第1章 テンプレ?
「お前等か、最近ギルド長に目を掛けられてるからって調子に乗ってる新人パーティーってのは」
ギルドの解体場でギルド長と別れロビーに戻った僕達の前に、二十歳前後と思われる若者が五人で絡んで来た。
異世界ラノベの定番キターーー!!
「『調子に乗ってる』って言うのは意味分かりませんけど、僕達に何か用ですか?」
内心のワクワクを表情に出さないように気を付けながら、鷹揚にはならず、且つ、卑屈にならない程度で丁寧に返す。
装備から判断すると、斥候職一人に前衛職三人、魔法職が一人って感じだから、バランス的に同じパーティーの人間だろう。
僕達に絡んで来た、前衛職らしいこの男がリーダーかな?
大剣を背負った鎧姿から、このパーティーのアタッカーって事で間違い無いだろう。
ゴリラの時みたいな『優しい』展開じゃない雰囲気に、僕のワクワク感は天元突破しそうだよ!!
「何を余裕かましてんだよ! エルフを引き連れてるから自分も特別な存在だとでも勘違いしてんのか!?」
「あぁ、つまり……貴方達が男だけでパーティーを組んでるのに、新人の僕が『眉目秀麗』なエルフを仲間にしてるのが気に食わないって事で間違い無いですか?」
ここでちゃんと煽ってあげないと、この後のお楽しみに繋がらないからね(笑)
「『眉目秀麗』だって、お姉ちゃん♪」
「とっ、当然よ」
絡んで来た奴等なんて無視状態で、僕の発言に気を良くするエルフ姉妹の存在が、彼等の感情を更に煽ってくれる。
ここで邪魔をしそうなギルド長とレニーさんは、まだ解体場で職人さん達と話をしている。
つまり、僕の邪魔をする存在はいないのだ!
「おっお前等が調子に乗ってるのが気に入らねぇって言ってんだよ。どうやってギルド長に取り入ったのか知らねえが、ハンターは実力主義だ。太鼓持ちで認められるなんてあってはならない事だから、俺達がお前にハンターの現実ってヤツを教えてやる!」
「ハンターを名乗ってんなら逃げんなよ!」
「まあ、逃げたくても逃さねえけどな(笑)」
「俺達が特別に訓練場で訓練してやる」
「ギルド内だ。殺しはしないから安心しな!」
ウヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!
テンプレ通りの台詞をありがとうございます(笑)
そんな、内心は隠して五人を見据えてため息を吐いていると、
「そうね、パーティーとしてCランクになったばかりの貴方達が調子に乗らないように『釘を刺さないといけない』って思ってたのよ。丁度良かったわ。カイト君に現実を教えて貰って来なさい」
何時の間にか現れたアイシャさんが、五人に冷たい眼を向けながら言い放った。
それ……煽ってませんか?
『彼等は『竜の咆哮』っていう、期待の若手なんだけどね。若手の中で頭一つ抜けてる実力で……最近天狗になって困ってたのよ。カイト君が、彼等の鼻っ柱を叩き折ってくれると助かるわ』
と、アイシャさんが小声で僕に言って来るが…………
『それって、ギルド長の仕事ですよね?』
『カイト君、あの脳筋は変に有名人だから、あの脳筋に敵わなくても仕方無いで終わってしまうのよ。でも、貴方が相手なら自分達が『井の中の蛙』って思い知る事になると思うわ』
要は、若手の教育に丁度良いから黙認するってお墨付きですよね?
「あのアイシャさんとツーカーだと!?」
「リーファンスギルドの女帝と!?」
「お、俺達の情報を教えてアドバイスしてんのか?」
「ギルド長の『お気に入り』だから、気を使ってんだろ」
「お、……俺の女王様と親しげにしやがって!」
僕がアイシャさんと会話をしていると、その様子を見ている竜の咆哮の五人は色々と憶測を口にする。
最後の一人についてはノーコメントで…………
『アイシャさん、『リーファンスギルドの女帝』なんて呼ばれてたんですね(笑)』
『カイト君、彼等をキッチリ教育してあげてね』
洒落のつもりの一言だったが、アイシャさんの背後に怒り狂うドラゴン並のオーラを引き出してしまった。
にこやかな表情だけに、恐ろしさが倍増してますね……
それは『女帝』に対してですか?
それとも『女王様』の方ですか?(笑)
って聞いてみたいけど、恐いから止めておこう。
「さて、どうやって僕を教育してくれるんでしょう? 五人纏めて相手したら良いんですか?」
ギルドの訓練場に移動した僕は、パーティーとして相手にすれば良いのかを確認するが、それを彼等は『挑発』と受け取ったみたいだ。
「いきなりDランクにして貰ったからって、何処まで調子に乗ってるんだ、この餓鬼!!」
「一人でCランクパーティーを相手に出来るとでも思ってやがんのか!?」
なんて、怒声が飛んで来るが……
●グスタフ
●人間 Lv 18
●HP 102
MP 35
戦闘力 84
体力 63
素早さ 51
防御 71
●棍棒術Lv3・盾術Lv4・魔法Lv2
リーダーと思われるタンクですらこの程度のステータスだ。
ギルド長と比べて、クソ雑魚という自己評価でしかない僕のステータスと大差無いんじゃねぇ……
僕のステータスは、ボンボンで甘ったれのロード君の体力が基になっているけど、それと大差無いってなんだよ!
