探し屋は皆に人気です
冒険者ギルドのギルド長と面談したのは良い結果となった。
「冒険者ギルドの中で商売して良いわ。ただ、詐欺だとか問題になったらその時は処罰するから」
冷たい言い分だが、どうどうと商売できる場所ができたのはありがたい。
素直に甘えさせてもらう。
そして正式に店を開くと、すぐに繁盛した。
「あんたがダリーとプリマを救った聖人様か?」
冒険者ギルドの隅っこにこじんまりと座っていると、さっそく、三人組の冒険者が訪ねてきた。
冒険者は耳が早い。二人が助かったという情報は一日で広まった。
「情報を提供しただけだよ」
「それだけじゃなく地図も描いた」
三人組の冒険者が興味深げに僕を見る。
「まあね」
「一回につきいくらかかる?」
そういえば料金を設定していなかった。
「銅貨10枚でどう?」
高すぎると客が遠のく。なら安く設定すればいい。
銅貨10枚でも十人来てもらえれば銅貨100枚だ。一泊程度の宿代と夕食代にはなる。
「それならいいか」
「おまじないだって考えれば妥当かもね」
三人組の冒険者は納得してくれたようだ。
「スケルトンを操っている親玉を探して欲しい」
「スケルトンを操る?」
「スケルトンは不死身のアンデットモンスターだ。動きは遅いし脆いからそれほど強くない。だがすぐに復活する面倒な奴だ」
「確かに厄介そうだ」
「そしてアンデットモンスターは自然発生しない。ネクロマンサーという死体を操る術者が居る。そいつを見つけないと俺たちの仕事は終わらない」
事情は分かった。しかしもうちょっと正確な情報が欲しい。
「なぜスケルトンの討伐を?」
「王都周辺から南に十五キロの墓場で大量発生している。実害はまだないが、いずれこっちに被害が来る」
なるほどなるほど。
「ネクロマンサーがアンデットを操る時の射程距離とか分かる?」
「射程距離は無限だ。だから見つけられない」
情報が少ないな。
「やってみるよ」
目を瞑って千里眼を発動する。
情報が目の裏に浮かび上がる。
「墓場から三十キロ離れた神殿に居る」
「神殿?」
「かなりボロボロだ。しかも悪魔みたいな像が飾ってある」
「魔教団の神殿跡か」
三人は心当たりがあるらしい。
「ありがとう」
三人はぶっきらぼうに言うと、金を置いて立ち去った。
「必死だな」
溺れる者は藁をもつかむ。この言葉は本当だ。
人は切羽詰まった時は、悪魔にもすがり付く。
探し屋。上手くいくか分からなかったが、この調子なら大丈夫だろう。
「話が聞きたい」
そうこうしていると新しいお客さんが来た。
「なんだい?」
こうして僕の商売は初日から軌道に乗った。
それから数日経つと、行列ができるほど繁盛した。
「子供が昨日から帰っていないんだ!」
「家出だね。お婆ちゃんの家に居るから迎えに行ってあげて」
「ダンジョンで財宝を見つけたんだが、どこにあるのか忘れちまった」
「その時は敵に追われていたから逃げるのを優先したんだね。ダンジョンに入って右側に小さなトンネルがある。そこからなら安全に行けるよ」
「金が無いんだけど」
「働け」
こんな具合に商売繁盛だ。宿代と飯代は簡単に稼げるようになった。
そんな順調な日に、一人のお婆ちゃんが訪ねてきた。
「マザー! どうしてこちらに!」
「御用があればこちらから伺ったのに!」
そのお婆ちゃんを見ると、職員が大慌てした。
「わたしゃその子に会いに来たんだよ」
お婆ちゃんは杖も突かず、大股で歩くと、ドサリと僕の前に腰を下ろす。
かなり美人なお婆ちゃんだ。しわはあるが目立たない。目つきが鋭く、そこら辺のチンピラなら震えあがるだろう。服も質素ながらしっかりと手入れされている。
かなり裕福だ。
「何か御用ですか?」
「用が無ければ来ないよ」
ぶっきらぼうな婆さんだ。威圧感もあるからちょっと怖い。
「あんた、何でも探せるんだって?」
「そう思ってます」
お婆ちゃんは疑うような目で睨む。
「なら、私が50年前に落としたペンダントを探してくれ」
お婆ちゃんは疑いつつも、寂しい目で言った。