初戦闘のお話
「これは詰みましたね」
「や、勝手に終わらせないでくれる!?」
手持ちのスキルとアイテムを確認後に森の中を探索中、異世界で遭遇した第1住人のサイクロプス(仮)さん。
一つ目の3メートルくらいありそうな人型なのでそう仮称しておく。
こちらが検知する前に発見されてたらしく一直線に向かってきた。残念ながらどう見ても友好的な気配は感じられない。
そして《気配察知》と《気配遮断》の役立たず!スキルレベルが低いせい?えぇ、分かってますとも!
「絶対序盤の敵には見えないんだけど」
「転移先は各々ランダムですし仕方ありませんね、短い人生でした」
狸さんの戯言を聞き流してとりあえず逃げる。が、移動速度は相手の方が上のよう。
獣道っぽいところを走っているが整備された道ではないため当然足場は悪い。転倒は一発アウト間違いなしだ。向こうはお構いなしに周囲の枝をへし折りながら真っ直ぐ向かってくる。
「狸さん囮になって!」
「貴方が生きてるうちはこの世界に干渉できない仕様です」
横を浮遊しながら並走してくる狸さんに割と酷い事を言った自覚はあるがお役所対応で平然と返された。
というか聞いてない新設定。ほんの数分前に私が死んだら自分も死ぬって言ってたのに!生き残ったら問い詰めてやる。相手は1体、覚悟を決めて迎え撃つ。
スキルで槍を作製して構える。
ゲーム脳的考えで目が弱点と判断。背の高い相手なのでリーチのある槍でそこを突く。違ったら泣く!
相手の武器は片刃の斧。種族に合わせた大きさなのか凄く大きい。160センチで設定したこの体と同じくらいの刃渡りで何処に当たってもアウト間違いなしの重量感、超怖い。
受け止めるなんて絶対無理、逸らすのは素人の私がやったところでそのまま真っ二つか体勢を崩されてアウト。他のVRゲームで出来てた事でも失敗時のリスクが高すぎる。故に回避一択。
凄く怖いけど大きく振りかぶる予備動作があったのでたぶん楽勝。真っ直ぐ振り下ろしてね、そう信じてる。
単純挙動の敵万歳!
避けて槍で眼を一突き。勝った、第一部完!
「は?」
瞼に弾かれた。
眼に穂先が迫ってきたら思わず目を瞑るよね、うん。
弱点(仮)を守るために瞼が固くなるのは進化としては正しい形だね、うん。
神様、難易度低下を要求します。などという軽い現実逃避をしつつ距離をとる。
敵の攻撃を避けるのは何とかなるけど弱点(仮)を攻撃してもしっかり防御してくる。
相手の攻撃を避けながら何度か狙ってみるけど防御上手いね、きみ。
もう少し楽に勝たせてくれてもいいんだよ?
瞼を槍で貫くには単純に攻撃力が足りないみたい。一応小さな傷は付いてるのでもう少し強い力を加えればいけそうではある。瞼の傷はすぐ回復してるみたいだけど。腕や足も同様で表面に傷は出来てもすぐに塞がってしまう。槍を足に突き刺して足止めを狙ってみたけど筋肉固い、抜けない、動き止まったところに振り下ろし。死ぬかと思ったよホントに!手放すのがほんのちょっとでも遅かったらヤバかった。
そんな思いをしたにもかかわらずその傷もあっさり回復。私の槍も目の前で折られる筋肉パフォーマンスを見せつけられた。この野郎。
やっぱり狙うなら眼かな、呼吸狙いで咽もありだけど人間と同じ構造してるか分かんないから却下。
逃走はたぶん無理で魔力・体力切れという制限時間ありのオワタ式の初見ボス戦。
いいでしょう、四捨五入すると20年にもなるゲーマーの力を見せてくれるわ!
武器は刃渡り20センチ程度の短剣を2枚目の符で作製。
体重を掛けた振り下ろしか勢いをつけた突撃で威力を上げたいところであるが、そのためには先程よりも更に接近することを余儀なくされる。
作戦は単純だけど決まってる。
逃走中に見掛けた大きな木へ相手の攻撃を避けながら誘導。さすが異世界、直径10メートルくらいあるのでは?斧を木に大きく食い込ませて攻撃の手を封じる。相手が武器を手放して行動を切り替えたらアウトのお祈りポイント。相手の行動に依存する対人戦では絶対やらないお祈りプレイだけど見た目通りの脳筋であって下さい、おねがいします!
