパーツ的な魔導具を核に情報網を構築しているらしく、ハンターギルドが国家の権力から独立した存在として存在出来ている理由の一つに、この技術があるらしい。
まあ、こんな情報網構築技術が一部の国家に渡る危険性は、他の国家が連携して止めるだろうし、ハンターギルドを敵に回してギルド無しで国家運営していくなんて人間種の国家には不可能だ。
それこそ、魔帝国のような国民総脳筋みたいな国家があれば話は別だけどね(笑)
なんか御都合主義的な意図を感じないではないが、現実主義者の僕は現実にある現象を否定したりはしない。
否定はしないが、機会があれば探究したいって思ってる程度の興味はあるってだけの話だ。
「因果律に組み込まれた『世界の理』に疑問を持つか…………なるほど、☆◐✖✥✔⚪様が危険視される訳だ……」
後ろの幼女が何か呟いているが、生憎と聞こえなかった。
これが聞こえていれば、この先の展開も違ったものになっていたのかもしれないと後になって思うのは別の話である。
この時の僕に、この頭が少し足りなさそうな幼女モドキが超常の存在であり、僕の心の中を覗いているなんて想像出来る筈も無いし……
「用は終わりましたかしら? それでは先程の話の続きを――」
「ハンターに憧れてるのかな? でも、ハンターって危ない人も中にはいるからお家に帰った方が良いよ」
依頼達成の報酬を受け取りカウンターから離れ、ハンターギルドの資料室でダンジョンの情報を探ろうと歩み始めた僕達に再び絡んで来る少女。
僕は穏やかな性格の常識人だから問題無いけど、見れば高そうな装備に身を包んでいるんだから、ガラの悪いハンターだったらヤバい事になるかもしれない。
だから、優しく『家に帰れ』と諭したんだけど、
「そっ、その方は世界でも五人しか認定されていないSランクハンターの一人、クラウディア様ですよ!」
僕達の対応をしてくれていた受付嬢のお姉さんが、真っ青な表情で僕達に注意してくる。
「Sランクハンター? 貴族子女の遊びじゃなくて?」
「この少女が?」
「うっそだぁ~」
至極真っ当な僕達の反応に、受付嬢のお姉さん略して受付姉さんは青い顔を更に青くっていうか血の気が引いて真っ白にさせた。
えっ?
その反応は本当って事?
ドヤ顔で無い胸を突き出しふんぞり返る少女を改めて見返すが、よく見れば僕とは違う種類の隠蔽魔法?らしき痕跡が見える。
「その表情は、私が本当の実力を隠している事にやっとお気付きになったのかしら?」
「強さが全ての基準になるハンターがどうして隠蔽を?」
「それは、貴方が一番知っているのではなくて?」
ドヤ顔で僕達に語り掛ける少女にその実力を隠蔽した理由を問い掛けるが、呆れた表情で僕の隠蔽魔法を見破っていると告げて来る。
この世界で普通に使われている隠蔽魔法とは違う魔法を使い、更に同様な僕の魔法を看破しているこの少女がSランクハンターってのはマジっぽいな。
じゃあ、この見た目も誤魔化した姿?
「私のこの美しい姿を見て、その様な不敬な事を考えていたら細切れにしますわよ?」
何か物騒な表現をしているが、その表情から判断すると……
「って事は、本物の『ロリババア』!?」
「貴方、自殺願望でも持ってますの?」
ある意味、異世界転生物にしか存在しない希少種を前に感激の表情を浮かべる僕に向けて殺気をだだ漏れにしてくるロリババア。
感激だよ! 最高だよ!!
テンプレキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!
「あ、あいつ死んだな」
「お、俺は何も見てない、聞いてないぞ……」
周りのハンター達が蒼白な顔で後退りしながら不穏な事を口にしているが、ルナ達の声が空気を変えた。
「カイト、何を失礼な事言ってるのよ!」
「女性に対し『ババア』なんて最低だよっ!!」
まるで、我が事のように怒りの表情で僕に注意してくる二人の剣幕に驚いた僕は反射的に謝った。
「た、確かに失礼でした。申し訳ないです」
そうだよね。
彼女達の種族はエルフ…………
見た目は若くても、人間種とは比べ物にならない長命な種族であるエルフに嫉妬した人間種が『年寄り扱い』して溜飲を下げるなんて話はよく耳にする。
ルナとラナみたいに本当に幼いエルフにも心無い言葉を投げつける存在が存在しないとも限らない以上、他人事とは思えないんだろう。
反省した僕はロリババアに対し素直に頭を下げる。
「表面上の言葉と内心の剥離が凄まじいクズですわね……。いえ、謝罪の気持ちが本音な分、更にタチが悪いですわ」
真摯に頭を下げる僕に対し、このロリババアは頭のはおかしな反応を返して来る。
何だよ、難癖をつけて慰謝料でも請求したいのか?
残念ながら、今の僕に金銭的な余裕はないぞ!!
『緋色の剣』ってか、クラン【暁】に払わないといけない口止め料を今から稼がないといけないんだから……orz
「本当に失礼ですわね。Sランクハンターの私が金銭的に困っている筈が無いでしょう!」
あれ?
口に出してはいない筈なんだけど、僕の心の中を覗いているかのような突っ込みが入ってるのは気の所為か?
「あ、貴方が思っている事が顔に出ているだけですわ!」
ロリババアは慌てた様子で僕の表情から簡単に読めるなんて難癖をつけて来るが、ウンウンってルナ達が頷いているのは何でだ?
「ともかく、僕達にも事情ってものが有りますので、貴方とパーティーを組むつもりはありません。Sランクハンターからのお誘いであろうがそれは変わりませんので申し訳無いですが、他の方に当たって下さい」
話のペースをロリババアに持って行かれてたのを、強引に引き戻してお断りをいれる。
僕の正体、その目的を公に出来る訳無いんだから、魔帝国に縁のある種族以外とパーティーを組むなんて論外な話でしかない。
例え相手がSランクハンターだろうが、ロリババアだろうが、王族だろうが、大貴族だろうが結論が変わるなんて有り得ないんだよ。
って理由でお断りをいれたんだけど、ロリババアの返答が僕の理性をふっ飛ばしやがった。
「大丈夫ですわ、事情は知ってますのよカイト…………いえ、アルベルトさん」
周りの人間に聞こえないように僕の耳元でロリババアが囁いた言葉は、僕に驚愕と恐怖、それよりも大きな怒りの感情を引き起こした。
「ちょっと外でお話ししましょう」
カイトって名前については、護衛依頼達成の報告をしているのを聞いていたって納得する事も出来るが、名乗った事の無い、名乗るはずが無いアルベルトって名前が出て来た理由は何だ?
事と次第によっては、Sランクハンターだろうが何だろうが消えて貰わないといけない案件だぞ。
「そうですわね。私も色々とお話ししたい事がありますので」
不敵な態度で返答してくるロリババアに不気味なものを感じてはいるが、だからといって放置出来る話じゃない。
このロリババア、マジで何者だ?
お読み頂きありがとうございますm(_ _)m




