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第1章 才能の種類


「では、『化学』の講義を始めます!」


 ルナとラナには、森の兎亭に部屋をとらせた。

 女将さんの配慮で、僕の隣の部屋に二人一緒として貰えたが、一晩明けて、今二人は僕の部屋で(((;ꏿ_ꏿ;)))な顔をしている。


 昨日、ハンターギルドでハンター登録、更にパーティー登録をしたので、早速ハンターとして活動と思ってただろうけど、それは考えが甘いってもんだ(笑)


「あの……この紙とペンは?」


「お姉ちゃんも、私も、読み書きくらいはできるよ?」


 いきなり『今から楽しいお勉強』って雰囲気を出してみると、『何をするつもり?』って表情で問い掛けて来た。


「だから、『化学』の講義だって。ルナとラナには、僕の魔法を使えるようになってもらうよ」


「その『化学』って何なの?」


「魔法を覚えるのに、どうして『化学』ってのを勉強しないといけないの?」


 勉強してもらう理由を説明したけれど、ルナも、ラナも、勉強する意味が分かっていないようだ。


 この世界には魔法が存在する為、どうしても『科学』の発展が遅れてるんだよねえ。

 文明レベルに、学問としての『化学』や『物理』が追い付いていないってのが、アルベルト時代から僕の抱いている印象だ。

 だから、二人の疑問は当然の反応なんだよなぁ。

 例えば、火を熾すのに理論は必要じゃなく、魔法を使って簡単に解決出来るんだから。

 そんな環境で、火が熾る為に必要な条件なんて、考える必要性を感じる訳がない。


「僕の【炎弾(ファイアボール)】が、君達の使う【炎弾(ファイアボール)】よりも威力が高いのは、『化学』的に証明された現象を魔法で再現してるからなんだよ。だから、君達にも最低限の知識を勉強して貰う必要があるんだ」


「「??」」


 当然、二人はキョトンとした表情で、僕の言葉を理解出来ずにいる。

 まあ、当然予想通りの反応なんだけど(笑)

 先ずは、火をつけた蝋燭にコップを被せて、火が消える理由から教えましょうかね。

 僕も小学生の頃、教科書よりも実験の方が頭に入って気易かったもんね(笑)









 机にグッタリと倒れ込むルナとラナの二人を見て、僕は苦笑いを浮かべる。


「じゃあ、昼からは魔物を狩りに行こうか」


「酸素?、にさんか炭素???」


「すいそは爆発?、ちっそ??」


 生まれて初めて聞く言葉だらけだったから、チンプンカンプンって感じで混乱している二人に、僕の言葉は届いてないみたいだ。

 まあ、時間を掛けて、気長に教えて行くしかないか(笑)


 僕一人の魔法をチートで強化したところで、軍隊という暴力組織の前では通用しない場合がある。

 現代社会の軍隊は、規律で統制される事が強さに大きく影響していたが、この世界の文明レベルの頃は、突出した武威を誇る指揮官が率いる軍が強かった。


 三国志の呂布なんて、その最もたる存在だ。


 ヴォルクの存在が、呂布のように一人で戦局を変えるほどとは言わないけど、それに準ずる事を僕は思い知らされている。

 なら、戦局を左右させない戦力を揃えた上でなければ、再び戦いを挑む事が出来ないって訳だ。

 だから、ルナとラナに僕の魔法を使えるようになって貰う。

 二人を直接の戦力と考えている訳ではなく、ヴォルク達を相手にした時、最低限自分の身を護る事が出来る力は必要だからだ。

 正直に言えば、更に仲間が増えた時、新たな仲間に僕の魔法を教える事の出来る存在が欲しいってのもある。


 ルナもラナも、僕から見れば『護られるべき子供』だけど、『知識』を仲間に伝える存在にはなれると思う。


 ………なってくれたら良いなぁ。


 頭から煙を噴き出しそうな二人を見ながら、少し不安になった。










「「【炎弾(ファイアボール)】」」


 この二人は天才なのか?


 座学ではポンコツに思えたルナとラナだったけど、初歩的な段階で炎を強化する理屈を理解しただけで、僕の【炎弾(ファイアボール)】ほどでは無いけど威力が上がっている。

 前世のスポーツ界でよく居た『感覚派』の天才タイプ?

 凄い実績の選手だったけど、指導者になると『こうガーッと行って、バーンッ、分かる?』なんて曖昧な感覚で教えた気になってた某野球監督タイプ?


「凄い! カイトが言ってた通りに意識するだけで【炎弾(ファイアボール)】が全然別の魔法になった!!」


「もっと、こう……グルっとひねる感じかな? ねえ、カイトどうかな?」


 明らかに、自身の魔法が変わった事に興奮したラナ、僕の魔法と自身の魔法を比べて考えるルナ、君達……座学の時の死んだ魚の目は何処に行ったんだよ(笑)

 っていうか、この二人は教師役には向いてないかもしれないな。


「理屈を中途半端にしか理解出来てないのに、何で簡単に実践出来るんだよ?」


 目の前で起こった結果を受け入れ難い僕は、苦笑いしながら二人に問い掛けるが、


「だって、カイト言ってたでしょ?」


「回転させる事で『さんそ』だったっけ、それを取り入れさせる事から始めるって言ってたから、その通りにしただけだよ?」


 なんて返事が返って来る。


「いや、魔法を使うには『イメージを具現化する』為に、現象を起こす仕組みを理解するもんだろ? 何で理解して無い現象をイメージ出来てるんだよ!?」


「えぇ〜、カイトの魔法をイメージしながらやってみたんだから、イメージ出来て当たり前じゃん」


「そうそう。実際にカイトが使ってるんだから、私やお姉ちゃんも出来て当然じゃないの?」


 ……………………orz


 コイツ等、『酸素』や『燃焼の仕組み』を理解出来てないにも関わらず、『僕が使えるんだから、自分達にも使える』って思い込みだけで、物理的な現象を具現化しやがったのか?

