第1章 ハンター登録 その2
「今更だが、お前何者だ? というよりも、本当に人間なのか?」
そりゃあ、魔族だった事は本当だけど、現在の僕の身体を見て人外扱いって………このゴリラ、バカじゃねえの?
「何処をどう見れば、僕が人間以外に見えるんですか?」
「何処をどう見れば、お前が普通の人間に見えるってんだ!」
呆れながら答える僕に、ゴリラが憤慨する。
「質問に質問を返した無礼は認識してますけど、僕の個人情報を、ギルド関係者である貴方は認識されてますが、貴方は僕に自己紹介すらされて無いんですよ? ペラペラと何でも話す訳無いでしょ」
確かに、僕の対応は失礼なモノだけど、このゴリラは自分の役職どころか、名前すら名乗って無いんだ。
マトモに相手してられるか!
「おっおう、そう言えば名乗って無かったな。悪い、悪い。俺はリーファンスのハンターギルド長をやってるリチャードだ。昨年、引退するまでココの看板ハンターだったんだが、名前くらいは聞いた事あるだろ?」
「申し訳無いんですが、僕はこの街の人間じゃありませんので、貴方の名前も過去の業績も知りません」
この街の有名人気取りで、誰もが自分の顔と名前を知ってる前提なんて、イタい親父だな。
っていうか、リチャードって(笑)
ゴリラのクセにイケメンみたいな名前しやがって(笑)
心の中の爆笑を顔に出さない様にしないと……何で、この世界で『笑ってはい○な○』をリアルにやらなきゃなんないんだよ(笑)
「…………お前、何か失礼な事考えてないか?」
ゴリラが人間の名前を使ってる方が失礼だよ(笑)
「イエ、トクニナニモカンガエテマセンヨ……」
「……おい」
視線を逸らしながら答える僕に、リチャードさん……いや、ギルド長の怒りの視線が突き刺さる。
「失礼します。お茶をお持ちしまし……ギルド長、また新人さんを威嚇してるんですか!?」
ヤバい空気を払ってくれたのは、お茶を持って入室して来た秘書っぽい女性だった。
助かったけど、『また』ってなんだ? 『また』って!?
「誰が威嚇してるって?」
「はぁ……、ギルド長、御自分の威圧感をいい加減理解して下さい」
「なっ、アイシャ、お前、コイツが萎縮してる様に見えるか!?」
萎縮はしてませんねぇ……呆れてるだけですよ。
そして、この出来る女性感バリバリのお姉さんはアイシャさんっと。
「登録したてっていっても、この子もハンターですよ。ハンターがわかり易く怯えを見せる訳ないでしょう」
延々と続く夫婦漫才にいつまで付き合えばいいんだ?
「話を戻させて貰いますね。僕が何者って件ですが、つい最近まで森の中で魔法の修行をしてた一般人ですよ」
話が横道に逸れまくってたので、簡潔にギルド長の疑問に対し答える。
「誰から魔法を習った? 俺でも聞いた事の無い魔法を無詠唱で使うなんて、一般人な訳ねえだろうが!」
「別に、特定の誰かから習った訳じゃ無いんですけどね。本に載ってる基礎魔法を、使い勝手が良い様に改編しただけだし」
「一人でそんな事出来る訳無いだろうが!!」
前世でも居たなぁ……
『教えて貰って無いから分かりません』って、社会人になっても言ってるヤバいバカ(笑)
学費を払ってる学生じゃねえんだよ!
自分で金銭を稼ぐ為の労働と学校を、区別する事すら出来ないボンクラ君と一緒にされちゃ堪んないよ。
自分で研究テーマを決められ無い研究者なんている訳無いだろ(笑)
「貴方がどうかは知りませんが、『僕は自分で考える事が出来た』ってだけの話ですよ。『自分が出来ないから他人も出来ない』なんて、傲慢な考えだと思いませんか?」
「ぐ…ぐぐぐ………グガアァァァァ!!」
煽り過ぎたかな?
ゴリラ改めリチャードさんがブチ切れた(笑)
――――バン!!
