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西暦2100年

作者: 3馬身2分の1

2100年に三人が何して遊ぶか相談するおはなし。


少子高齢化、人口減少と社会的に厳しい言葉が飛び交いますが、明るい未来であってほしいですね。

西暦2100年。

この国の人口は8000万人を割り、地方の店は経済活動が出来ず次々と撤退した。

その結果人が減り、街外れは廃墟が目立ち、撤去すらままならない設備、建物ばかりとなった。

そのような地域はインフラ整備も後回しとなり、水道供給はストップ。

道路のアスファルトは放置され、至る所で地割れと長く伸びた雑草が目についた。

そのため地方では生活が困難となった。

都市集中が叫ばれ、この国はいかにコンパクトな社会を目指すのかということがよく議論される。


あれもこれも少子高齢化が招いた結果だ。

同世代が減ってしまった陽葵ひまりは、ふぅと息をついた。

割れたアスファルトを歩く足取りは重い。

やっとこさ公園に着いたときには、結菜ゆいな結愛ゆあはすでに到着していた。


「きょうは何をするの?」

結菜はクスクスと笑って言った。


ふんわりとした性格を表したかのような長い後髪に、そろえられた前髪をもつ結愛は

「短歌でも詠んでみます?」

と答えた。


短歌かあ。

陽葵は考えた。

「たしかに大和撫子らしさはある……」

とはいえ、古風すぎやしないか? とも思った。

でも、お金がなくても出来る遊びであるのも確かだ。

このような社会になってしまっては遊べるような電子機器は高級品となり、経済的に余裕のある家庭でないと買うことはなくなっている。

150年前の人たちは、自転車も買ってもらえなかったという話だから、そういう社会に戻っていっているのかもしれない。

もっとも、当時は社会の成長から未来が見えたかもしれないが、今はひたすらドン底に向かっている闇しか見えない。

そのような時代だから、言葉だけあれば遊ぶことが出来る短歌は、なるほど理にかなっている遊びではあった。


「それは嫌」

言い出したのは結菜だった。

短髪の結菜は勝ち気な性格だった。

じっとすることは嫌いだと公言する彼女に陽葵は「元気だ」という印象を持っている。


結菜の意見に結愛は

「じゃあ、何をするのでしょう?」

とやや機嫌を損ねたように言葉を放った。


考えたがなかなか出てこない。


結菜が口を開いた。

「街をちょっと歩かない?」

彼女らしい意見がでてきた。


少し前に街を歩いて昔の写真と照らし合わせるという、ちいさな探検をした。

空き地となっている場所は過去に駅があったり、今は廃墟となっている建物が実は活気のあった駅ビルだったりと、古き良き時代を感じることが出来る。


「きょうはやめましょう」

今度は結愛が反対した。


「どうして?」

「移動がつらいですから」

確かに。


ここに来るまでにも割れたアスファルトを歩き、撤去されない倒木を避けたりと疲れている。

今に始まったことではないが、少しの移動でもアトラクションに等しいのである。

結局その日は三人でダラダラと話をして、時間が過ぎていった。

何はともあれ、三人でこうして共通の時間を過ごしているのが一番良いのかもしれない。

貧しいながらも平和な日常が、かけがえのないものなのだろうなと陽葵は感じていた。


西日が差し込んだ頃、三人は公園を後にした。

きょうも目立って特別なことはなかった。

それにしても最近はずいぶんと色々なことから鮮度が失われた気がする。

それは、自分が歳をとったからだろう。

御年90歳になる陽葵は、曲がった腰と上がらなくなった足にムチを打ちながら家路についた。

最近の子どもは「かわいい名前」が多いので思いついた作品。

陽葵(90)とか結愛(90)という時代が来るわけです。

まあ、自分の感覚が古いだけなのですが。

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