第2章 エルディーニ聖国篇 1
「これだけ野宿が続くと、流石にうんざりして来るね……」
「仕方無いでしょ、ラナ。人前でカイトのアイテムボックスを使わせる訳にはいかないんだから。あんな異常な魔法……他人に知られるだけで厄介事しかない毎日になってしまうわよ」
…………orz
交易の為、オーネスト王国から北の隣国エルディーニ聖国へとリーファンスを出発した商隊の護衛依頼を受けた僕達は、馬車の車列の中団に沿って歩き続けている。
本来、大規模な商隊からすれば門前払いの対象にすぎないDランクパーティーの僕達が護衛依頼を受ける事が出来た陰には、リーファンスハンターギルドのギルド長であるリチャードさんの推薦と、同じ依頼を受けたBランクパーティー【緋色の剣】を含む大手クラン【暁】の推薦がある。
クランとは、ハンターギルドに所属するハンターがより効率的に依頼達成する事を目的として設立する団体であり、その規模、信用度、発言力は参加しているハンターの質により決まると言っても問題無いだろう。
大手クランになると、ハンター活動の補助を目的とした人員として鍛治師や料理人、事務員等のハンター登録されていない一般人も存在しており、受注する依頼も大手商会やハンターギルドから直接依頼されたりすると聞いている。
そんな依頼をクランに所属するハンター達の特徴に合わせ効率的に振っていく事で、依頼達成率の向上と、費用対効果の向上から来る依頼料の適正化による依頼人からの信用の両面からクランに所属するハンター達を支援しているって事だ。
何よりも、個々のハンターだけでは持ち得ない情報量は、依頼を達成する上で大きな意味を持って来る。
クランとして情報共有する事により、物事の表面に浮かぶ情報のみで無く、その裏に隠された様々な事情、思惑を精査した上で依頼の受注を決める事が出来るって事は所属ハンター達の安全のみならず、確実な依頼遂行により依頼人の安全まで担保される可能性が高まる効果を生む。
それ故、ハンターギルドに依頼して不特定多数のハンターに依頼するよりも、指名料込みとはいえ、間違い無い実力のハンターを派遣してくれるクランに依頼した方が安心という依頼人も当然ながら存在しており、クランに専属契約を持ち込む商会は少なくない。
今回の依頼については、『竜の咆哮』の一件のほとぼりが冷めるまでリーファンスを離れたい僕達と、僕達を自ギルドに繋ぎ留めておきたいリーファンスギルド、最近話題に上がる僕達を勧誘したいリーファンス最大のクラン【暁】三者の思惑が一致した事で実現したって事だ。
切れ者であるリーファンス副ギルド長アイシャさんが認めるほど、【暁】のクランとしての評判は良く、実際に今回同じ護衛依頼を受けているパーティー『緋色の剣』のメンバーについても僕達三人は好感を持っている。
いや、好感は持っているけど、僕達が【暁】に加入する事は無いんだけどね(笑)
『緋色の剣』はリーダーのナイスミドル(たぶん三十路半ば)バーナードさんの特技である魔法剣が名前の由来だそうだ。
魔法剣というとヴォルクも得意としていたが、各々の得意魔法の違いが効果の違いに現れる為、一口に魔法剣と括ったところで実際には千差万別なものである。
ヴォルクの魔法剣は純粋な魔力による力押しっていう単純なものだったが、潜在能力が桁違いなのか、威力という一点においては他の追随を許さないチートなものだった。
それはともかく、バーナードさんの魔法剣は炎属性が現れている為、剣を緋色の魔力と炎が覆うそうで、斬りつけた相手に剣撃の傷と同時に炎によるダメージを与えるそうだ。
グスタフ相手に試した拷問みたいな感じになるのかな?
だとしたら、結構エグい魔法剣だね……
で、その魔法剣の効果に得意魔法の効果が現れるって点だけど、僕は魔法の効果を使い分ける事が出来る。
これはこの世界で異常に分類される事らしい。
出会った時に、ルナとラナが弓矢に風魔法を纏わせていたのも魔法剣の応用で、二人が使える魔法剣は風属性であり、効果は鎌鼬による斬撃で攻撃力を増すというものだった。
その彼女達にも色々試して貰った結果、風以外の効果を付与する事は不可能だという結論にならざるを得なかった。
●バーナード
●人間 Lv 71
●HP 412
MP 188
戦闘力 312
体力 283
素早さ 211
防御 356
●大剣術Lv7・魔法Lv6・魔法剣Lv6・指揮Lv2
バーナードさんのように、ステータスに魔法剣って項目が出ない理由については要検証だけど、とりあえずバーナードさんがBランクパーティーのリーダーに相応しいステータスなのは確認出来た。
あのゴリラのステータスが異常で、一般のハンターの中ではかなり上位なステータスなのが分かる。
パーティーとしてCランクに認定されたばかりのグスタフのステータスと比較すれば、個人でBランク相当とされているバーナードさんのステータスがどれほど優れているのかが浮き彫りになるってもんだ。
これだけステータスに差があるのに、何が『最強』だよ(笑)
いや、ヴォルク以外は雑魚って勘違いしそうになるけど、あのレイナルドとかいう奴みたいに油断出来ない化け物がいたって事を考えると、表面の情報だけで判断する事がどれだけ危険なのか分かる。
弱小国の地方都市にすらこれだけのハンターがいるくらいだ、マイアール帝国ほどの大国にどれだけの人材が潜んでいるのか、考えるだけで気が遠くなるな。
「ねえ、そろそろ戻って来て!」
「カイト、カイトったら!!」
いかん、色々と考えてたら、ルナとラナが膨れっ面になってる。
人と関わる事の出来ない十七年間の弊害で、一度思考に入ると周りが見えなくなってしまう。
決っして、前世の僕がボッチだったからではないから!
