第1章 エルフの姉妹
「う〜ん、コレとコレと…………コレで良いか」
ハンターギルド登録の翌日、ギルドに出向いた僕は、貼り出された依頼書を確認していた。
「おはようございます、カイトさん。良い依頼はありましたか?」
「うん? おはようレニーさん。特に決まった依頼は選ばずに、常時討伐の依頼を幾つか……って感じ?」
「どうして疑問形なんですか!?」
受付カウンターから依頼書を貼り出している掲示板まで出て来たレニーさんが、僕の選んだ依頼の確認をして来るんだけど、Dランクの僕が受けられる依頼には、変わった依頼や困難な依頼なんてある筈が無いんだよねぇ。
それなら、魔物素材で小遣い稼ぎをしながら、魔法の検証が出来る常時討伐依頼が無難だろう。
「それに、常時討伐依頼って……ほら、この盗賊団の調査なんてどうですか?」
やる気の空回りって表現がピッタリだな、レニーさん……
でも、何かのフラグっぽいからヤメてよね!
「レニーさん? ソロの僕に盗賊団なんて依頼を本気で振ってるんですか?(笑)」
そりゃあ、やろうと思えば簡単な依頼だと思うけど、それは僕の魔法有りきな話なんだよね。
僕の魔法をそれなりに使えば『調査』どころか、依頼が『盗賊団の殲滅』でも昼までに終わらせる事が出来ると思うよ(笑)
けど、普通のソロハンターが受けない依頼は受けませんよ(笑)
「あああぁぁぁぁぁっ、すっ、すみません!」
ほら、レニーさん、大声をあげてるから、カウンター奥からアイシャさんが睨んでるよ(笑)
えっ、何で僕も一緒に睨まれてるんだよ!?
ポンコツなのは、このギルド職員とギルドマスターですよ?
僕は巻き込まれてる被害者だと思うんだけど?
無事にアイシャさんから逃げ切った僕は、【探索魔法】を使いながら、街道沿いにある森を通り、その奥にある山間部を目指している。
森の浅い範囲じゃ、他のハンターがゴブリン等の魔物を狩ってるから、危なくて僕の魔法を試す事が出来ないんだよね。
マイアール帝国の軍人ならともかく、普通の一般人を虐殺して回るのは、僕の復讐って範囲から逸脱するし、マイアール帝国を潰す戦力になって貰うかもしれない人材は大事にしないとねぇ(笑)
「おっ、オーガの群れが………ん?」
山間部の方向にオーガ数体の反応があったんだけど、その先に魔力の波動?
魔物じゃない、明らかに懐かしい感じの波動……
でも、こんな道も無い森の最奥から?
「勘弁してよレニーさん。早速、フラグ回収って逆神でしょ」
そう、懐かしさを感じる魔力の波動に向けて進む数人の人間の魔力……で間違い無いよなぁ。
偶然とはいえ、フラグ回収イベントの勃発に、思わず一人で愚痴っちゃったじゃないか……
「急いだ方が良いかな」
十七年間一人でいたから独り言が増えた僕は、もしかしてイタい奴じゃないのか?
そんなバカな事を考えながら僕は、【探索魔法】と【身体強化】を並列発動して駆け出した。
普通に【身体強化】だけで森を駆けたら、木々の枝で擦り傷と切り傷だらけになって、身体中真っ赤になってしまう。
【身体強化】の一種で脳内麻薬を意図的に分泌させれば、前世でいうところのゾーンに入った状態に持って行けるから、【探索魔法】で認識した木の枝等に対処出来る。
その上、脳内麻薬の効果で『疲れを感じない』から、急いで駆ける時に有益なんだよねぇ。
「へっへっへ、この先にエルフがいるんだよな」
「あの村の奴等が、その場逃れの嘘を吐いて無ければな」
「そんな嘘を吐いたところで、直ぐにバレたら意味無いだろ」
「嘘だった場合、自分達がどんな目に遇うか分からないほどのバカじゃなければな?」
「嘘じゃなくても、結局同じ目に遇うんだけど?」
「ギャハハハハハッ、女は嫐って犯してから奴隷、男は皆殺しってか?」
「自分の娘を守るつもりで、上物の存在を教えた村長の絶望する顔が楽しみだよな。ヒヒヒヒヒ」
「俺はエルフと姦るのは初めてだし、楽しみだな(笑)」
「俺もだ!」
「まぁ、お頭の後だろうから、楽しめる状態で周って来たら御の字だな」
うん、この下衆共は生かしておく必要無いな。
それにしても、エルフがこんな処に隠れ住んでいたのか……
十七年前、ヴォルクのクソ野郎共に滅ぼされたカーディナスの生き残りか?
