表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/9

50年前のペンダント

「ペンダントですか?」

「50年前に落としちまった。見つけられるかい?」


「なぜ今更?」

「そのペンダントは旦那が50年前にくれたのさ。もっともすぐに落としちまったけど。旦那は安物だからと笑ってたけど……旦那が一週間前に死んじまったから、いまさら気になってね」

 お婆ちゃんのしわが少し深くなる。


「あなたのお名前は?」

「メアリーだよ。そういえば、名乗ってなかったね」


「メアリーさんですね。僕の名前はセリムです。よろしくお願いします」

「礼儀正しいね」

 お婆ちゃんからとげとげしい雰囲気が無くなる。


「さっそくですけど、どんなペンダントですか?」

「覚えてないんだよ。何せ50年前だからね」

「覚えてないんですか……」

「でも見れば必ず思い出せるよ!」

 凄い希薄だが、むちゃくちゃなお願いだ。


「分かりました」

 とにかく千里眼を発動してみる。


 頭に思い浮かんだのは、ここから百キロ南の海岸だった。


「海岸にあります」

「海岸だって?」

 驚かれるが僕だって驚いている。


「何がきっかけで落としたんですか?」

「確か、ダンジョンでモンスターに奇襲を受けたんだよ……その時落としたんだと思うよ?」

「ダンジョンで落としたのに海岸に?」

「わたしに驚かれても困るよ? そっちが言い出したんだから」

 そりゃそうだ。


「とにかく、海岸に行ってみる価値はあると思います」

「ふ~ん。奇妙な話だけど、グダグダしてても仕方ないね」

 メアリーさんは立ち上がると、僕の松葉杖を手に取る。


「一緒に来とくれ」

「一緒に?」

「どこにあるのか案内してくれなきゃ」

 その通りと言えばその通りかもしれないが……。


「地図を書きます」

「わたしゃ目が悪いんだ。一緒に来るんだよ」

 何を言っても聞かないな。


「分かりました。ただ、僕は身体が弱い。歩くとなると相当な足手まといになります」

「馬を走らせればすぐに着くよ」

 強引な人だ。多めに依頼料をもらわないと割に合わない。


「分かりました。同行します」

「すぐに支度しな」

 メアリーさんは言うと一目散に外へ出る。


「何なんだかな……」

 立ち上がると眩暈でクラクラする。


「あの人はああいう人だ。諦めてくれ」

 様子を見ていたダリウスが、なぜかメアリーさんに代わって謝る。


「あの人は冒険者の中でも伝説の人なの。悪いけど、付き合ってあげて。多めに報酬渡すから」

 ギルド長のビルマまで謝る。

 冷静で冷徹なビルマが謝るということは、メアリーさんは相当な発言力を持っているということだ。


 これは、チャンスかもしれない。

 しっかりと仕事をこなせば、評判があがって、さらに金儲けができる。


「分かりました」

 内心ほくそ笑む。表情はやれやれとため息を吐く。


「早くしな!」

 メアリーさんの大声が冒険者ギルドに響く。


「はいはい分かりましたよ!」

 腹の底から怒鳴ると、立ち眩みがした。


「が、頑張ってくれ」

 僕はダリウスの手を借りて、冒険者ギルドを出た。


「やっと来たね」

 外ではメアリーさんが馬に乗って待っていた。


「メアリーさんが馬を走らせるんですか?」

「年寄りだって馬鹿にしちゃいけないよ? わたしゃそこら辺の若造よりよっぽど強いからね」

 パワフルなお婆ちゃんだ。


「覚悟しますよ」

 よっこらしょっとメアリーさんの後ろに乗る。


「つかまりな」

 メアリーさんがバシンと鞭を叩くと、馬は雄たけびを上げて走り出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