第三話
「……ばってんそげん時、此奴が銛を持つ腕に触腕を絡めてきょってん。ちゃんど息継ぎに上がりょんとしちょったタイミングでのん…さすがに今回ばかりは死を覚悟したけろ……」
次の日、入学式も普通の高校と違うのかと身構えて臨んでみたわけだけど、さすがに入学式は普通?に行われたよ。校長がタンクトップ1枚で教壇にあがり今日取ってきたであろうタコを持ち上げて小一時間ほど話してる以外はね…
やはり島民の数が少ないから基本的に1学年に1クラスみたいだ。当然ながら花咲さん、烏梅さんとも同じクラスだ。クラスの人数は僕を含めて38人、男子がが9人で女子生徒が28人だ。うん?1人足りないって?最後の1人だけど…どっちのカテゴリに入れて良いものか…女子制服着た身長190オーバーの髭生やしたゴリゴリマッチョ(三つ編みおさげのボ◯ーオロゴンを想像してほしい)をどちらに入れるべきか僕には決められなかったんだ。
「それでは皆さん、健康で楽しい高校生活を送っていきましょう‼」
そう言って簡単にこれからの高校生活について説明をしてくれているのは担任の白鷺しらさぎ 優子ゆうこ先生だ。150センチ程の低身長、丸眼鏡をかけた童顔で美人と言うよりは可愛らしいという印象かな。クラスのみんなも顔なじみなのか生徒は「優ちゃん」なんて呼んでる。
「もう!優子先生でしょ‼」なんてぷりぷり怒る姿は庇護欲を掻き立てられるよね‼ ピカー
「それから、みんなしってると思うけど今日から一緒に学校生活を過ごす彼に自己紹介をして貰いましょう!一ノ瀬 光輝くん、入ってきて」
ついに来てしまった…自己紹介…人間は初見の印象で8割決まるって言われるしここでクラスのみんなに印象付けないと…僕は返事をして教室に入り黒板に自分の名前を書いて振り返った。一応入学式で最後尾に座っていたからちゃんと顔を見るのははじめてかな?花咲さんが小さく手を振ってくれた、烏梅さんは、っと目を背けられたよ…2人とも妙に顔が赤い気がしたのだけど大丈夫かな?
「初めまして!一ノ瀬 光輝です、東京から転校してきたのでまだまだ分からないことだらけですが仲良くしてくれると嬉しいです。これからよろしくお願いします‼」
……無難だ。無難すぎるだろこれ‼華々しく高校デビューを決めるんじゃなかったのか一ノ瀬 光輝‼ほら、みんなも口を開けてあんぐりしてるよ……うん?
「息をすっやうに敬語つかってりゃん…?」
んん?
「鶩どんも使えんの知っちゃっけど…こんまできりゃーなんは…」
などとちょっとよく分からないことを口々に言ってる。
「白鷺先生、敬語っていうか、標準語ってそんなに珍しいのですか?」
試しに聞いてみたところ、
「んひゃあっ!」
ヘンな声でちょっと飛び跳ねながら答えてくれたよ。どうしたのだろうか?
「ご、ゴホン……そうですね、ハム島ではあまり外から来る人が少ないから方言での生活が身に染み付いているんですよ、かく言う私も仕事上必要なのでかなり頑張って喋ってますしね」
あー確かに、ハム島の人たちからしたら方言が普通なわけだしね。
「えーっと…とりあえずこれからよろしくお願いします」
もう考えるのをやめたよ。とりあえず狙いどうりではないけど印象に残った?なら良しとしよう。
「それじゃあ席は…っとあそこの空いてる席で良いかな?」
と指定された席は烏梅さんの隣だ
「昨日ぶりだ、これからよろしくね烏梅さん」
と声をかけてみるも烏梅さんは俯いて目も合わせてくれないや…嫌われちゃうような事をした覚えが無いんだけどなぁ…なんてちょっと落ち込んでると、
「よっ、転校生!俺は鶯谷 シキってんだ、光輝って呼んでも良いか?」
突然前の席の男子制服を着た子が右手を出しながら話しかけてくれた。
僕はもちろんと言って握手に応えた。あれ?なんだろうこの違和感は?
「しかし、東京なんて都会からこんな島に来るたぁ…いろいろ驚いたろ?」
「ああ、うん…そうだね、もはや個性のような何かのオンパレードすぎてね…」
「俺も来た時はどうしよかと思ったぜ…ま、ハム島の連中も悪い奴は居ないから宜しく頼むよ」
「こちらこそ!これからよろしくね!」 ピカー
どうやら鶯谷くんも移住してきた人みたいだ、今股間が光った気がするけど気にしないでおこう、ただの鳩胸だよ鳩胸、決して男装女子なんかじゃ無いはずさ。
学校初日なので、新学期特有の説明とHRだけで終わりだ。チャイムが鳴るなりみんな帰る支度をし始めている。僕も帰ろうかと鞄を手に立ち上がると
「東京ばどんなとこだけろ?」
「新幹線ってどげな乗り心地なのん?」
とよほど外からの人が珍しいのであろう質問攻めにあった
質問ついでにみんなにも簡単に自己紹介して貰って少しは仲良くなれたかな?
「んだば、まんた明日な」
とひとしきり満足したのかみんなそれぞれ帰っていく。さて、僕も帰るかな
僕は明日からの楽しい?学校生活に期待しながら帰路についた。
その時の僕は知る由もなかったのだ、まさかあんなことになるなんて…