悪魔と対面
「これはなんだ?」
いつものように目を瞑った感覚と違う。
まるで別世界の風景を見ているようだった。
『待っていたぞ、セリム』
暗黒の世界に声が響く。
「誰だ!」
身も凍る圧迫感に圧倒される。
『お前の両目を奪った男だ』
「僕の両目を?」
意味が分からない。
『俺はお前の両親と契約した』
「契約? 僕を生き返らせた?」
『そうだ。その代わりお前の両目を頂いた』
「なぜそんなことを?」
良く分からないが、話を聞くしかない。
『俺は神々に封印された。だから封印を解く使者が必要だった』
「神々……おとぎ話の悪魔って奴か」
『そうだ』
「そう……悪魔ははるか昔、地獄に封印されたって聞いたけど」
『その通りだ。だから封印を解いてもらう』
本来なら眉唾と笑うところだが、この圧迫感だと信じるしかない。
「どうやって封印を解く?」
『その目は世界の理も見通す力がある。世界の理から、俺の封印を解く方法を探し、実行しろ』
「つまり、お前は僕が実行しないと何もできないってこと?」
『そうだ』
「ならどうやって世界の理を見ればいい?」
『念じればいい。それだけで済む』
「断ったら僕にデメリットありますか? 失明とか」
『お前の目は俺の目だ。そんなもの無い』
「ならさようなら」
『は?』
圧迫感が一気に無くなる。
「お前は封印を解いたら世界を支配するつもりだろ」
『当然だ!』
「僕に何のメリットもないでしょ」
『め、メリット?』
「僕は得しない」
『ならば俺の伴侶にしてやろう!』
何言ってんだこいつ?
『俺は神の後継者! つまりお前は神と同等の存在となる! 誇らしいだろ!』
「僕は女の子が好きなんで」
瞼を開けると、再び部屋の景色が現れた。
「ドジな悪魔」
あんなこと言われてハイと言う奴は居ない。
「でも、僕が病弱な理由が、何となく分かった」
無理やり生き返らせた。だから病弱なのだ。
「そんなことより、どうやって生活しよ」
千里眼を持っていたところで金にならない。
せいぜい世界の理が見えるくらいだ。
「世界の理ね」
そんなものに興味はない。
「金がある場所なら良いんだけど」
そんなことを思いながら瞬きする。
一瞬、山のような金貨が見えた。
「え!」
再び目を瞑ると確かに金貨の山が見える。
「ここは……王宮の宝物庫」
頭の中に王都の地図が現れる。
そこに宝物庫の場所が記される。
「じゃあ……ダンジョンはどこにある?」
今度はダンジョンを探したいと願う。
今度は世界全体の地図が頭に思い浮かぶ。そこには無数の印がついている。
「世界って丸いんだ」
ダンジョンよりもそっちに感動してしまった。
「リリスはどこに居る?」
今度はリリスが居る場所を捜す。
リリスは宿屋の外で元気よく、子供たちと遊んでいた。
「これって……お金になるんじゃ!」
お金稼ぎのやり方が見つかった!
「ありがとよ! へっぽこ悪魔!」
初めて悪魔に感謝した!