第1章 淡々とした作業
「ここからは僕一人でやる。二人は家で待っててくれるかな?」
オーガ討伐依頼の競争を始めて四日目、無事にハイオーガを発見、討伐した僕達は、ルナとラナが住んでいた場所に【異世界収納】から二人の家を取り出し話し合いをしている。
「カイト一人で何をするつもりよ!?」
「私達はパーティーでしょ?」
予想通り、ルナとラナの二人は反対するが、
「これは僕の……僕が清算するべき…………いや、しなきゃいけない過去だ。僕の目の前で殺されたマギクス、僕達が離れていた間に『帝国の宝具』とやらで虐殺された城の皆の為にも」
そう、これは復讐だ。
心配してくれているルナとラナには悪いが、二人は当事者ではない。
両親からカーディナスでヴォルク達が同胞にやった事を聞いてはいるが、その当時にいたのは両親であって二人ではない。
つまり、関係者ではあっても当事者ではないんだ。
「復讐の連鎖に当事者以外が関わるべきじゃない。そうじゃないと、復讐を対象は何処までも拡がる一方になるし、関係の無い新しい復讐が生まれて行くだけだ」
「私達のお父さんは、お母さんは当事者だよ!」
「私達もマイアール帝国に人生を狂わされた当事者じゃないの!?」
二人には納得出来ないんだろう。
僕の言葉にラナが、続けてルナが反論して来るが、
「だから……だよ。君達の両親は二人に復讐を望んでいたのか?」
「「えっ…………」」
「君達の両親が復讐を望んでいたのなら、『人間種の全てを憎むな』なんて言わないだろ? そして、アイツ等は戦争の当事者ではないんだ。そんな存在に君達を関わらせるのは、君達の両親に対する侮辱になると僕は思っているんだ。分かってくれるかな?」
「「………………」」
続けて出た僕の言葉に二人は黙り込む。
「ヴォルク達、あの戦争の当事者達が相手なら二人にも協力して貰うかもしれない。でも、その前段階から関わらせるつもりは無いんだ。君達の両親が二人に望んだのは『幸せな人生』であって、『魔帝国の復讐』じゃないからね。二人が『幸せな人生』を送る為にもマイアール帝国は潰す必要があるとは思うけど、その為に必要以上に手を汚す必要は無いんだ。これは当事者である僕がやるべき事だ」
「ちゃんと帰って来てくれるよね?」
「そのままいなくなったりしない?」
僕の言葉、表情から意思の固さを感じ取った二人は、納得出来ない表情ではあるが僕の行動を容認してくれた。
ただ、情報を搾り取った後、そのまま次の行動に出ないか心配をしてくれているみたいだ。
「僕が二人を放って行くなんて事は絶対に無いよ」
「絶対だよ?」
「放って行ったら、一生賭けても探し出して償わせるんだから!」
懐かれてるのは嬉しいけど、二人の僕に対する依存度合いが少し心配になる。
特に、『一生賭けても』なんて言ってるルナ……
二人の幸せな人生の為に僕が出来る事は全力でしていくつもりだけど、『一生賭けても』なんて言葉は将来の伴侶に言うべきだよ。
亡国の皇太子に人生を賭ける価値なんて無いんだから(笑)
「おいおい、何で一人で彷徨いてるんだよ?(笑)」
馬鹿正直にオーガを探している竜の咆哮の前に姿を現した僕に嘲笑を浮かべたグスタフが聞いて来る。
「『やっぱり無理でした』って泣きつきに来たんじゃねえのか?」
「あぁ、みっともなく謝罪する姿をエルフの小娘に見せたくないから一人で来たって訳だ(笑)」
「なんだよ、プライドだけは一人前だな(笑)」
「『僕が間違えてました』って土下座からだろ? 早くやれよ!」
取り巻き共が寝言を宣うが、寝言は寝て言えって感じだ。
まあ、今から永遠に眠って貰うんだけどね(笑)
「【夢幻拘束】」
先ず、グスタフ以外の雑魚を精神魔法で昏倒させる。
この魔法は夢の中で対象が望む世界を映し出し現実の世界では有り得ない快楽を与える為、被験者の精神が余程強くなければ現実との区別をつける事すら出来ない。
夢の中と気付けた処で意味は無いんだけどね(笑)
「なっ、お前等どうした!?」
いきなり昏倒した四人を見て焦ったグスタフが声をあげる。
「大丈夫ですよ、彼等は幸せな夢を見てるだけですから(笑)」
「なんだと!? テメーが何かしやがったのか!?」
「何かするのは今からですよ、【影拘束】」
雑魚四人と違い、グスタフは闇魔法の応用で創った魔法【影拘束】で拘束する。
今から順番で尋問していくんだから、グスタフの意識を刈り取る訳にはいかないしね。
「なっ、何だこの魔法は!?」
自身の影から触手のように伸びて来た影に拘束され、地面に貼り付けられたグスタフは現状を理解出来ずに混乱している。
っていうか、ガチムチ男を影の触手で拘束って誰得だよ?(笑)
「貴方達がバカにしていた『魔族』の魔法ですよ(笑)」
