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推しが最推しになるときは

はいはい狂ってますよ、推し狂いですよ。

狂った話しかしてないよ!

イベントの第一部を終えて、買い物も済ませ、後は写真でも撮ったり他所(よそ)の子供でも愛でてのんびり楽しもう~と思っていた私だが、第二部の最中に、そう言っていられない事態が起きた。推しとの遭遇である。私の脳内には、映画「未知との遭遇」のBGMが鳴り響いていた。

『は?何言ってんの?お前の推しって監督じゃなかったっけ?』

ごもっとも、それはまぁそうなのだが、落ち着いて聞いてくれ。


推しには、自発的推しと、偶発的推しがある。


…何言ってるか分からないですよね、解説しますね。

それまでの推し(かん)は、「○○なところが良いので推します」という、説明がつくものだった。「我が街のチームなので応援します」、「エピソードが素敵なCP(カプ)なので見守りたいです」「イケメンなのでファンになりました」「地元出身なので頑張って欲しいです」…全てそこには理由があったのだ。ところが、この日私に起こった変化は、それらの説明を全部ぶち抜いて、凌駕して、薙ぎ払うパワーを持っていた。

……そうですね、例えるなら、「美しいサッカー」を目指してたチームを、身長2m超えのゴリマッチョ11人揃えてフィジカルだけでぶちのめすみたいな感じですかね、サッカー分からないので知りませんけど。(おいこら)


そんな感じ(……どんな?)で私の心をさらっていったのは、他でもない、N監督のまなざしの美しさだった。


「結 局 監 督 か よwww」?

そうだけどそうじゃないんだ、ちゃんと私の話を聞いてくれ。

百人一首の権中納言敦忠の歌にも「逢ひみての後の心に比ぶれば昔はものを思はざりけり」とある。文字情報で相手を知るのと、実際に目の前の相手と対話して知るのとでは、雲泥の差がある。この日私はそれを痛感した。

正確には、会話がきっかけではない。サインと写真をお願いした時の監督は、公式HP(ホームページ)で見た時と同様、素晴らしく顔は良いが少し冷たい印象だった。

それが、子供達を前にした時の監督の目は、緊張の中にも慈しみを感じられた。そのまなざしを見たとき、私の心は雷に打たれた。


人が、真に何かに惹かれる時、そこに理由などないのだ。かつて私が夫に出会った時に運命を感じたように、多くの人が恋に落ちる瞬間に抗いがたい力を感じるように。


かくしてその時から、N監督は「推し」から「最推し」に昇格した。シーズン始まる前にこの快挙。ほんとこれからの活躍が楽しみですねぇ。


私が最推しについてあれこれ情報を仕入れたりしてギャンギャン騒いでいると、夫は残念な生き物を前にしたような目で、「まぁ…楽しそうで何より……」と、憐れむような声で呟くようになった。こんな私と結婚してくれて、ほんと夫には感謝しかない。


そしてそれから一ヶ月以上経ったある日のこと。別のイベントでテンションが、上がりすぎて娘にもドン引きされながらも監督にサインをお願いした際、呆れて憐れむような目線のN監督を見たとき、私はデジャヴに襲われながらも最高にときめいてしまった(ドM)。この目、どっかで見たことあるぞ?

……そう、推しに狂った時の私を見る、夫の目だった。全く残念で、しかし正義感ゆえに見捨てられない、そんな目。またひとつ、推しと夫との共通点を見つけ、夫への愛を、再確認する私だった。

のろけててすみません、私は基本的に、極端な夫大好き馬鹿です。


……………


ちなみに、この少し前に私は、新しく別の二次元の推しに出会ってしまい、こちらは誰にも言えずに少し(だいぶ)病むことになるのだが、それはまた別の話。

ほんと夫には感謝しかない……一生しゅき……

(結婚してなかったらストーカーになってたレベルなので、犯罪者にならずに済んで良かったです)

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