第1章 復讐? 八つ当たり?
「貴様等! 黙って大人しくしていればつけあがりやがって!!」
「俺達はマイアール帝国最強の部隊、あの英雄ヴォルク隊長が率いる独立部隊の出身だぞ!!」
「帝国最強って事は、この世界で最強だ。その俺達に貴様等は舐めた口をきいてんじゃねえ!!」
チワワが我慢しきれず吠えだしたが、聞き流す訳にはいかない事を口にしやがった。
ヴォルクの部隊にいたって言ってるが、わざわざ他国でハンターをする意味を考えると、他国の情報収集を目的とした斥候、もしくは諜報隊の可能性が高いな。
ちょっと挑発された程度でそんな重要な情報を垂れ流すなんて、ヴォルク同様のバカなのか?
「つまり、マイアール帝国最強の部隊に在席した事はあるけど、実力不足で退役、現在は他国でハンター家業って言いたいって事ですか?」
更に情報を引き出す為に、単純な挑発をしてみるが、
「実力不足だと!? 我々は人材発掘を命じら……」
「バカッ、黙れ!!」
簡単に挑発に乗ったグスタフが『自分達は現在もマイアール帝国軍部に所属している』と言ってるのと同義な発言をするが、直ぐ後ろにいたハンターモドキが慌ててグスタフの口を塞ぐ。
ふ〜ん、僕達に難癖を付けて来た理由は『マイアール帝国軍に勧誘する実力があるか確かめる為』だったって事か?
よりによって、この僕をヴォルクの部隊に勧誘しようとしたって事か(笑)
ロード君の顔すら知らないって事は、彼等の立場はヴォルクの部隊でも下っ端の可能性が高いが、僕の外見から何も情報が漏れていないのは好都合だよ。
彼等にはこのまま、情報隠蔽の為に消えて貰う事は確定したけどね。
「ハンターの実力を訓練場で確認って辺りで生温さしか感じませんね。そんな事よりも依頼の達成で確認するべきだと思いますよ」
流石に、ハンターギルド内で彼等を始末するって訳にもいかないので、郊外で人目の無い状況をつくる必要がある。
更に言えば、別々の依頼を受けての別行動を装い、不幸な事故で彼等は魔物に殺されたって状況をつくらないといけない。
ヴォルクの関係者、それもアイツの部下って事なら情報を引き出すだけ引き出してから死んでもらわないと。
「依頼の内容は!?」
「貴方達の実力を考えると、オーガの討伐辺りですかね?」
「オーガだと? 俺達はともかく、お前等にオーガの相手が出来るのか?」
Cランクに成り立てって言ってた竜の咆哮の実力なら『オーガ相手でも厳しいかな?』って思いながら提案してみたが、逆に僕等を嘲るような事を上から目線で言って来る。
「僕等は余裕ですね。一定期間内でオーガの討伐数でも競いますか?」
「上等だ! なら、明日から一週間で、オーガの討伐数が多い方が勝ちだ。オーガに遭遇した数が運なんて言うなよ? 特定の魔物を探索するのもハンターなら当然の実力だからな」
こうも簡単に誘導に引っ掛かるなんて、ヴォルクの部下ってバカしかいないのか?
これなら、彼等が不幸な事になっても『実力以上の成果を挙げようと無理をした』って結論に持っていける(笑)
「勝手に話を進めてんじゃねえ! それに、お前等聞き捨てならない事を言ってたな。マイアール帝国の軍人がハンターギルドで好き勝手出来るとでも思ってんのか!?」
あぁ……
黙ってろよ、ゴリラ!
「軍人はハンター登録出来ないなんて規約は無かった筈ですが? それとも、この国では『マイアール帝国の人間』に差別をするって事ですか?」
「何が差別だ! 俺は、貴重な戦力を引き抜かれてたまるかって言ってんだ!」
「ハンター個々の去就について、ハンターギルドが強制出来る物ではない筈ですが?(笑)」
ほら、バカに言い負かされるんだから、家畜は黙ってろ!!