捕虜にされた非戦闘民達は、マイアール帝国で奴隷にされているって、ロードの魂が消える直前の共鳴で知識としては入って来てたけど、マイアール帝国が把握していない生き残りもいたって事か。
「【電子嵐結界】」
この世界の法では、盗賊に人権など存在しない。
問答無用で無差別に他人を害する存在でしかない盗賊は、殺そうが罪に問われる事も無く、生け捕りにした場合に報奨金が上乗せされる程度の扱いとなる。
生け捕りにされた盗賊は犯罪奴隷として売却される為、その売却益が報奨金に上乗せされる仕組みである。
しかし、荒くれ者達を生かして捕縛し、それを街まで連れ帰るなんて、よほどの大人数を動員しなければ不可能な事であり、ハンターに依頼が来た時点で殲滅の一択となる。
ってコトで、彼等は問答無用で電子レンジの刑だ。
空間魔法で形成した結界内に土魔法、雷魔法で形成したマグネトロンを複数配置するだけの疑似電子レンジ。
効果は皆様御存知の通り、生卵をチンした時に起こる現象が人体で再現される……かなりヤバい魔法だけど、範囲内の敵を確実に殲滅したい場合には、これ程効率の良い魔法は無いんだよね。
……アルベルトだった頃には、魔物相手に数回実験した事があっただけの魔法だけど、マイアール帝国って国を相手に戦う以上、『数の暴力』に対する手段を選ぶ余裕は無いからねぇ。
うん、動物実験の後は臨床試験だよね(笑)
『臨床』じゃなく『臨終』じゃないかって突っ込みに関しては一切受け付けませんけど(笑)
「ぐぎゃっ、ガァ!?」
「ヒデブァァァ!?」
「アッ、アギャッ!?」
って事で、盗賊の一部は肉片に変身して頂いたので、次は懐かしい魔力の持ち主と接触かな?
幸い、【電子嵐結界】の魔力に反応して、此方の様子を覗きに来ているみたいだし。
「君達を狙って来た盗賊は殲滅したよ。話しがしたいから、姿をみせて貰えないかな? 僕はカイト、リーファンスのハンターだ」
「「…………」」
まあ、当然の事ではあるが、いきなり現れた人間を警戒したエルフ二人は、木陰に身を隠したまま、僕の挙動を観察している。
「『ハンターギルドに依頼された盗賊の討伐』って理由よりも、『魔帝国皇太子アルベルトが、元国民を保護した』って言った方が安心して貰えるかな?」
「人間がっ、人間が軽々しくアルベルト様の名を口にするな!」
「アルベルト様!? ふざけるな!!」
盗賊を討伐した理由を口にした僕に、木陰から飛び出し、弓を構えたエルフ二人が憤慨した表情で叫ぶ。
スラッとした、ラノベで表現されるエルフそのままなチッパイ、金髪、身長は僕よりも結構低いな。
年齢はロードと同じくらいが一人、もう少し幼いのが一人。
二人共、僕に敵愾心を剥き出しにした表情を向けている。
そりゃあそうだろう、魔帝国に人間は存在していなかったし、魔族であった皇太子に人間が関わってた事実なんてほぼ無い。
唯一の関わりは、ヴォルク達が皇太子アルベルトを討ったという一点のみであり、魔帝国の関係者に配慮する人間なんて考えられるはずが無い。
何よりも、魔帝国を滅ぼしたのは、世界最大の人間国家マイアール帝国なのだから。
懐かしい魔力の波動、あの時護れなかったエルフの生き残りが無事でいてくれた事に感動した僕はうっかり失言してしまったようだ。
僕の動揺を見て、二人は更に疑念を深くしてしまった。
「アルベルト様の名を騙れば、私達が黙って言うことを聞くとでも思ったの?」
「この人間達をどうやって始末したのか知らないけど、私達エルフに魔法で勝てるなんて考えるないでよ、人間さん!」
状況把握を優先してはいるが、二人が構えた弓には風魔法が既に纏われている。
僕の対応次第で、直ぐにでも射殺してやるって感じだ。
「落ち着いて話を聞いて貰えないかな、【術式破壊】」
とりあえず【術式破壊】で、彼女達が弓に纏わせている風魔法を解除した。
「えっ!? 魔法が!?」
「嘘っ、そんな事が出来るのは……」
「人間も、アルベルト様の魔法を使えるようになったの!?」
二人の年齢から、【術式破壊】って魔法を知ってるかどうか心配していたけど、幸い知ってたみたいだ。
かつて、魔帝国皇太子アルベルトのみが使えた、自分以外の魔法を無効化する空間魔法……
その魔法こそが【術式破壊】であり、皇太子アルベルトが神童の名で呼ばれた所以でもある。
「僕はアルベルトだって言っただろ? これで少しは信じてくれた?」
人間社会には知られていない【術式破壊】の存在を知ってるって事実は、彼女達が魔帝国の国民である証明でもある。
偶々、全く関係の無いエルフと出逢ったという疑念は、これで払拭されたって事だね。
「本当に……アルベルト様と関わりが?」
「でも、アルベルト様が亡くなったのは十七年前よ。この人間はそんな年齢に見えないよ、お姉ちゃん!」
「そっ、そうよね。貴方、私達を謀るつもりなの!?」
う〜ん、正論だねぇ……
動揺を隠せないまま、二人は僕の言葉に潜む矛盾点について言及して来る。
この身体の持ち主だったロードは戦後生まれの十五歳。
十七年前に死んだアルベルト本人だって言われても、信じる訳がないか……
さて、どう説明したもんか……
お読み頂きありがとうございますm(_ _)m
ストックが一向に増えない状況ですが、なんとか更新頻度を守っています(ノ ̄皿 ̄)ノ⌒==┫
PVでみると少ないように見えますが、更新したお話を読んで下さってる方がいると思うと頑張れます。
本当にありがとうございますm(_ _)m