アルベルト時代には、マギクスをはじめとした脳筋共に囲まれて暑苦しい生活をしてたんだ!!
「もう、また一人で遠い目をしてる!」
「私やお姉ちゃんを放り過ぎだよ!」
「ごめん、ごめん。バーナードさんのステータスを思い出してから色々と考え込んでたんだ」
二人も当然、顔合わせの時点で『緋色の剣』のメンバーを【鑑定】しており、彼等のステータスについては認識している。
「僕達のステータスに魔法剣が表示されない理由って何なのかを考えてたら、色々と他の考えが派生してしまったんだよ」
「魔法剣?」
「得意だからとか、使用頻度の問題じゃないの?」
単純に、魔法剣がステータスに表示されない理由はラナが言うように使用頻度的なものかもしれないが、僕としてはステータスが才能や現能力を表示すると仮定しているので、魔法剣の表示は才能的な向き不向きと予想している。
「う〜ん、僕達も魔法剣は使えるけど魔法の一環として使えているだけで、才能的には魔法剣に特化している訳じゃ無いんじゃないかと思ってるんだ。つまり、純粋に魔法剣の威力って点での伸び代が有るかどうかって事だね」
「えぇ〜!?」
「じゃあ、カイトの予想通りだとしたら、私やラナは魔法剣も応用もこれ以上伸び代に期待出来ないって事?」
具体的な才能の有無という僕の予想を聞いたラナは信じたく無いって感じの声をあげ、ルナは冷静さを保ちながら更に深く突っ込んで来る。
「いや、魔法の才能だけで魔法剣が使えるって事は、魔法の使い方次第で才能を超える事は可能だと思う。現実に、ルナもラナも僕が改編した魔法を使えてるだろ? アレはステータスに表示される魔法の才能で比較したら異常な威力なんだからね」
そう、あくまでステータスに表示される才能は現在の能力ってだけで、潜在能力は表示されていない可能性が高い事、更に魔法を改編出来るって事は、才能持ちよりも高威力の魔法剣を生み出す事も可能だって事だ。
「じゃあ、私もお姉ちゃんもちゃんとカイトの役に立てるって事? 呆れて捨てられたりしないって事だよね?」
「何で僕がルナとラナを捨てるなんて話になってんの!?」
安心した表情を見せたラナが上目遣いで僕に聞いて来た内容があまりに予想外過ぎて、思わず動揺した返答をしてしまった。
「だって、この前もカイトは私とお姉ちゃんを置いて一人で行っちゃったじゃない。私達が役に立たないって思ったら…………また、置いて行かれるんじゃないかって………………」
「もう、それは違うって言ったでしょ!」
『竜の咆哮』を始末した時に二人を置いて一人で行った事は、ラナに少しトラウマを与えてしまったって事か?
ラナの不安気な言葉を即座に否定するラナも、姉として気丈に振る舞っているけどいつもの陽気さに欠けているように見える。
「ラナ、僕は君達の両親と『今度こそ、魔帝国の国民を護ってみせる』って約束したよね。僕が君達を見捨てる事なんて絶対に無い。まして、君達は僕のパーティーメンバーだよ? ある意味で一心同体なんだから」
パーティーとして機能する為には、信頼関係を軸にした連携と呼吸が必要だと思っている。
そうじゃなければ、必ず土壇場で綻びが出てしまう筈だ。
正直に言えば、マギクスとコンビを組んでいた時のように信頼出来る前衛が欲しいところではあるが、現状で彼並の実力を持つ仲間は期待出来ない。
なら、本来は後衛向きなルナ達を護るために、僕が頼れる前衛になる必要がある。
その為の魔法剣に対する考察だったんだけど、意図を説明していなかったせいで、二人を不安にさせてしまったみたいだ。
「一心同体……」
「そっ、そうね。カイトと私達は一心同体よ!」
何故か頬を赤らめた二人が嬉しそうな表情を浮かべてくれたので一安心かな。
本当に、年頃の女のコって扱いが難しい……
ボッチだった前世が恨めしいなぁ……
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