 いや、アルベルト時代に教えたマギクス達は、炎を回転させても炎を強化するには至らなかった。 

 やはり、物理や化学を理解してなければイメージの具現化なんて不可能な筈なんだけど?


「そりゃあ、カイトが言ってた事は半分くらいしか分からないけどさぁ、カイトが嘘を言ってた訳じゃないって事くらいは分かってるもん」


「カイトが言ってた通りにすれば大丈夫って信じてたから……」


 困惑した僕の表情を見て、最初は喜んでいた二人の表情が曇って来てしまった。


「いや、半分も理解して無いだろ(笑) でも、それでも結果を出すんだから、ルナもラナも天才だって驚いてたんだよ」


 化学や物理を理解するよりも、僕が言ってる事を信じているってだけで結果を出すって……

 この二人、僕を好き過ぎるんじゃない?(自惚れ)


 妄想で(〃゜3゜〃)な表情になった僕を見るルナとラナの視線が冷たいのが、僕を妄想の世界から現実に引き戻した。


「まっ、まあ、私達エルフは魔法の天才だから!」


「『神童』のアルベルト様には敵わないけど、私達だってカイトの役に立てるよ」


 冷たい目をしてはいたが、僕から天才って言われたのが嬉しかったのか、ツンな態度で二人は手応えを口にした。

 うん、テンプレ通りなエルフのツンデレ……


「でも、どうしてカイトは私達に魔法を教えてくれるの?」


「こんな凄い魔法を使えるのカイトだけって方が、カイトの価値が爆上がりするのに」


 まあ、今更ではあるんだけど、当然と言えば当然な疑問を二人は投げ掛けて来た。

 僕が『英雄』でも目指してるなら、ラナが言った通り、僕だけが凄いって事に意味があるんだろうけど、僕はその『英雄』にザマァする為にこの生命を賭けるんだよねえ。


「僕の本名ってか、過去については話しただろ? 僕はマイアール帝国を潰す為に、ヴォルクのクソヤローに復讐する為に生きているんだ。僕に関わる人達は、その余波を受ける事になるかもしれない。そんな時の為に、自分の身を護る事の出来る方法を教える事は当然の義務だし、何よりも、僕、アルベルトの大事な国民を護る為なら出来る事を何でもするよ」


 真面目な顔で答えた僕を見て、二人は何故か寂しそうな顔をした。

 

「私達…………言ったよね!」


「カイトが私達を護るって言ってるように、私とお姉ちゃんがカイトを護るんだよ。カイトにとって私達は護られる一国民って事なの?」


 寂しそうな表情から、怒りの表情になった二人が僕を問い詰めて来る。


「カイトの言う『一緒にいる』って、『義務』でやってる事って意味なの!?」


 トドメのルナの一言で、僕は自分の言ってる事を理解した。


 『義務感』や『同情』で『一緒にいる』とも択れる物言いをされた二人が怒るのは当然だ。

 勿論、僕はそんな気持ちで言ってた訳じゃないけど、そんな事は言葉にしなければ伝わらない。

 いや、伝わる筈がない。

 その言葉選びを僕は間違えてたんだ。


「僕は……自分が傲慢な人間だと思ってた。いや、思ってたつもりだったのかな。ごめんね、誤解されて当然の言い方だったよ。僕は君達と出逢えた事を凄い幸運だと思ってる。復讐心に捕らわれてた僕の心は、正直かなり荒んでいたけど、二人に出逢った事で、周囲に気を使う事の大切さを思い出せたし、何よりも、僕自身が救われたと思ってる」


 そう、僕は二人に救われたんだ。

 絶望と後悔に支配されてた僕の心の深奥に、この二人は希望って光を差し込んでくれた。

 僕の慢心が招いた魔帝国の滅亡……

 でも、生き残った人達もいて、この二人みたいに真っ直ぐに生きている人もいる……

 この事実が、僕をどれだけ救ってくれたか。


「ごめん、これからは照れずにちゃんと言葉にして伝えるよ」


 反省して謝る僕を、二人は更に救ってくれる。


「わっ、分かれば良いのよ!」


「えへへ~、私達の価値に気付いたみたいだね(笑)」


 ツンなルナと、少しデレてるラナの二人を護る気持ちは『義務感』じゃないと再確認出来たのは良い事だけど……


 ってか、ヴォルク、テメーに対する苛立ちは別だからな!!


 テメーとクソ帝国だけは、この尊い二人の未来の為にもぶっ潰す!!

お読み頂きありがとうございますm(_ _)m

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