誘導、回避そして脳筋馬鹿でありがとう!
相手は大木に食い込んだ斧を引き抜こうとして停止中。
斧を足蹴にして相手の腕を駆け上がり両手で構えた短剣を勢いそのままに顔面に突き刺す。
瞼が間に挟まったけど今度は勢いもあったおかげで何とか貫通して刺さるがちょっと浅い。
サイクロプス(仮)が絶叫して暴れる。振り落とされそうになるが必死で頭部しがみ付く。
相手が動くうちは追撃の手を緩めないのは基本中の基本。追加で籠手を生成し両手を組んで短剣の柄を思いっきり殴って更に深く刺す。
欲を言えば短剣を引き抜いて傷口の拡大を狙いたかったけど相手の手が迫ってきたので断念し体から飛び降りる。顔面に突き刺さった短剣の武器化を解除して出血ダメージを狙う。というかそのまま死んで!
迫る手から逃げていったん距離をとる。追撃をしたいところなんだけど視覚を失って無作為に暴れまわるあれに近づくのはちょっと無理かな。
見えないならこのまま逃げちゃおうかなと考えてたら力尽きたのかうつ伏せに倒れて動かなくなった。
死んだふり作戦とかやられると判断に困るんだけどどうしよう?
「凄いですね、絶対ここで死ぬかと思いました。レベルが上がってスキル取得出来る状態です。落ち着いたら取得することをお勧めします」
戦闘では全く役に立たないことが判明した狸さんが相変わらずどうでもよさそうな口調で話しかけてきた。
相手が死んでレベルが上がったらしい。生死の確認を判断してくれるのは何気に有り難い。
スキル取得も重要だけどこの子には追加で聞きたいことができた。
「まずは死体漁りが来る前にこの場を離れることをお勧めします」
確かに周囲一帯血の匂いが酷い。種族的に鼻が利くせいなのかどうかは要検証案件。夜目も種族特性として持っていて欲しい所である。日が暮れたらわかることだけど駄目な場合も考えて夜を凌ぐ拠点を早めに確保したいところである。太陽(仮)はちょうど真上で日を照らしているが時間の概念や夜が存在しない世界の可能性も無きにしも非ず。だって異世界だもんね。
あと返り血はあんまり浴びていないけど上半身の衣装は白いため赤い血は少しでも目立ってしまう。染み抜きとか大丈夫かな?匂いとかも気になるところである。臭くならないよーにと。
キャラメイク時に作って貰った衣装は特別な性能はないけど見た目は自由に設定できるとの事だったので個人的な趣向を思いっきり叶えて貰った。イメージは狐巫女さんです、はい。
巫女装束って言ってもコスプレじゃない方のやつなので悪しからず。
白衣に緋袴、桜が描かれた千早を上から羽織っている。この千早は結構気に入ってたのに血で汚れてしまった、残念。足元は白足袋に赤い鼻緒の下駄。何でかわからないけど下駄なのに運動靴みたいに動ける不思議、神様ありがとう。でもこの格好は転移者バレ確実では?似た服装がある世界という事を祈ろう。
使用済みの符を回収しようとしたけど武器化時に破損のあったものは再利用不可のようだ。折られた槍の武器化を解除したら符は破れていた。これ初期配布の符10枚なくなったら私詰みでは?短剣と両手の籠手は無事だったので3枚回収して残り9枚。他の術の発動体でもあるので優先的に確保が必要だよね。うーん、考える事が多すぎて困る。とりあえず早めに移動をと
「勇敢なお嬢ちゃん、少し待ってくれないかの」
姿は見えずとも聞こえてくる渋い声。
イベントの連続発生は正直もう余裕ないんで困ります、いいえを選んでもいいですかね?
毎日投稿とかしてる人は文字数に関わらず凄いなーと自分でやってみて感じる所存であります。