仮にも『ギルド期待の若手』って言われてるんだろ?
ボンボン学生と大差無いって雑魚過ぎだろ!!
「確認なんですが、貴方達はパーティーとしてCランク間近で間違い無いんですよね?」
まあ、ハンターとしての実力をパーティー単位で評価されてるのなら、連携や戦術でステータスの低さをカバーしてるのかもしれないし、期待外れって断ずるのは早計かな?
Dランクで一人前って云われてるんだから、Cランク相当の評価を受けてる彼等は、それなりの実力を持ってる筈だろうし。
「勘違いすんなよ? 俺達はパーティーだが、それぞれがソロでもCランク相当の能力を持ってんだ」
「えっ!?」
「今更ビビっても遅えんだよ(笑)。相手の能力も分からねえお子様が調子に乗って早死にしないように、優しい俺達がテメーの教育をしてやるって言ってんだ。ありがたくボコボコにされな!」
驚くしかない事を宣ったリーダー格らしいグスタフって男は、まだ確認の途中なのに、いきなりシールドバッシュで僕を弾き飛ばそうとして来た。
「いきなり不意打ちって…………、正面からじゃ勝てないって言ってるようなもんですね(笑)」
まだ幼かった頃に、僕を鍛えていたマギクスのシゴキと比べれば随分と生温い攻撃でしかないんだよ。
余裕で回避した僕の動きに、グスタフをはじめとした竜の咆哮の連中は眼を見開いたまま唖然としている。
「避けただと!? お前、魔法使いじゃなかったのか!?」
「魔法使いだったら、ボケッとヤラれるままじゃないといけないんですかね? って言うか、魔法使いを相手に不意打ちすら当てられない前衛職って何のギャグでしょうか?」
グスタフって男が勘違いも甚だしい寝言を宣うが、余りに舐めきった態度にイラッと来たのでとりあえず挑発してみた。
アイシャさんから、この勘違いヤロー達の鼻をへし折るように頼まれてる以上、後から言い訳出来無いように本気になって貰う必要があるしね。
『どうした! グスタフ情けねえぞ!!』
『威勢だけか? 期待の若手も交代だな(笑)』
『いや、ギルド長が認めている時点で交代してるだろ(笑)』
『認めてねえのは本人達だけってか?(笑)』
なんて考えてたら、周りで見学しているハンター達が竜の咆哮に罵声を浴びせて笑い始めている。
これだけの人数が訓練場で見学してるって事は、竜の咆哮が僕達に教育するって公言していたって事かな?
かなり威勢の良い事を言ってたのが外野の嗤い方から簡単に推測出来るけど、そんなのは彼等の自業自得だろう。
では、テンプレ通りに始めますかねと考えていると、
『テメー等、何をしてやがる!!??』
ゴリラの怒声が響き渡った。
出て来るのが早いよ…………
「リチャード、これは私も黙認した事よ。実力を示さないとハンターは認められないんだから、これはカイト君達にも必要な事だと思うわ」
「アホか! それで竜の咆哮が潰されて良い訳がないだろうが!!」
「『潰される』って、カイト君が一人で相手するみたいだし、それなりの勝負になるんじゃないの?」
「だからヤバいって言ってんだ! アイシャ、お前は優秀だが、それはハンターじゃなくギルド職員としてだ。ハンターに最も必要なのは『危機察知能力』なんだよ。カイトを前にして危機察知も出来ないヒヨッコ共がまともに相手出来る訳無いだろうが!!」
僕に竜の咆哮の天狗の鼻を折ってくれと頼んだアイシャさんがギルド長に事情説明しようとするが、問答無用と言わんばかりにギルド長が捲し立てる。
「お前のやってる事は、カイトがゴブリン程度だと竜の咆哮の連中を騙してドラゴンの相手をさせているようなもんだ! そんなバカな事を容認出来る訳が無いだろうが!!」
「確かにカイト君達は有望だけど、それは例えが大き過ぎるんじゃない? それだから、竜の咆哮みたいに納得出来ないハンターが出て来るのよ」
「『納得出来ない』って連中はDランクまでの連中だろうが! 高ランクのハンターなら、アイツ等に喧嘩を売ったりしねえんだよ!!」
周りを気にする事無く言い合う二人だけど、肝心の竜の咆哮の連中は下を向いてプルプルと震えている。
怒り心頭って感じだけど、僕から見れば『チワワ』がプルプルと震えているのと変わりない程度なんだよなぁ。
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