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第2章 エルディーニ聖国篇 6


「何コレ!? サクサクの食感で中身はジューシー!!」


「ソースも美味しいし、これなら大満足だよ♡」


 肉大好きエルフ二人も大満足、グリフォンを使ったチキンカツモドキはかなり良い感じに仕上がった(笑)

 流石に箝口令を敷いて貰ってる翼竜(ワイバーン)()食べる事は憚られたので、まだまだ余っているグリフォンの肉を使った料理でルナ達には我慢して貰おうとしたんだけど、予想以上に食い付きが良いな。

 チーズがあればもっと良かったんだけど、無い物ねだりをしても仕方無い。

 今後は色んな食材をアイテムボックスに入れておこう。


「お前、魔法だけじゃなく料理までスゲーな!!」


「これはカイト君の実力を認めざるを得ないな……」


「すみませんね、僕達まで御相伴に与ってしまって」


「あぁ、カイトさん、なるだけ早くリーファンスに帰って来て下さいね。また護衛依頼をお願いしたいので!!」


 仕込みはみんなに手伝って貰ったけど、ある程度の数が揚がってからはみんなに先に食べて貰い、僕はひたすらチキンカツモドキを揚げ続けている。

 箝口令を守って貰う為にも印象良くしておきたいって下心だったけど、大成功な手応えありがとうございます(笑)

 バーナードさん達だけじゃなく商隊の皆さんにも振る舞っているので大変な数だけど、これだけ笑顔で感謝されるとヤル気も起きるってもんだ。

 前世では一人暮らしの上、出不精だったから料理は結構やってた事が今になって役に立つんだから人生って不思議だよねぇ。

 スマホで検索するだけで色んな料理のレシピが分かるから、面白くて色々作ってたからアレンジもお手の物だ(笑)

 異世界物の定番だった生卵の扱いは、浄化魔法のあるこの世界では心配無く、皆さん抵抗無く食べてくれている。

 まあ、チキンカツモドキは仕込み過程で生卵なだけで、食べる時にはちゃんと火が通っているんだから問題無い。

 ソース代わりに作ったタルタルソースに『抵抗感があるかな?』って心配してたんだけど、エルディーニ聖国では『マヨネーズ』が普及しているそうだ。

 あの国にも転生者が居た可能性が高い情報ではあるが、警戒しておけば問題無いのではないだろうか。

 異世界チートでヒャッハーしている様子は無いし、僕の正体がバレない限り関わる事すら無いだろう。

 ってか、関わりたく無いし(笑)









「あぁ、とうとう着いてしまいましたね」


「カイトさんの料理ともお別れ……うううぅ…」


「おいおい、カイトの事は他言無用だぞ、分かってんだろうな!」


 更に数日進んでやっとエルディーニ聖国の聖都が見えて来た辺りで商隊の皆さんが名残惜しそうな事を言ってるが、バーナードさんがすかさず突っ込みを入れてくれる。


「それは勿論ですよ! じゃないと、二度と護衛依頼を受けて貰えなくなるじゃないですか!」


「分かり切った損害を望む商人はいませんよ。人材こそが何よりの財産って事は行商に関わる者の当然の心得ですから」


 リーファンス最大手のクラン【暁】の箝口令を破って、今後の商売に差し障りを出すなんて馬鹿な判断をする商人はいませんって事なんだろう。

 やっぱり大手の名前って便利だねぇ……

 なんてルナ達と話していたら、バーナードさんから突っ込みが入る。


「自覚が無いってのは時には嫌味になるぞ。商人達が言ってる損害ってのはお前との繋がりだ」


「えっ? 僕達は新人ハンターのパーティーですよ? そんな信用がある訳無いじゃないですか」


 そう、確かな実績が信頼関係を作る以上、初めて護衛依頼を受けた新人ハンターの僕達が信頼される訳無いじゃないか!


「この天然がっ!!」


 常識的な返事をした僕に対し、苛ついた表情でバーナードさんは僕を天然呼ばわりしてくる。


「お前等なあ、『目立ちたくない』ってんなら自分達の異常性くらい自覚しろ!!」


「「「ええぇ!?」」」


 いきなり異常呼ばわりされた僕達三人の声が揃う。


「希少な存在のエルフを引き連れて異常な魔法を使う、これだけでもお前等は要注意人物なんだよ!!」


「要注意人物って…………」


 確かに、エルフは魔帝国滅亡前も人間と関わりを持つ事が稀だったから希少な存在ってのは分かる。

 でも、だからって要注意人物呼ばわりはねぇ。


「お前だ、お・ま・え!! 要注意なのはエルフの二人じゃなくて、カイト、お前だ!!」


「へっ?」


「お前が実力を隠しているつもりでも、俺は最初に顔を合わせた時からお前のヤバさを感じてたんだ。一定のレベルを超えたハンターなら、お前のヤバさは直ぐに理解するぞ」


 苛ついた表情から心配するような表情に変わったバーナードさんの言葉が僕に突き刺さる。

 魔力を抑えているだけじゃ、僕の本来の魔力等は隠せていないって事か?

