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【リアルロボット系社会SF】蒼翼の獣戦機トライセイバー  作者: 硫化鉄
第一章 第四話  「その日、何が起こったか」
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三 ファーストコンタクト。

「大尉……」

「上空を監視しろ。まず相手の動きを見る。こちらには気付かれるな」


 射出されたものは高度を維持していた。飛行する性能があるのは間違いない。敵の戦力が、いやそもそも敵なのかどうかすらわからない現状では、まず観察するしかなかった。


 上空の二機に大きな動きは見られなかった。更なる破壊の兆候もなく、逃亡する気配もない。彼らについて判断する材料を何も持たない大榊は、まだ動く事が出来なかった。


「さらに地表に変化あり!」

「三機目……か」


 大榊と金富が見守る中、三機目が射出され、上空へ飛び去った。


「画像が撮れました。出します」


 金富がモニタに表示させた画像は最初に射出された不明機のものだ。その画像は、大榊をさらに混乱させるものだった。


「何で、地下からUFOが……?」


 地下から射出された不明機は、航空力学を完全に無視した存在だった。固定翼も回転翼も持たない機体が、どうして現在このヘリよりも上空を飛行していられるのか。


 大榊は命令書を思い出していた。

 テロの標的、またはテロ組織の拠点。


 テロ組織はこの不明機の破壊または奪取を目的としていたのか、この不明機はそもそもテロ組織のものなのか。どちらにしても、重大な事態であることは間違いなかった。


「金富、信号弾の準備だ」

「了解!」


 まずは中隊をこの空域に集結させる。投降の勧告、捕獲、最悪撃墜までを視野に入れる必要があった。敵対的だった場合、相手は大量殺人を行ったテロリストである可能性が高いからだ。だが不明機に搭載されている武装がこの災害を起こす威力を持ったものであれば、朝霞中隊の手に負えるものではない。


 金富は部隊向けの信号弾と、基地向けの信号弾を用意していた。全くもってそつがない。


 その時、大榊は地表におきた新たな変化に気付き、血の気が引くのを感じた。瓦礫がわずかに揺れ動き、不安定に重なっていたところは崩落した。余震なのか、更なる攻撃なのか。

 が、地表の揺れはそれ以上大きくなる気配を見せなかった。震度にして1~2と言ったところか。


「金富、信号弾発射!」


 それでも大榊は信号弾の発射を指示した。地表を映すモニタに、瓦礫を吹き上げている箇所をさらに三つ確認したのだ。合計6機。大戦力と言っていい。


 信号弾の発射を確認し、大榊はヘリの高度を上げた。三機の機体はゆっくりと上空を旋回していた。速度といい形状といい、飛行している事が信じられない。大榊の常識を覆す存在だった。


 空気を切り裂く音がして、戦闘機がこの空域に姿を見せた。防警軍主力戦闘機KK-27Fだ。増援というわけだが、やはりタイミングが引っかかった。早すぎるのだ。大榊が基地に送った信号弾は、この増援には関係ないだろう。不明機の出現を別軸で察知してスクランブルしたものと考える他はない。


 大榊は改めて、猜疑の目で不明機を見つめた。一体これらはなんなのだ。


 下方からさらに三機の不明機が射出されてきた。今のところ増援の戦闘機に攻撃の気配はない。現状への対処について、指揮権は未だ大榊の手にあるという事だろう。


 大榊はマイクのスイッチを入れた。さて、言葉が通じる相手なのかどうか――。


「所属不明機に警告する。所属を明らかにし、投降せよ。くり返す。所属を明らかにし、投降せよ」


 返答はない。やはりテロリストなのか。


 威嚇射撃を行い、不明機6機を包囲する。反撃の気配はない。


「私は日本防衛警備軍航空部所属、大榊弘明航空壱尉だ。所属不明機、所属を明らかにし、投降せよ。従わない場合は攻撃をしなければならない。所属を明らかにし、投降せよ」


 大榊がそう言い、機銃の照準に不明機を捉えた時、不明機の搭乗者と思われる声が響いた。その声はまだ若い――幼い少女の声だった。

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