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序章 ロード=ベンズ2


「今日も可愛がられて大変だったね」


「ナマハゲはロードを目の敵にしているからねえ」


 夕方、寄宿舎に帰ると同室のヴァンとランドの2人が、苦笑いしながら同情めいた声を掛けて来る。

 サラッとした金髪を短く爽やかに刈り込んだ童顔のヴァン、ガッチリとした長身と項で束ねた茶髪がワイルドな雰囲気ながらも品の良さが顔に出ているランド。

 こいつ等も最初は、『英雄の息子と一緒なんて幸運だな』『色々学ばせて貰うよ』なんて言ってたが、現在(いま)では上から目線で同情して来やがる。

 せめて座学、訓練どちらかでも『俺より上になってから』、その目線で声をかけて来やがれってんだ。


 俺の成績は、普通なら『優等生』と呼ばれるレベルのはずが、帝国騎士の中でも五本指に数えられる両親と常に比べられ『優秀だけど物足りない』『器用貧乏』といった評価をされている。

 『優秀な血をひいているんだから、才能があって当たり前。その程度なのは努力が足りないからだ』なんて、俺の事を何も知らない奴等が吐かしやがる。

 教官達がそんな評価を口にしてれば、周りの生徒もそう思うんだろう。

 

 ヴァンもランドも、基本的には悪い奴等じゃないんだけど、伯爵家の子息から見れば『英雄』とはいえ『騎士爵』の子息なんて『下々の存在』でしかないって事だ。

 この二人は身分で差別してるつもり(• • •)が全く無い……

 良くも悪くも『お坊ちゃん』だ。


 本人達からすれば『差別』してる奴等こそ唾棄されるべき存在なんだろうけど、自覚無く他人を『区別』してるこいつ等こそ質が悪い。

 言葉の節々から、俺の事を見下した部分が顔を出すが、本人達にその気は無いのだから。

 生まれた時から『貴き血脈』として扱われて来た二人に自覚が無いのは理解出来る。

 俺自身『英雄の息子』って立場を誇りに思ってた頃もあったからな。

 とはいえ、『理解出来る』って事と『納得出来る』って事はイコールじゃねえ。


「僕等に不貞腐れても仕方無いだろう?」


 不機嫌な表情の俺にヴァンが苦笑いしながら言い、ランドが隣で頷いている。


「明後日から【実践演習】なんだから、仲良くしないと」


 ランドが言う【実践演習】とは、帝都郊外で魔物相手のサバイバル訓練の事だ。

 同室のメンバーでパーティーを組み、帝都郊外にある森で二泊三日の実地訓練をする。

 魔物がいつ襲って来るかわからない中でのキャンプとなるため、戦闘時の連携だけでなく、夜の見張り番等の連携も必要になる。


 そんな中で『不穏な空気は宜しく無い』というランドの意見は尤もだけど、俺の感情を全て圧し殺して笑えってのは無理な相談だ。


「お前等の邪魔にはならねえよ!」


 不機嫌そのものな俺の返答に、


 ┐(´д`)┌  ┐(´д`)┌


 二人の反応は示し合わせたかの様に一致していた。














「とうとう明日だね……」


 ヴァンが荷物を鞄に詰めながら溢す声には緊張が見え隠れしている。


 毎年、【実践演習】中に重度の怪我を負い後遺症に苦しむ者、身体欠損により騎士を諦める者、精神を病み壊れていく者、そういった理由で学園を去る者は少なくない。

 そうならない為に、普段から厳しい訓練を課されているとはいえ、初実戦の緊張感の中で訓練通りに動ける奴なんてどれだけいるのか………

 

「僕達なら大丈夫だよ。僕もヴァンもお互いに家の跡取りじゃないけど、貴族の責務(ノブレスオブリージュ)を果たす為に頑張って来たじゃないか。それに『英雄の息子』も一緒だよ? 英雄になる運を持ってるヴォルク卿の息子が簡単に死ぬ訳ないだろう?」


 ランドの言葉はヴァンの緊張感を解す為ってのは分かるが、何気に俺をディスってる事にすら気付いていねえ。

 大丈夫な理由が『自分達の高潔な精神』と『ヴォルク卿(おやじ)の運』であり、俺の実力じゃないって言ってるのを分かってない事が、俺を苛立たせる。


 まあ、こいつ等だけじゃねえしな……


 俺の事を【ロード】として観ている奴なんていねえ。

 俺の事を【英雄ヴォルクの息子】以外の目で観てくれる奴なんていなかった……過去形じゃねえな、これからもいないだろう。


 魔族との戦争に終止符を打った【五英雄】

 その中でも、最後に残った魔族の皇子を討ち取った親父以上の戦果を挙げるなんて不可能だ。

 俺がこれから魔物をどれだけ討伐しようが、『世界を救った』と評される親父よりも評価される事はあり得ねえ。


 子供の頃には【誇り】だった親父の名が、いつの間にか俺にとっては【呪い】と同義語となっていた。



「立派な事だな。俺には関係ねえよ!」


 吐き捨てる様な俺の言葉に二人が噛みついて来る。


「どうして君はそんなに弄れた物言いしか出来ないんだ?」


「【英雄の息子】がそんな残念な事を言ってたら、みんなから失望されるよ?」


 諭す様な物言いが更に俺を苛立たせる…………


「他人の評価が気になるのか? それなら演習で結果をだせよ! 俺はもう寝るからな。せいぜい明日のシミュレーションでもしてな!」


 吐き捨てる様にがなり立てた俺は、気まずい雰囲気の中でベッドに入った。

 サッサと寝ねえと明日から体力が持たねえからな……

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