 なら…………


「こんな感じでどうでしょう?」


 極、軽めに【気配遮断(リアルブロック)】を発動させた状態でバーナードさんに問い掛ける。


「お、お前、ホントに何でもありだな!? 何をした?」


 【気配遮断(リアルブロック)】の効果で存在感を薄くした事で、バーナードさんが感じる感覚にも変化が現れたようだ。


「魔法で僕の存在感を薄めてみました。効果有りそうでしょうか?」


「存在感を薄めた? …………うん、それなら大丈夫だろ」


 頭を抱えたバーナードさんからお墨付きを頂いたけど、何か釈然としない気分なのは気のせいだろうか?


「一応言っとくが、俺の前以外でそんな出鱈目な魔法を見せんなよ。他のハンターがみんな信用出来るって訳じゃねえって事くらい分かるだろ」


 僕は自分を常識人だと思っていたけど、バーナードさんを見てると常識人ってのはこういう人の事なんだろうなって思う。

 僕達に不利益をもたらす存在は消してしまえば良いって思ってた僕の感覚は、やっぱり少し壊れているんだと再認識した。

 確かに、『バレたら殺せば良いか』なんてマトモな感覚じゃない。

 僕は世界の理不尽に対しザマァしたいのであって、全ての人類を滅亡させたいって訳ではない。

 殺された直後は感情的になっていたけど、十七年って時間は僕に冷静さを取り戻させる機会をくれた。

 マイアール帝国の人間に対しては冷静でいられる自信が無いが、それ以外の人間全てが憎いってのは違う。

 こうやって、僕達の事を本気で心配してくれるような人間種も居るんだ。

 壊れてしまった僕の心にも響く言葉を、出会って数日のおっさんハンターが掛けてくれるって現実をちゃんと直視しよう。


「何か……釈然としない気分になったのは気のせいか?」


 僕の表情を暖かい目でを見ていたバーナードさんが何か納得出来ないって表情になってるが、何処かのゴリラといい……高ランクハンターは読心術でも使えるのか?


「気のせいじゃないですか?」


 まあ、勘が良くないとハンターとして大成出来る筈ないし、高ランクハンターの勘は馬鹿に出来ないって事だねぇ。

 そういった意味では、バーナードさん……貴方は高ランクハンターに相応しい人材って事ですよ、誇りましょう(笑)


「やっぱり釈然としねえ…………」


 後頭部をも掻きながらボソッと呟くバーナードさんは、パーティーメンバーの処に戻って行った。


「カイトって顔に出るからねぇ」


「お姉ちゃん、しぃっ!」


 僕とバーナードさんの会話を黙って見ていたルナが何か呟き、ラナが慌てた表情で人差し指を口元に持っていく。

 僕の悪口を言ってる?

 …………二人に限ってそんな訳無いか(笑)


 とにかく、もうすぐ護衛依頼も無事終了だ!

 しかぁし、理系で色んな実験を続けて来た僕は『最終段階こそ油断から失敗の多い時』って事を熟知している。


「ルナ、ラナ、もうすぐ聖都だけど依頼が終了するまでは気を抜かずに行くよ。こういう時が一番危ないんだからね」


「「は〜い!」」


 気持ちの良い返事なんだけど、二人の視線から『お前が言うな』って気持ちを感じたのは気のせいかな?

 気のせいだよな(笑)







 自分の発言がフラグじゃないかと思い後悔したのはさて置き、特に何事も無く商隊は聖都の城門を通過した。

 エルディーニ聖国に来るのが初めての僕達と違い、商隊の人達の大部分は勝手知ったるといった感じで手続きを済ませ、その護衛である僕達もハンター証を提示するだけで特に誰何されたりする事無く入城を許可された。

 現代日本の出入国と違い、戸籍すら存在しないこの世界のセキュリティならこんなもんだろう。

 僕みたいに偽名?で登録したハンター証が身分証として信用される世界なんだから、余程怪しい素振りでも見せない限りは税金を納めさえすれば問題無いんだろうな。

 僕達ハンターは魔物の討伐というこの世界では重要な役割を担った存在であるため、ハンター証を提示するだけで入城税を取られる事は無い。

 ハンターが城門を通過する度税金を徴収したりすれば、そんな都市にハンターは寄り付かなくなる。

 そうなれば、魔物による被害はその都市の領主の責任となり、当然の結果としてその都市は寂れるだけとなるのは容易に想像出来るのだから、そんな馬鹿な判断をする領主なんて存在しない。

 その変わり、ハンターギルドの報酬から税金分とハンターギルドの取り分が差し引かれている。

 慈善事業じゃないんだからハンターギルドも収入は必要だし、ハンターも個人では受けられない依頼を用意して貰えるって利点から、この仕組みに文句を言うのは余程の馬鹿くらいだ。

 

「では、これがサイン済の依頼書です。また、我々の依頼を受けて頂けると助かります」


 商隊の代表者として、『グリーズ商会』のレンさんがギルドの依頼書にサインをして渡してくれた。


「こちらこそ、御世話になりました。リーファンスに戻った時はまた宜しくお願いします」


 往復契約の『緋色の剣』と違い、僕達はここで依頼終了だ。

 儀礼的な挨拶ではあるが、お互いに握手して気持ち良くお別れする。


 さあ、ハンターギルドで依頼書を提出したら、ダンジョンの情報集めから始めましょうかね!


お読み頂きありがとうございますm(_ _)m

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