「魔族だと!?」
「改めて自己紹介させて頂きますね。元魔帝国皇太子アルベルト、現在は人間種のカイトと申します。あぁ、この身体は貴方達が崇める英雄ヴォルクの息子ロード君だった物ですが(笑)」
「てっ、テメー、何を言ってやがる!?」
拘束された身体をなんとかしようとするグスタフだけど、その程度の力でなんとか出来るほど脆弱な魔力は込めてないよ(笑)
地面に大の字に貼り付けられたグスタフを見下ろし、指先からガスバーナー並の炎を出した僕は言葉を紡ぎ続ける。
「君は戦争の当事者ではありませんが、……ヴォルクのクソヤローの部隊に在席した事が不幸だったと諦めて下さい。僕の質問に素直に応えて貰えれば、少しは楽に殺してあげますから」
「はっ、ハアッ!? テメー何を!?」
「先ず、ヴォルクの部隊の規模……構成人数と装備について教えて頂けますか?」
「おっ、脅しに屈するとでも思ってんのか!? テメー、こんな事をしてタダで済むとでも思ってやがるのかぁ!?」
最初に警告してあげたにも拘わらず、僕の質問に対し見当違いな言葉を返すグスタフの左手に指先を向ける。
「ガッ、ギィヤアァァァァァァ!!」
影の触手で指を拡げられた状態で地面に張り付いているグスタフの小指を、僕の指先から放たれる炎が焼き切っていく。
前世のヤクザ漫画で見た拷問方法だけど、ガスバーナーで焼き切った傷口は血管が焼き塞がれて血が流れる出る事なく、失血死出来ない地獄が待っているんだよ。
「君が何処まで頑張れるか試す指は両手足で二十本、いや、後十九本か。全て耐える事が出来たら次は腕や脚を少しづつ細切れにしていってあげるから。大丈夫、痛みで気が狂わないように精神魔法でガッチリと護るから安心して頑張ってね(笑)」
正直、自分でも驚きだ。
僕にこんな趣味は無かった筈なんだけど……
不思議なくらい気分が高揚していく。
ヴォルク達に殺されて、ロード君が現れるまでの十七年間で僕の精神は少し壊れてしまったのかもしれない。
「ヒッ、しゃっ喋る、喋るから許してくれ!!」
高揚していく自分に対し少し自己嫌悪に陥っていると、僕の表情を見たグスタフが怯えながら懇願して来るが、
「焦る必要は無いですよ。人間種に対して敵対していた訳でも無かった僕達に奇襲をかけて亡ぼしてくれたマイアール帝国の軍人を生かして帰す訳が無いでしょう? 君達が誇りに思ってた事は、僕達にとって赦せる事じゃないんだから」
「お、俺はあの戦争に参加してねえ。その頃はガキだったんだ!!」
「僕も当時はガキでしたよ。でも、ヴォルクのクソヤローに首を落とされた(笑)」
自ら選んで軍人になった以上、殺す覚悟はあっても殺される覚悟が無いなんて言い訳を聞くつもりは無い。
「全て、俺の知ってる事は全て教えるから!?」
「それが真実かどうか確かめる術が無い以上、君達全員に同じ事をしていくしか方法は無いんですよね。強いて言えば『どうせ殺されるなら嘘を』って考えてる可能性も高いですし、『お願いだから殺してくれ』って思わせる以外の方法は存在しないんですよ。大人しく諦めて肉片になって下さい(笑)」
利き腕じゃない方の小指一本で何を言ってるんだか。
ヴォルクの奴をを誇りに思ってるようなクソヤローに、あの時の僕以上の絶望を与える事を躊躇する訳無いじゃないか(笑)
痛みで狂う事も出来ない中、少しづつ自身の身体がバラバラになって行く事で、あの時の僕達と同じ絶望を感じて貰うんだから。
「な、何で俺が!?」
これが本当に理解出来ない…………
前世でも、人を殺して死刑を言渡された人間が『いつ執行されるか分からない地獄』なんて寝言を言ってたけど、自分だけは他人を殺しても赦されるとでも思ってんのか?
特に、テロって呼ばれる行為で無関係の人間を殺した奴が掲げる理想に共感する人間の気持ちが分からなかった。
自身の命を賭けるだけならまだしも、それを他人に強要する権利があるとでも考えてるんだろうか?
マイアール帝国の掲げる正義が世界の正義って考えてたんだろうな。
だから、自分が復讐される側になった途端、『何で俺が?』なんて寝言を平気で口にする。
今まで、マイアール帝国に攻め亡ぼされた国の人間や魔族が『何で?』って考える事すら想像出来なかったのか?
それとも、過去は過去で自分には関係無いとでも思ってたのか?
残念だけど、僕はマイアール帝国の軍属に哀れみの感傷を持てるほど寛容な人格者じゃないんだよ。
次の奴はどんな拷問にしようかな……
声が漏れない結界内で痛みに絶叫するグスタフを刻みながら、そんな事を冷静に考える自分に驚きながらも、淡々と作業は続いた。
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