「落ち着いて下さい、ギルド長」
容赦無いな、アイシャさん……
ギルド長がブチ切れた次の瞬間、持ってた御盆でギルド長の後頭部を思いっ切りぶっ叩いたよ……
「カイト君……だったかしら? 貴方もギルド長を誂わないの」
「ハンターは職業柄、個人の技能について深く追求しないって不文律があったと思いますが、根掘り葉掘り聞かれたら誤魔化したくなるって事で、お許し頂けると助かります」
ハンターの技能は、その生存率に直結する為、他人のスキルについては深入りしないのが常識であり不文律だ。
つまり、今回のギルド長の質問は『職権濫用』もしくは『恐喝』に当たる可能性がある。
それを、ギルド長よりも話が通じそうなアイシャさんに、それとなく匂わせてみた。
「その通りね。ウチのギルド長がごめんなさい」
「チッ」
僕の意図を理解してくれたアイシャさんが、僕に頭を下げる横で、ゴリラが後頭部を摩りながら舌打ちした(笑)
出会ったばかりの頃のマギクスも、こんな脳筋だったなぁ……
「で、受付で質問する前にギルド長から連行されて来たんですが、この場で少し質問しても大丈夫ですか?」
「ええ、迷惑を掛けたのはギルド長ですから、答えられる範囲なら大丈夫よ」
うん、絶対アイシャさんが影のボスだな……
「普通にハンターをやってたら、依頼中にランク以上の魔物とかち合ってしまう事もあると思うんですが、その場合は討伐しても問題無いですか?」
ハンターは、ランクに応じて受けられる依頼に制限が掛かる。
例えば、僕はDランクって話だから、依頼はCランクにリストアップされたモノまでしか受けられない。
ただ、僕はハンター活動以外にも色々やらないといけない事があるから、その時にランク以上の魔物を討伐する事になる。
この十七年で練って来た魔法を試すにしても、弱い魔物が相手じゃ意味が無く、検証にすらならない。
「そうねぇ、問題そのものはありませんが、ギルドとしては、自分のランク以上の魔物を討伐する事は推奨出来ません」
「つまり、自己責任なら問題無いけど、ギルドが認めたって御墨付きはやらないって解釈でいいんですよね」
「その解釈で問題無いぞ」
アイシャさんとギルドの不文律についてのは確認をしていたところに、ゴリ……ギルド長が横入りして来た。
「うん、大体分かりました。で、もう帰って良いですか?」
「おう、そろそろ受付でギルドカードの用意が出来てる筈だ。絡んで悪かったな」
僕の事を探るなって空気を理解してくれてるのかな?
とりあえず、無事に開放されるみたいで安心した。
「あっ、もう一つだけ、この街に来るまでに討伐した魔物の素材は買い取って貰えますかね?」
「おう、受付に買い取り専用窓口があるから、受け取ったギルドカードを持ってそこに行け」
アイシャさんに頭を叩かれて冷静さを取り戻したギルド長が、シッシッと手振りしながら答えてくれた。
アイテムボックスの魔法を使える人間は珍しいから、素材といっても魔石程度と油断してるな。
異世界チートの定番魔法を、僕が使えない訳無いじゃないか(笑)
「ありがとうございます。じゃ、失礼しました」
愛想良くギルド長室を後にした僕は、買い取り窓口を目指した。
――――アイシャ視点
「アイシャ先輩、またギルド長が新人さんを訓練場に連れて行っちゃったんですよ。今回は新人さんも悪いんですけど、なんとかしてあげて下さい(泣)」
商業ギルドの副ギルド長と、事務レベルの打ち合わせを終えて受付奥の自席に戻った私に、後輩のレニーが泣きついて来た。
レニーの指導を担当させていたマデリーンが、レニーの後ろで苦笑いしながら頷いている。
「まったく、あのギルド長は…………」
ギルド長であるリチャードは、現役時代に私が専任担当して来た元ハンターだけど、とにかく腕力で物事を解決しようとする残念な人なのよね……
ギルド本部も何を考えて、あのバカをいきなりギルド長なんて役職に任命したんだか……頭が痛いわ。
「【術式破壊】って魔法ですよ。この空間では、僕以外の人間は魔法を使う事が出来ません」
「スペル……そんな魔法は聞いた事無いぞ!? それにお前、いつ詠唱した!? ………なら、次は剣だ」
「魔物相手に魔法が通じなかったら、別の方法で勝負しようって魔物に言うんですか? ハンターって(笑)」
「【炎弾】」
――――ドガアァァァァァァッ!!
新人さんを心配して、訓練場に足を運んだ私は信じられない光景に絶句してしまった。
『あのバカが…………手玉に取られてる?』
ほんの一年前まで、この街最強のハンターって云われてたリチャードよ?
頭は残念だけど、実力なら現在でも最強って云われてるギルド長が、登録したばかりの新人さんに遊ばれている?
あの年齢で、あの実力……
確か……カイトさんだったかしら……ゆっくりと話し合いの場を設けたいところね。
「お、おう。実力は分かった。とりあえずギルドマスター室に来い」
リチャード、グッジョォォォォォォブ!!
うん、この流れなら介入しないでも大丈夫そうね。
早速、お茶の用意をしないと♪
うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ
この子は…………リチャード以上にメンドーな子ね(泣)
リチャードと違って、知恵がある分、たちが悪いわ。
でも、魔物素材を早速卸してくれるみたいだし、ギルドとしては優秀な新人Getね。
って、何なのよ、この素材の量は!?
オーガ? トロール? グレイハウンド!?
あの子、アイテムボックス持ちだったの!?
……………………ふぅ、
「レニー、優秀なハンターを確保する為に、ほんの一握りのハンターには『専属受付嬢』が付く制度を知ってるわよね?」
「えっ? …………せ……先輩?」
「副ギルド長として辞令よ、あなたをカイトさんの『専属受付嬢』に任命します!」
「うええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!」
「受付で変な声を出さないっ!!」
レニー、貴方も私同様、エリートコースで苦労して貰いますから、頑張ってね♡
お読み頂きありがとうございますm(_ _)m
やっと異世界転生らしい話になってきましたが、なかなか話が進みませんorz




