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僕は病弱だけど千里眼は便利です  作者: ねこねこ大好き
第二章:千里眼の力
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悪魔召喚

 馬が真夜中の森を全力疾走する。ぜひぜひと息を荒げても走らせる。

「なんて奴らだい! ゴブリンのくせに馬を操るなんて!」

 メアリーさんは後方を確認すると舌打ちする。同じように振り返ると、十頭の馬が追ってきていた。背中にはそこそこの体格をした鬼、ゴブリンが乗っていた。


「ハイゴブリン! ゴブリンのリーダー格がどうして十人も追ってきてるんだい!」

 メアリーさんは焦っている。さらに森の中からガサガサと足音が響く。


「森からも追ってきてるねぇ……数は三十くらい……兵団じゃないと対処できないよ! こんな奴らが居たらすぐに問題になるのにどうして何の情報も無かったんだい!」

 メアリーさんは悪態を吐いて、必死に心を鎮めようとする。


 僕もパニックで凍り付いている。


 死にたくない。だけど、千里眼は死を予知している。


「メアリーさん。前方に落とし穴が多数ある。止まって」

 千里眼で敵の位置とトラップの位置を把握する。一秒でも生き残るためだ。

「落とし穴だって?」

 メアリーさんは前方に目を凝らす。そして何かに気づくと、急いで手綱を引っ張る。


 ひひんと馬は悲鳴を上げる。疲れ切っていたのか、馬は勢いを殺す前に、足をもつれさせた。


「根性の無い奴だね!」

 メアリーさんは制御不能となった馬から、僕を抱えて脱出する。


 乗り手を失った馬は、よろよろと走りながら、落とし穴に落ちてしまった。


「罠まで使いこなすなんて……ベテランの冒険者が100人集まっても手こずる奴らだよ」

 メアリーさんは落とし穴を覗く。底は木の杭が設置されていた。落ちてしまった哀れな馬が、串刺しになっているのが見える。


 僕の心臓がドキドキしている間にも事態は悪化する。


 パカパカと馬の足音が近づいてくる。

 がさがさと森の中がうるさくなる。


「囲まれたねぇ……」

 メアリーさんが顔をしかめると同時に、森の中からゴブリンの軍勢が現れる。追ってきていたハイゴブリンも到着する。


「これは私の不手際だよ……悪かったねぇ」

 メアリーさんは絶望の瞳で剣を抜く。

 怯えていても、剣を持つ姿はたくましいの一言だった。


「気にしないでとは言えないけど……罵倒する場合じゃないから、気にしないで」

 僕は松葉杖を握り締め、槍術の構えを取る。一匹くらいなら何とか……。


『おいおい。何をしてるんだ?』

 突然、悪魔の声が頭に響く。


『俺を召喚しろ。そうすりゃ楽勝だ』

 悪魔の声は実に落ち着いている。


『もう封印の解き方は分かってるんだろ? なら、やるしかねえさ』

 悪魔の声が止むと同時に千里眼が発動する。


 千里眼は数分後の未来を見た。


 長身で真っ赤な長髪をした青年が、ゴブリンたちを血祭りに上げている未来だ。


「……『わたしは君に跪こう』」

 僕は悪魔召喚の詠唱を始める。

 詠唱の通り、跪く。


「『わたしは君にわたしの血肉を捧げよう』」

 ガリッと親指を噛んで、血を出す。


「『わたしは君をわたしの後継者と認めよう』」

 血で魔方陣を描く。


「何をやっているんだい?」

 隣でメアリーさんが、狂ったのかと目を疑う。

 ゴブリンたちは、魔方陣から発せられる殺気に怯え始める。


「『来たれ君よ。可愛らしき君よ。愛おしき君よ』」

 僕は天に高らかと宣言する。


「神の後継者にして神の敵対者! 永久凍土の世界から! 僕の前に姿を現せ!」

 魔方陣から赤黒い瘴気が噴き出る。


 それが収まると、代わりに一人の青年が居た。


 青年の瞳は血よりも赤く、髪は血よりも真っ赤で、顔立ちは恐怖を抱くほど美しく、服は見たことも無いほど綺麗で、体格は芸術よりも理想的な肉体だった。




「やっと出られたぜ!」

 悪魔が僕たちの前に現れた。

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