第1章 パーティー登録
過去に戻って、自分を殴りたいって思う事はありませんか?
【転生】前には三十路だった男が、前世だと中学生くらいの少女二人に抱きしめられて泣いている姿を思い出すと、この場で転がり悶え、恥ずか死にそうになる。
そんな心中をポーカーフェイスで隠し、盗賊を捕縛した僕達は、村長との会談に臨んでいる。
「先ずは、この二人との約束を守らず、二人の存在を口にした猟師の引き渡しを要求ってところですかね?」
村を襲った盗賊達を壊滅させて、村民の生命を救った僕達に謝意を示す為に呼ばれた村長宅で、ルナとラナを売った件について追求しようか(笑)
「いっ、いや、私達がそのエルフ二人を盗賊に売ったという証拠でもあるんですか?」
「ほう…………反省の色が無いばかりか、現状を把握する事すら出来ない……と?」
「現状?」
「盗賊達を簡単に討伐出来る人間相手に嘘を吐く。その上、喧嘩を売る訳ですが、盗賊の討伐依頼はハンターギルドに出されてましたが、僕達が盗賊を見つけた時には……この村が皆殺しにされた後だったと報告しても……何か問題があるんですかねえ?」
「ヒッ!?」
僕が魔力と殺気を少し解放しただけで、村長の顔は青褪め、膝をガクガクと震わせる。
いや、別に猟師を含めて誰も殺したりはしないよ?
本音はともかく、あまり舐めた態度をとられると、少し虐めたくなっちゃうじゃないか(笑)
「盗賊を尋問しても、その主張を続けるつもりですか?(笑)」
「そっ、それは…………」
「貴方がするべき行動は、僕達の不興を買って、次に災難が降り掛かった時に、嘲笑しながら見殺しにされる未来を確定させる事なんですか?(笑)」
そう、此処で謝罪が無ければ、僕の大事な国民を売ったコイツ等が、今後どんな目に遇おうと助けるつもりは無い。
軽はずみな行為を反省させなければ、今後もコイツ等は、周りに迷惑を掛ける行為を続けるんだから。
「盗賊にこの娘達の情報を売ったところで、村民が災難から解放されましたか?あの女性達は凌辱から解放されてましたか?貴方達の行為は被害の拡大でしかないんですよ。そんな迷惑な存在を助けた自分が腹立たしいですねぇ」
ルナとラナには『村人を害する事はしない。ただ、今後も周りを捲き込む行為が出来ない様に釘を刺す』と前もって説明し、黙って座って貰っている。
ただ、二人に謝ろうとしない村長を見る眼が、冷たくなるのは自業自得と諦めて貰うしかない(笑)
「こ………」
「こ?」
「この度は、御迷惑をお掛けして、誠に申し訳ございませんでした」
今後を考えると、誤魔化す方が利を損なうと判断した村長が土下座して謝ったが、
「で? 肝心の猟師は?」
それでナアナアにする筈も無く、キッチリと猟師にも頭を下げさせた(笑)
ついでに、報酬代わりに荷馬車を用意させて、リーファンスのハンターギルドまで、盗賊の親玉二人を護送させる事で話を纏めた。
貧乏そうな村が盗賊に襲われた後なんだから、報酬を搾り取ったりするつもりは無い以上、落とし所として、そのくらいの労力を提供して貰っても問題無いだろう。
どちらにせよ、リーファンスにいる領主に盗賊の件を報告して、税の免除を懇願しに行かないといけないだろうしね。
「あのぉ、確かに私は『盗賊団の調査』はどうか?って言いましたけど、『討伐』って何ですか!?」
リーファンスのハンターギルドに戻り、盗賊の討伐をレニーさんに報告したら、何故かキレた様に叫ばれた。
自分で話を振っておいて、何を文句言ってるんだ?
「だから、被害状況を把握出来る様に生け捕りにして来ましたよ? 調査の一環って事で良いんじゃないですかねぇ」
「それに、出掛ける時は一人だったのに、帰って来たらエルフ二人が一緒って、どうなってるんですかぁ!?」
うん、アイシャさんが額に青筋を浮かべて近付いて来たから、少し静かにしようね、レニーさん(笑)
「ウチの旦那がお世話になってます」
「カイトさん、浮気はダメですよ」
脈略無く、爆弾をぶっ込んでんじゃねえぇぇぇぇぇっ!!
そのテンプレはいらないよ!?
レニーさんとやり取りしてたら、ルナとラナが僕の両腕に抱き着いて爆弾発言をぶっ込んで来た。
『【ウチの旦那】だとぉ!』
『両手に花なんて……許さねえ!』
『何処で、あんな美人を!?』
『エルフって、貴族の特権の一つじゃねえか!』
ほら、ギルド内に居たハンター達が騒ぎ出した……
「カイトさん、応接室まで来て貰えますよね?」
トドメは青筋をたてたアイシャさんか……
混沌だ…………
マイアール帝国では、カーディナスで隷属したエルフ等の亜人種を奴隷として扱っているが、他の国では全ての亜人種を奴隷として扱っている訳では無い。
差別が全く無いとは言わないが、最低限の人権は保証されている。
その中でも、エルフはその美しさ、魔法の才から重宝され、手元におけるのは貴族が殆どといった状況であり、貴族以外がエルフを手元に置く事を禁止しているという訳では無い。
超国家組織であるハンターギルドでも、亜人種はその権利を保証されている。
戦力という物差しが重きを置くハンターギルドでは、亜人種の戦力は人間以上の即効性を期待出来るので当然なのだが。
ルナとラナの両親もそれを知らなかった訳では無く、マイアール帝国の件で、人間に対し警戒心を持っていた為、隠れ住むという道を選択したそうだ。
その娘が、こんなに警戒心無く、人間である僕に懐いてて大丈夫なのか?
