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灯火

腹が減った

道中、獲物が見つからず空腹のまま歩くことになった


「食事はなぜ必要なのだろうか」

「栄養が人の体に必要だから?」

「・・・誰?」


白い髪がわずかに光り、目を奪われそうになる容姿を持つ知らない女性が隣に立っていた


「ルリと申しま・・・」

そこで僕の意識が途切れてしまった


三日間何も食べてなかったから当たり前だ


目覚めると青い天井が広がっていた

いや、これ空だ


「大丈夫?これ食べる?」

倒れる僕の隣にいる知らない女性に、無表情でサンドウィッチを差し出される


「あ、うん。・・・え?誰」

「誰は失礼じゃない?・・・あと私、ルリね」

「あ、はい」


綺麗な形をしたサンドウィッチを受け取り、食べた


「おいしい」

と、つぶやくほど美味しかった


「よかった」

さっきまで無表情だった綺麗な顔立ちが、急に笑顔になったため

一瞬だけ心不全になった


「あ、あのありがとうございます」

「困ったときはお互い様。それともうすぐ嵐来るみたいだから、私の家に来て」

「あ、はい。え?いや、見知らぬ空腹で倒れてた武器持ってる怪しい男を家に連れてくの?」


僕は、親切すぎて逆に怖くなってきた

この人の度の超えた無防備さも心配になってくる


「大丈夫よ。私強いから」

「いやいや、自分より強かったらどうするんだよ」

「見るからに私のほうが強そうだし」


ま、まぁ、武術とか習ったことないし

この人のほうが強いだろうな。自信あるみたいだし


「でも、見るから僕って弱そう?」

「・・・うん」

一瞬、気を遣おうとしてくれたみたいだが、正直に答えられてしまった


「あ!そうだ。僕、武道未経験でさ。教えてくれないかな」

「・・・騎士武術だし、君が持ってる獲物には合わないと思うよ?」


後ろにある僕が持ってる鎌を物珍しそうに見た後、僕の顔を見つめる


「あ、これは形見みたいなものだし、手合わせしてくれるだけでいいから」

「そう、・・・いいよ。でも私は厳しいわよ?」

「はい」


なぜか、今、村の門番の人のことを思い出してしまった

優しくて強くて、意外と気配りな世話焼きな自分の兄みたいだったもういない人を


「うれしくなかった?」

「あ!いやいや、うれしいよ。よろしく」


考えないようにしていても出てくる自分の中の大きな存在を忘れたくないと思いつつ、記憶から消したい苦しみたくないと思ってしまい、自分の感情があやふやになっていくのを感じる


「うちここだから。」


普通の民家だ。畑もある


「普通とか思ってるんでしょうけど。早く準備して」

「え?なにの?」

「修練の相手になってもらうわ。あなたの修行にもなるしwin--winでしょ?」


と両手の人差し指と無表情だったさっきまでの顔からは連想できない無邪気な顔に胸を痛めつつも

自分の唯一の持ち物である鎌を構える


ルリは、どこから出したのかわからない剣を片手で構える


「行くわよ」


と言った直後には目の前にいた

鎌で剣を受け流し、ハンマーのごとくルリに打ち付けると

その鎌を躱し

ルリは、僕に刺突してくる

それをぎりぎりで鎌の持ち手で受け止める

僕は、押されっぱなしで反撃の瞬間をその行動によってすべて持ってかれてしまった


防戦一方になってしまい、反撃の機会をうかがう瞬間すらくれない


しかし、ほんの一瞬だけ毎回攻撃に間が空く瞬間がある

それは僕が、足を動かさないとき


ルリはおそらく、僕の反撃を恐れているのではないか?

見たことのない武器で戸惑っているように見えた

僕だって、鎌の本当の使い方なんてわからない


だから、僕の自己流で動きやすい攻撃の仕方を掴む


ルリの攻撃は、流れるように放つ一つ一つ重いかつ自分に余裕を持たせている


真似するには、鎌のリーチが長すぎる

・・・いや、鎌の最大の特徴はリーチが変幻自在なことなのではないか?

