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第1章 エルフの姉妹 その2


「貴方、私達の事をバカだとでも思ってるの!?」


 現在(いま)は『カイト』と名乗ってるけど、僕が『アルベルト』本人だから【術式破壊(スペルブレイク)】を使えるんだ……

 そう説明した僕に返って来た返事がコレだ(笑)


 いや、笑ってる場合じゃないってのは理解してるんだけど、笑うしかない状況だから仕方無い。

 この子達も、アルベルトと同世代って訳じゃなく、親から聞いた話で知識として知ってるだけのアルベルトを名乗る僕が、本物か偽物か判断出来る根拠を持ってる訳じゃないんだから。

 僕が地縛霊みたいな状態で十七年間時期を待って、復活したのは人間の身体って言われても、普通は信じないよね。

 更に、僕と面識があった両親は既に亡くなったって言われりゃ、お手上げ状態にもなるよ!


「【術式破壊(スペルブレイク)】以外の魔法については聞いてないかな? 僕にしか使えない魔法って結構な数があったから、それを再現してみせる以外に、僕が僕であるって証明方法が思いつかないんだよねぇ」


「貴方が本当にアルベルト様だっていうなら、土魔法で造った弾丸を、弓矢よりも速く飛ばせる筈よ!」


「う〜ん、コレかな? 【超電磁砲•改(レールガン)】」


――――ヒュッ、ズガアァァァァァァァァァァァァッ!!


「ひっ、……アルベルト様は初級魔法ですら、上級魔法と同じいりょ――」


「【炎弾(ファイアボール)】、【光弾(ライトボール)】」


――――ドガアァァァッバアァァァンッ!!


「どうかな? 信じて貰えた?」


 アルベルトの事を聞いてるなら、魔法に関する話が殆どだろうし、僕の魔法は改編された物か、異世界知識のチートなオリジナル魔法が大多数を占める。

 『証明するならコレしかない!』って気合を入れて実演したのに、何で二人で抱き合って震えてるんだよ?


「「ばっ、ば化け物……」」


 おかしい、魔族は脳筋だから、威力のある魔法を見せれば尊敬され、直ぐに仲良くなれる筈なんだけど……


「魔人種やドワーフと一緒にしないで下さい!!」


「私達、エルフは繊細なんです!!」


 …………………………orz










「あの肉片になった人間が盗賊で、私達を狙ってたから『討伐依頼も出ていたし』って殲滅したと言いたいんですか?」


「あのねぇ、確かに私達エルフは人間の事が好きじゃないわ。でも、アレは…………」


 高威力の魔法を連発した事で『すっご〜い!』という反応を期待した僕に対し、ドン引いた眼を向けて来た二人の反応に落ち込んだ僕の姿を見て、少し警戒心を解いてくれた二人は、ドン引いた眼のままではあるが僕の話を聞いてくれた。

 『電子レンジの刑』に関しては、『うわっ、グロ!』って僕もちょっと後悔したけど、彼女達がドン引いて警戒するのは当然の結果だよなぁ。



「護るべき存在がいる時に判断を間違えると……どれだけ後悔しても取り戻しが効かないって十七年間思い知らされれば、躊躇なんて無くなるんだよ」


 そう、あの時判断を間違えなければ……

 自分のチートを、記憶が戻った段階から、マイアール帝国初代皇帝並に躊躇無く使ってさえいれば…………


「僕は、僕の護るべき存在に害を為す存在を許さない。もう二度と、あんな後悔はしない!!」


 でも、大量破壊兵器は造らないよ? 

 アレを造ってしまえば、マイアール帝国初代皇帝の判断が正しかったと認めるのと同義だ。

 アレを否定した上で、僕は僕が望む型で復讐を完遂して見せる。


「貴方の話を信じるのは……正直難しいけど、貴方が私達に敵意を持って無いって事だけは信じるわ」


「私もお姉ちゃんと同じね。でも、お兄さんは少し自重した方が良いと思うな」


 『敵は躊躇無く殲滅する』って発言する僕に、苦笑いしながら二人は返事をくれた。

 自重してないマイアール帝国のチートを相手に、縛りプレイで復讐する僕に自重を促してるけど、あの戦争の真実を知らない世代の二人じゃ仕方無いか。

 マイアール帝国の様な無責任、無差別チートじゃ無く、自分の判断でチートを使う僕は優しいんだよ?

 自分以外の誰でもチートが使える様にした、無責任逃避ヤローとは違うんだ。

 例え、大量殺人するとしても、『全て僕の責任で行う』この拘りを棄てて復讐する事に意味なんて無いからね。


「復讐の鬼?」


「妄想癖のある天才……天災?」


 うるさいわ!

 特に妹の方!!




「……話が逸れたけど、君達を狙ってる盗賊は、あっちにある村にまだ残ってる。そこの村長が君達を人身御供に差し出そうとしたみたいなんだけど、心当たりはある?」


 二人の警戒心が薄くなった頃合いを見越して、今後の行動指針に関わる話を切り出す。


「うわっ、いきなり話が変わった。う~ん二ヶ月くらい前かな?」


「あの時、助けた猟師の村かな?」


 記憶を探る二人から聞き出せたのは、少し対応に悩む話だった。



 ●魔獣を狩っていた姉妹は、魔獣に襲われ怪我をした猟師を発見した。


 ●自分達の存在を知られるのはマズいと考えたが、見殺しにする事が出来なかった。


 ●自分達の存在を語らない事を条件に、怪我をした猟師の手当てをし、村の近くまで送った。


 ●それから二ヶ月、村人が姿を見せる事が無かった為、約束が護られていると思っていた。



「要約すると、こんな感じで間違い無いかな?」


「「うん」」


 頭が痛え!!

