表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【リアルロボット系社会SF】蒼翼の獣戦機トライセイバー  作者: 硫化鉄
    第十二話  「奈落への出撃」
114/140

五 作戦。

 同日15:00。


 既にほとんどの部隊が都内の収拾にあたっており、残った数少ないメンバーで作戦会議が開かれた。


 大臣、統幕のメンバーに、萬田、折原とチームトライのメンバーである。金富は新しい任務に就いたため、メンバーから外れていた。


「大まかな流れは前にハユ君が言った通りでええと思う。Gコンの偵察をして、何かあれば即応してもらい、何もなければ増援を待つと」


 萬田がそこまで言った時、イサオが手を上げた。


「何故、増援を待つ必要があるんですか? すぐにGコンを止めに行った方が、東京はより安全ですよね?」


 イサオは挑みかかるような目で萬田を見ていた。しかし、イサオは自分の考えが正しいと信じていた。苛立ちが、心を不安定にしているとは思いたくなかった。


「それはそうやが、何もわからん敵地に少数で行くっちゅうのは危険が大きすぎるやろ」


「確かにそうです。でも、ヘリ部隊が増援に来たとして、あの大穴から中に入っていけるんですか? 広さもわからない地底で、ヘリが有効に動けるんですか?」


 イサオがずっと考えていた事だった。どう考えても、あの大穴から突入するには巨大Gコンによる重力操作を突破しなければならない。それが出来るのは同じくGコンを搭載したTシリーズ以外有り得ないはずだ。


「そらそうや。僕もヘリであの穴へ突入できるとは考えてへん。せやから実際に増援として機能するのは、改修したドローン部隊の方や」


 萬田はうなずきながら言った。


「あれならコンテナに二個小隊くらいは積める。Tシリーズに運んでもらえば突入も出来るし、小回りが利くから地底でも運用はできるやろ」


 萬田の言葉はだんだんと早口になってきていた。喋るスピードが、考えるスピードとシンクロしてきているのだ。萬田が真剣に考えて喋っている時の癖であった。


「あの、そのドローン部隊というのはどういったものなのですか?」


 そっと手を上げたのはライゾウだ。


「敵さんが使っていた改修型ドローンを、こっちで再改修したもんだ」


 宮司が答えた。


「敵さんがこの筑波基地を乗っ取った時、うちのドローンとあっちの特殊車両を合わせて使って来ただろ? 鹵獲したやつと基地に残ってたやつ、データも残っていたからこっちでも利用してやろうってわけだ。

 まぁ今回の改修の目玉は、コクピットを取り付けて操作系を集約させた事で、有人機になったってとこだな。無線操縦やAIはちょっと危ないからな」


 確かに、筑波基地が乗っ取られた時、決め手となったのは筑波基地所属のドローン部隊が反乱を起こした事だった。今回少数で敵地に乗り込んだ際、もしAIが反乱を起こせばイサオ達に勝ち目はなくなる。


 どちらにしても戦力としてはあてに出来ない、とイサオは思った。急ごしらえのドローンなど何になるというのだ。


「まぁ現状では機数も充分に確保できてへんし、テストも充分ではない。ぶっちゃけ、都内の収拾任務で運用テストをしている、というのが本音や。テストなしでいきなりドンパチの中に放り込むわけにはいかんからな。ヘリ部隊のサポートで実働テストを行い、増援として合流させるっちゅうわけや」


 萬田は申し訳なさそうに言った。確かに、いくら時間がない中での策とはいえ、乱暴すぎる作戦だった。それでも、チームトライのみで今すぐ突入するよりは遥かに慎重策と言える。


「でも……!」


 イサオはなおも反論しかけて言葉を失った。即突入を強弁する根拠がなかったからだ。特に、敵Gコンの動きをモニターする事で、敵作戦を発動前につぶせる見込みが高い以上、慎重策に反対する論拠はない。わざわざ危険な方法を選んで敵地に突入するという無謀に、チームトライを、トモミを巻き込む事はできなかった。


「大丈夫ですよ、イサオさん。ドライでしっかり重力の状態をモニターします。少しでも何か変化があったら突入しましょう」


 ハユの言葉に、イサオもうなずく他はなかった。


「じゃあ、チームトライは早速筑西へ向かってくれ。大榊壱尉も専用機で同行。たのむで!」


 萬田がまとめると、宮司が恐る恐る手を上げた。


「あの、私は……」


「宮司壱尉は基地に残る。当たり前やろ。都内でテストしとるドローンの調整もあるし、忙しなるでぇ」


 当たり前のように言われ、宮司はがっくりと肩を落とした。


「そうですよね……」


 実際は大榊に同乗したいところだったのだろう。だが、基地内の人手が足りないという理由以外にも、もしもの時に大榊、宮司という、敵を良く知っている司令官を二人同時に失うわけにはいかないという思惑もあり、宮司にはそれも良くわかっていた。


「じゃあ、お前達、がんばってくれよ」


 残念そうに言った宮司の言葉で、作戦会議は終わった。


「ライゾウさん、トモミさん、ちょっと待ってもらっていいですか?」


 みなが会議室を出て行こうとする中、今までじっと黙っていた岐部総理大臣が声をかけた。全員が思わず立ち止まる。


「あぁいえ、ライゾウさんとトモミさんにお話がありまして。大榊壱尉、チームトライのみなさん、先に出撃をお願いします」


 明白な人払いである。会議室の空気が緊張した。


「……わかりました。チームトライ、直ちに任務にあたります」


 大榊は表情を変えずに敬礼し、会議室を出た。イサオ達、折原、そして統幕のメンバーも後に続き、室内に残ったのは岐部総理大臣とライゾウ、トモミの他、萬田空将と御殿場防警大臣だけであった。






 ライゾウさんと倉科が残された理由は何なんだろう。


 イサオの頭を支配しているのは、その一点だった。考えまいと思うのだが、任務に集中しなければと思うのだが、そうする程にむしろその疑念は深まっていく。


 ハユが残されるのならわかる。だが、ドライは一刻も早く筑西で敵Gコンのモニターを開始しなければならなかった。

 ライゾウさんが弐尉だからか。とすれば、倉科まで残される必要はないだろう。


 イサオはT2-1のコクピットで、T1-1に視線を送った。まだ彼女達が来る様子はない。


 別の任務を与えられているのか。戦闘力なら今のツヴァイの方が上のはずだ。危険な任務ならなぜツヴァイにやらせない?

 やはり、機体を大破させるようなパイロットは信用されないという事なのか。


「筑西に急行する。各自筑西付近へ到達後、速やかにドッキングせよ。ツヴァイは待機。ドライは敵Gコンのモニターをよろしく」


 ぐるぐると回るイサオの思考に、大榊の命令が止めをさした。そうだ。任務は始まっているんだ。行くしかない。


 イサオはふうっと息を吐き、T2-1を起動した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