と、色々考えてる間に、アイシャさんの説教タイムも終わったみたいだ(笑)
「カイトさん、本当に分かってるんですか?」
「モチのロンですよ。でも、困難な依頼を達成して怒られるのはどうかと思いますけどね(笑)」
騒いでたのは、貴方の部下と周りのハンター達ですよ?
「貴方が分かってくれて無いのは理解しました。では、ルーファリナさんとラミリナさん、二人のハンター登録をさせて頂きますので、カウンターにお願いします」
あれ?
また青筋が浮かんで来てますよ、アイシャさん(笑)
ルナとラナは、僕以外の人から愛称で呼ばれる事を拒否したので、アイシャさん達も彼女達を本名で呼んでいる。
魔帝国の国民って、基本的に名前だけで姓を名乗る習慣が無かったから、人間世界の平民と同じ感じで名前だけなんだよね。
エルフは姓の代わりに、自分が生まれた里の名を名乗ってたから、ルナなら『ルーファリナ=カーディナス』、ラナは『ラミリナ=カーディナス』が正式な名乗りになる……はず?
二人が生まれた時には、既にカーディナスは崩壊してたから、両親のルーツが適用されるって感じの話を、昔聞いた事があった。
「では、お二人はカイトさんとパーティーを組まれるって事で宜しいでしょうか? カイトさん、コチラの書類にパーティー名の記入をお願いします」
後方からのプレッシャーを受けながら、淡々と手続きを進めるレニーさんが申請書を渡して来るが、パーティー名なんて考えてないぞ?
「パーティー名ねえ…………。希望はある?」
一人で決める話でも無いので、ルナとラナにも希望を聞いてから決めましょうかね。
「ん〜、『ルナカイトラブ』?」
「あ~、お姉ちゃんズルい! じゃあ『ラナとカイトの愛の巣』」
…………ふざけるのは後にしてくれ。
「『幻想審判』、略して『ジャッジメント』で、どうかな?」
地縛霊だった僕が、世界をひっくり返すなんて無謀な目標を立てているんだ。傍から見れば『幻想』以外の何物でも無いだろう。
その幻想が下す審判……
やべ~、かなり中二っぽい感じがするけど、中二も異世界ラノベのテンプレだし、異論は認めません(笑)
「カイトが良いって思ったんでしょ? それで良いと思う」
「私もカイトが決めた名前で良いよ」
意外な事に、二人はあっさりと僕の案に賛成してくれた。
「じゃあ、これで」
二人の了承を得たので、申請書にパーティー名を記入してレニーさんに渡した。
これで、僕の独りぼっち生活は終わりになる。
思ってたよりも短かった『孤独な戦い』が終わった代わりに、これからは、重い責任が僕の両肩に伸し掛かって来るって自覚を持たないとなぁ。
亡国の皇太子が、再び国民の生命を背負う……
まだ、たった二人だけど、アルベルト時代の様に頼りになる後ろ盾がある訳じゃない以上、その重さは比較にならないほど重い。
なんて考えてたら、
「カイトさんって、真面目な顔をする事もあるんですねぇ」
カウンター内からポンコツ一号が、感心した様な表情で、訳の分からない暴言を吐いて来た。
「僕は何時でも真面目なんだけど?」
「アハハハ、いつも通りの、惚けた事を口にするカイトさんに戻ってしまいましたね」
君の目は節穴なのかな、レニーさん?
ヤレヤレとジェスチャーで伝えていると、さっきまで上機嫌だったルナとラナが不機嫌そうに内緒話を始めた。
『泥棒猫だよ、お姉ちゃん』
『馴れ馴れしいわね、私のカイトにすり寄るんじゃないわよ』
『私のじゃなく、私達のでしょ!?』
『そっ、そうね。でもラナ、嫉妬した顔をカイトに見せちゃダメよ』
『どうして?』
『良い女は、男のヤンチャも笑って許す懐の深さを持ってるもんなのよ』
『えぇ〜、カイトが他の女に色目を使ったり、使われたりするのはヤダよぉ』
『良い男がモテるのは仕方無い事よ。なら、私達はそれよりも良い女になって、掌で転がすくらいじゃないと苦労するわよ』
…………内緒話なら、もう少し小さい声でしてくれ。
それに、何時から君達は僕の嫁さんになったんだよ!?
とりあえず、精神的に疲れたから、宿に帰って寝よう。
お読み頂きありがとうございますm(_ _)m