 世間知らずにも程があるだろ!?

 現代日本なら、こういう『お花畑』も生きて行けるだろうけど、この世界で何を考えてんだ!?

 

 前世では『反撃能力を持つ事が危険を呼び込む』って、真面目な面で語ってたお花畑政治家がいたけど、それと同類にしか思えねえ。

 『抑止力』無く相手の善意を信じるなんて、『無抵抗ですから、好きにして下さい』って言ってるのと同義じゃねえか!

 『想像力が皆無』なのか、『客観的な視点が皆無』なのか、『弱体化を目的とした工作員』なのか、『平和ボケが極まった結果のお花畑』なのか、そんな連中と大差無いボケっぷりにしか思えねえ!!


 エルフ姉妹の世間知らずっぷりに、思わず頭を抱えてしまった。


「教育って本当に大事なんだな……」


 遠い目をして呟く僕を、キョトンとした顔で二人は見ている。


「あのねぇ、それは約束が護られてたんじゃ無く、二人が自分達よりも強い相手だから、どうすれば上手く(旨く)利用出来るかって考えてただけだと思うよ」


「えっ、約束を護る気が無かったって事?」


「でも、『ありがとう、本当にありがとう』って頭を下げてたよ?」


 思わず眉をひそめながら話す僕に、不満な表情を覗かせながら二人は答える。


「うん、君達が素直なのは本来なら良い事だね。でも、人間が信用出来ないって知ってたから、君達の両親は森の奥に隠れ住んでいたんじゃないかな。君達にも、人間と関わるなと教えてなかった?」


「むぅ~、でも、『カーディナスを滅ぼして魔帝国を蹂躙したのは人間だけど、全ての人間を憎むのは違う』って、お父さんが言ってたもん!」


「確かに、君達のお父さんが言ってた事は間違いじゃ無い。でも、その人間が魔帝国国民を奴隷にしているのが現実なんだ。理想論と現実は区別しないと自身に災いを招く……そう、僕はそれが原因でヴォルクに殺されたんだから」


「でも!」


「目を逸らさずに現実を見ろ。君達が信じた人間は、自分達が助かる為に、君達の存在を盗賊に教えた。結果、君達がどういう目に遇うかを知っていながらね」


「「…………」」


 戦争を知らず、森の奥で両親に愛されて育った世間知らずな二人には理解出来ない事かもしれない。

 本来なら、ラノベなら、彼女達は好感度MAXのヒロインでも不思議じゃないくらい良い娘達だ。

 でも、現実世界じゃ、美味しい獲物でしかない。

 僕が、アルベルトが護ろうとしてた存在が『美味しい獲物』なんて、そんな現実を許せる訳が無いんだよ。


「君達には、此処に隠れて怯えながら生きて行くか、僕に保護されて現実と向き合う生き方をするか選択して貰う。残念だけど、僕がずっと此処で君達を護ってあげる事は出来ないからね。僕と一緒に来るなら、僕は君達を今度こそ、生命を賭けて護ってみせる」


「えっ、そっ、それって、ぷ、プロポーズ!?」


「お姉ちゃんと私二人同時に!?」


 …………ポンコツキャラはレニーさんでお腹いっぱいなんだけど?


 魔帝国皇太子が国民を保護するって意味なんだけど?


 プロポーズも何も、君達の名前さえ知らないんだけど?


 真っ赤な頬に両手を当ててイヤンイヤンと身体をくねらせるポンコツエルフ姉妹を前に、『男は脳筋、女はポンコツって、僕はどんな呪いを受けてんだ!!』と内心で叫んでしまった。


 僕は前世でアラフォー、精神年齢で考えたら更に上なんだよ!

 しかも、『幼児性愛主義者(ロリコン)』じゃねえ!!

 『Yes、ロリータ、ノータッチ』って連中と一緒にするな!!


 ……いや、現在の身体は十五歳だから、ロリコンじゃないのか?


 って、違うぅ!!


 あの時の後悔を、無念を、今度こそあのクソ野郎共から『大事な国民』を護ってみせるって事だあぁぁっ!!


「僕と一緒に行くなら、二人の名前を教えてくれないかい?」


 努めて冷静な表情で、僕は二人に名前を聞く。

 ホントに今更感が拭えないけど……


「わっ、私はルーファリナ、私の事はルナって呼んでいいわよ」


「私はラミリナです。ラナって呼んでください」


 姉はルナ、妹はラナと……


「ルナ、ラナ、名前を教えてくれたって事は、僕と一緒に行くって考えて大丈夫なんだよね?」


「そっ、そうよ。これから宜しくね」


「不束者ですが、お姉ちゃん共々お願いします」


 表現が少しおかしい気がするけど、世間知らずな二人だからこんなもんか……

 と、判断した僕は思考を切り替える。


 僕が、魔帝国の皇太子だったとは言っても、全ての種族の習慣について知ってた訳では無い。

 ルナとラナが略称で呼べと言った意味を僕が知るのは、ずっと後の事であった…………

 お読み頂きありがとうございますm(_ _)m


 あまり細い描写を心掛けてる訳ではありませんが、なかなか話が進まない事に焦りを感じています(笑)


 表現力って本当に難しいなと再認識しながら悪戦苦闘していますが、今後もお付き合い頂ければ幸いです。

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