「残念ながら僕は『自分よりも劣る実力』しかない、『最強を名乗る道化』に勧誘されるつもりは無いです。僕等を勧誘したいなら、相応の実力を示してからお願いしますね」
「『道化』だと!?」
「口だけなら『最強』なんて誰にでも言えますからね。本当に『最強』なら、口じゃなく実績で示すべきだと思いますよ? それが出来ないなら、口だけの『道化』じゃないですか(笑)」
「きっ貴様あぁぁぁっ!!」
「ヴォルク隊長の実力を疑うのか!?」
「魔族共を討伐した英雄を疑うだとぉっ!!」
ゴリラを言い負かして調子に乗ってる竜の咆哮を挑発し直して煽ると簡単に激昂した。
「僕が何時『英雄ヴォルクの実力』について言及しましたか? 僕が言ってるのは『虎の威を借る狐』には勧誘されるつもりが無いって事ですよ」
「俺達の実力を疑ってると言いたいのか!?」
「『虎の威を借る狐』だとお!!」
「だから、依頼の競争で貴方達の実力を示してから『最強』を名乗って下さいって言ってるだけですよ。そうじゃなければ、『英雄ヴォルクの部下だから、自分達も最強だ。黙って言う事を聞け』って言ってるのと同義ですよ(笑)」
穏便に竜の咆哮を始末する為には、この競争に乗って貰わないといけないんだから、ゴリラに邪魔をされる訳にはいかない。
とにかく、依頼で競争するって型は堅持しないとね(笑)
「(´Д`)ハァ……」
ここまで、様子見をしていたアイシャさんのため息で空気が固まる。
ゴリラと違って、存在感と威圧感が凄いな……
「オーガは他の魔物よりも絶対数は少ないですが、オークを相手にするよりも危険度は跳ね上がります。Cランク依頼の中でも上位の討伐になるのは知ってますよね?」
アイシャさんの説明通り、オーガは本能だけで生きているオークと違い理性に近い物を持っている。
近いっていうのは、理性的というよりも闘争本能を活かす最低限の知性を持っているからだ。
つまり、戦闘中に仲間と連携する等、個々の能力だけでも厄介な魔物が、群れると数以上の危険度をみせて来るって事だ。
それだけに、『不幸な事故』で竜の咆哮が全滅しても疑われない状況に持って行き易い(笑)
「あのマイアール帝国最強部隊に所属されてるって事ですから、竜の咆哮の皆さんがオーガ如きに不覚をとるなんて無いでしょう?」
アイシャさんの確認に併せて、更に挑発をする。
「Dランク風情が調子に乗ってんじゃねえ!!」
「とにかく決まりだ! 明日から一週間だからな!!」
「この街から逃げ出しても追わねえから安心しな!」
「帝国独立騎士団に喧嘩を売った事を後悔させてやる」
「魔族を狩るよりも楽勝だぜ(笑)」
(๑•̀ㅂ•́)و✧
無事に乗って来た!
……しかし、最後の一言は余計だったね。
君達の年齢から、あの戦争に参加していないのは分かってるけど、その一言は僕の中の禁忌に触れてしまったよ。
君は楽に死ねると思わないでね……
ルナとラナは、彼等がマイアール帝国の軍属と名乗った辺りから表情が消えている。
彼女達の故郷、カーディナスで奴等がやった事は両親から聞いているだろうし、魔帝国の者にとってヴォルクは仇敵以外の何物でもない。
ここで激昂しないだけ、二人には理性があるって事だ。
とはいえ、二人の為にも出来るだけ早く此処を離れたい。
「って事で話は纏まりましたので、心配しないで下さい」
「何でカイト君がムキになったのか分からないけど、とにかく無茶だけはしないようにね」
「カイト……負けんじゃねえぞ!!」
アイシャさんに話は終わったと告げると、呆れ切った表情でアイシャさんが心配してくれた。
その後ろから、ゴリラが顔を真っ赤にして激を入れて来る。
竜の咆哮の連中は近い内にこの世から退場するんだから、そんなにムキになっても仕方無いですよ(笑)
「じゃあ、明日からハイオーガを探しに行くよ!」
「「ハイオーガ?」」
ハンターギルドから宿の部屋に帰った僕等は、明日からの予定について話し合う。
「僕の身体は前に話したけどヴォルクの息子ロード君なんだよ。つまり、ヴォルクの関係者に僕の顔を見られたは不味い状況って事なんだよね。だから、彼等には消えて貰わないといけない」
人を殺すって話だけど、ルナとラナも魔帝国がヴォルク達に滅ぼされた事は知ってるし、奴等が同胞にした仕打ちも知っている以上、僕の復讐に反対する事は無い。
「彼等が『不幸な事故』に巻き込まれたって型にする為に、上位種のハイオーガを用意する必要があるんだ」
「私達が討伐したけど、その前に竜の咆哮は全滅してたって事にするのね?」
「じゃあ、竜の咆哮の死体をソコに置いておくの?」
「いや、ハイオーガの討伐証明だけで十分だと思う。僕等は『不幸な事故』とは無関係だから、彼等は行方不明の方が都合良いしね」
彼等の遺体は僕のアイテムボックスで眠って貰う予定だ。
将来、ヴォルクのヤローと対峙した時にプレゼントしてやらないといけないからね(笑)
「まだ、マイアール帝国と戦う準備が出来て無いから、それまではカイトの存在を知られる訳にはいかないから仕方無いね……」
「うん……」
あのクソヤロー共を赦せるかどうかではなく、盗賊以外の人を殺す忌避感を感じているんだろう。
少し気落ちした声でルナとラナは自分を納得させている。
二人の気持ちは分かるし、その気持ちを無くして欲しくは無い。
でも……
でも、僕は目の前でマギクスが首を落とされた時に誓ったんだ。
ヴォルクのクソヤローは、マイアール帝国のクソ共には絶望を与えてから殺してやると。
その気持ちは現在でも色褪せてはいない……
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