短く持てば細かい連撃ができて、長く持てば大振りができる


相手のいる位置によってリーチを変え、攻撃をし続ける


短く持ち、早い攻撃を打つとルリは驚いたように距離をとる

そして、近づいてくるタイミングに合わせて、大振りをっと


「経験不足ね」

鎌の刃に当たらず、ルリが間合いに入ってしまい、ルリの攻撃を躱せない


「行けると思ったのに」

「危なかったわよ。でも、このミスは致命的ね。サブ武器にナイフとか持っといたほうがいいと思う」

「なるほど」


ミスしても補えるわけか


「ありがとう」

「休もっか」

とさすがに緊迫した空気に疲れたのか

ルリが微笑みながら、話しかけてくる


もらったウーロン茶が国宝級に美味しかったのは、僕がその時だけ村のことを忘れていてしまったのはなぜだろうか


風が強くなってきたため、家に上がらせてもらいソファーに座らせてもらう


だんだんと暗くなっていき、強い風は嵐へと変化した


ガタガタと不安を仰ぐ音、暗くなったせいで寒くなった気温が尚更、不安にする


「なんでさっき、村のこと忘れちゃってたんだろう」

このまま、忘れちゃうんだろうか


「嫌だ」


「え?私がご飯作るの嫌だった?」

「あ、ごめん。違う違う。そんな失礼なこと言うわけないよ。もちろん、OK」

「びっくりしたぁ。それより、寒くなってきたね。暖炉つけるね」


と魔道ライターも持たずに暖炉に近づく


「魔法も使えるのか?」

「火属性の下級魔法なら」


最初とは違い表情がよく変わってきている

仲良くなって、きたのかな


魔法を使うとよく()()()()()()()()()()()()


「うあああああぁぁああぁあぁぁぁあああぁぁあぁぁあぁぁぁあ」

「どっどうしたの?」

「母さん、()()()。死なないで、戻ってきて」


するとルリが、とっさに僕の頭を抱える


「大丈夫。大丈夫よ、落ち着いて」


「温かい。・・・ごめん、ありがとう」

「何があったのかはわからないけど、火は消そうか」

「ありがとう」


人の温かさを感じ、安心してしまったのか

深い眠りに落ちてしまった


父さんと母さんと兄さ・・門番のおじさんが向こうにいる

手が届きそうで届かない


何もできない


ごめんなさい・・・


目が覚めると

天井ではなく、ルリの顔があった

これは、・・・膝枕だ


「ごめん。みっともなかったね。知らない人が勝手に騒いで怖かったよな」

「大丈夫よ。つらいことがあったことぐらいわかるわよ」


僕は、起き上がり正座する


村であったことをすべて話してしまった

ルリは全く関係ないのに、人肌に安心してしまったのかもしれない

つらかったことをぶつける様に

だけど、ルリは受け止めてくれた


「村の思い出を忘れたくない。でも、つらいのは嫌なんだ」

「・・・上書きすればいいんじゃないかな。」

「え?」

ルリは、僕の手をギュッと握りしめまっすぐ僕を見て行ってくる


「そのつらいことを他の思い出で満たしちゃうんだよ」

「でも、村のみんなに」

「村のみんなは君をおいていったんだ。君が幸せになるのに文句なんて言えないはずよ」

僕は、俯いてしまった

何が正解なのかわからないから


「一つだけ聞くよ。君のお母さんは、君がこうして悩むことを望んだ?


「あ」


「私ね、最近、お兄ちゃんが亡くなったの。・・・すごく寂しかった。君が現れてくれなかったら、鬱になってたかもしれない。それに君との手合わせのおかげで、夢ができた。・・・私は騎士になる。お兄ちゃんがなれなかった騎士に。君は、冒険者に。一緒に幸せになろ!」


僕は、何気ない言葉にときめきつつも、話を聞き答える


「・・・う、うん!」


「あとね、お兄ちゃんは君の兄さんじゃないわよ」


「ほえ?」


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