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【リアルロボット系社会SF】蒼翼の獣戦機トライセイバー  作者: 硫化鉄
    第十三話  「戦いの帰結」
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二 オリジナルの力。

「く……っ! 流石、オリジナルは伊達じゃない……という事ですか!」


 TSUBASAが歓喜にも似た声を上げた。


「TSUBASA、やはり奴は危険だ。ビームクラスターカノンをフルパワーで使う!」


 半分の出力でも鳥型のHMF-CPCで防ぐのがやっとだったのだ。フルパワーであれば、防げるHMF-CPCなど存在しない。ただ、地上でのエネルギーチャージにはまだ時間がかかりそうだった。


「なるほど。ならば時間を稼ぐ必要がありそうですね……。奴らを我々の故郷に行かせず、時間を稼ぐ方法は……」


 T型の目が、紅く光った。






 トモミはこれからどう動くべきか、必死で考えていた。このまますぐにでもヤマトへ向かいたい。敵が追って来ようが、先行して量産施設を破壊する事は出来るだろう。


 だが。


 もし、敵が追って来ず、東京や筑波基地の襲撃に向かったら。

 戦争自体に勝利することは出来ても、多大な犠牲を出してしまう。それはできない。


 ならばここで戦うのか――。


 ここで時間をかけてしまえば、ヤマト側でも充分に準備をする時間を与えてしまうことになる。最悪、量産機の投入を許してしまう可能性だって否定できない。


 どうすればいいの……?


「お前、一人で戦ってるつもりじゃねえだろうな」


 イツキの声が響いた。トモミははっと顔を上げた。


「さっきサポートお願いしますっつったのはトモミ、てめえだろうが。なぁイサオ」


 そうか。そうだった。私が今乗っているのはアインじゃない。セイバーなんだ。みんなと一緒に乗っているんだ。


「イサオ君! セリナさん!」


 トモミはツヴァイのコクピットに呼びかけた。






「わかっていますよ。彼らのメンタリティは……。勝利よりも、人命を優先するってね!」


 TSUBASAが進路を東京へ向けた時。


「こ……これは……!?」


 機体が思うように動かない。東京に向かうどころか、大穴へ、いや蒼翼の敵機へ引き寄せられていた。


「引力……かっ!」


 彼らの視線の中で、蒼翼の悪魔がヤマトへ向かう大穴へ飛び込んでゆく。彼らはその悪魔に引きずられるように、その後を追った。






 セイバーは紅翼の敵機を二機とも完全に捕捉し、一路奈落の底に向かっていた。トモミは敵機への引力が及ぶ限界を探りながら速度を上げて行ったが、イサオとセリナの絶妙な出力調整は、がっちりと敵を捕らえて放さなかった。


「ヤマト到達まであと40%です。温度が上昇してます」


 ハユの声に、イサオはもう一つのエネルギーシステムを立ち上げた。敵機が使用している熱転換システムだ。周囲の熱を吸収し、直接エネルギーに変換する。セイバーの出力がさらに上昇した。


 蒼翼からダイヤモンドダストが発生し、キラキラと光を引いた。





「まぁ、オリジナルだからな。熱転換システムくらいあるだろう。だが……温度が上昇しているのはこちらも同じだ!」


 MISAKIはセイバーの引力に引きずられながら、MWAをT型に接続した。


「TSUBASA、チャージは完了だ。わざわざ引っ張ってもらっているのだから、外す気遣いはないな?」


 TSUBASAはビームクラスターカノンを展開した。今度は100%の出力だ。


「MISAKI、いくらなんでもその質問はあまりに失礼ですよ。

 ……これで終わりにしましょう、蒼い翼の悪魔!」


 TSUBASAは歓喜に燃えてトリガーを引いた。






 誰も言葉には出さなかった。六人は同時に同じ事を考えていた。そして、同じ事を、異なる方法で実践した。

 背後から迫ってくる巨大なビーム。前に見たのと同じ武器なのだろうが、あまりにも出力が違った。回避など出来る状況ではない。


 防ぎきる。

 だが、敵は放さない。そのためには……。



 トモミはHMF-CPCにまわせるだけの出力をまわした。

 ライゾウはHMF-CPCの磁束密度を極限まで上げた。

 イサオはARコンの調整に専念し、敵を捕らえ続けた。

 セリナはEDBモードを機動し、出力をさらに上げた。

 イツキはPコンを使って、敵ビーム粒子を出来る限り拡散した。

 ハユは出来る限り敵ビーム粒子の流れを受け流すよう、翼の角度を調整した。

 一人一人が同じ目的のために最善の手を尽くしていた。



 そして。





「無傷……だと……!?」


 MISAKIは信じられないものを目の当たりにしていた。T型とM型によるフルパワーの合体攻撃だ。それで撃破はおろか、ダメージを与えることすらできないとは。


 となれば白兵しかない。白兵で敵の防御の薄い箇所を的確に破壊するしかない。

 だが、敵のあの機動性を相手に、白兵戦を有利に展開することができるのか。


「こちらは二機です。MISAKI。それに白兵は、よりパイロットの技量が物を言います。我々のシステムで、機体の性能差など軽く凌駕してやりましょう」


 確かにTSUBASAの言うとおりだった。勝機はまだある。しかも薄いわけではない。


「確かに、接近するのは容易いな。敵がわざわざ引き寄せてくれているのだから……!」


 MISAKIはMWAにビームの刃を発振させ、展開した。TSUBASAは両手にヴァリアブル・ダガーを構え、長大な刃を形成した。


 ……だが。


 MISAKIには何か予感めいた思考ノイズが生じ始めていた。


 ――なんなのだ、これは……。まさか……――

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