どうか、許して欲しい。
「私の敬拝する神様、断罪の時間です。」の神様視点の話。
どうか、許して欲しい。
しかしそう願ったって君は、君達はきっと許してはくれないだろう。
許してもらう方法は一つ。
私が死ぬことだろうか。
なぜなら君達崇拝者は、私の教えが書かれた聖書の内容はしっかりと守る。
私のことを恨んでいるのにね。
死は罪への償いだ。
自らの命で相手を許してもらうための捧げもの。
それで大抵の人は溜飲が下がるし、罪を侵した者の魂も輪廻に戻り、浄化される。
互いに良い事づくしということだ。
だから聖書の内容に入れた。
けれどそれの対象は人間なんだ。
神は対象外なんだ。
神は死んだら完全に消滅してしまう。
やり直しが効かないんだ。
だから神の一柱の私もそうなる。
だから、だからさ。
別の罪の償いを探そうではないか。
神を裁くものは存在しない。
私以外にも神はいるが、基本不干渉だ。
そして争ったら互いの力がぶつかりあって消滅してしまう可能性がある。
大体の力の強さは同じくらいだからね。
これまで神よりも上位者なんていなかったから、神を裁くことなんて起こらなかったし、必要ないものだった。
このようなことは予想していなかったんだ。
私の力を与えた者がその力を糧にして、私を超えてしまうなんて。
君達にしてしまったことは申し訳ないと思っている。
手違いだったんだ。
気付いたときには遅かったんだ。
君達に力を与えて転移させた。
その場所には私の力を必要とする者がいたから。
私自身が直接力を貸すことは出来ない。
私の力が強すぎてその世界を崩壊させてしまうかもしれないから。
私は細かい力の調節が苦手だしね。
だから私を崇拝してくれる者達を集めて転移させた。
指定した場所に送ったはずだったんだ。
けれどどこで間違えたのか分からないけど、別の神の世界に送ってしまったんだ。
大人数だったから久しぶりに大きい力を使ったんだけど、大きすぎたみたいで違う次元に行ってしまった。
無事到着したかは確認しなかった。
だから君達がその場所で人の悪意から発生する魔物に襲われていること。
その世界の神がそのことにすぐさま察知して使徒を使い異物となっていた君達を処分しようとしたこと。
神から異例の抗議を受けるまで気づかなかった
んだ。
そうなった頃には君達は私の力に馴染んでいて、全てが遅かった。
転移させようとしたけど弾かれてしまった。
死んでしまった者の魂は時が経ちすぎて輪廻に戻せなかった。
私の手違いによって起こった問題も対処していて、君達のことにあまり時間が割けなかったこともあるだろうが。
そうした結果、君達が私に恨みを抱いてしまうのは仕方ないだろう。
そうして最後の一人となっても、私を殺しにくることも。
話し合いをしよう。
けれど君は自分の今までの苦労を私に詳しく語り、話しかけても夢中で聞いてはいない。
君は誤解している。
ようやく話を終えたので必死に話しかけるが、言い訳は不要だと君は言い放った。
待って。
待ってってば。
暗くて、真っ暗で、何も見えなくて。
永遠と、ずっと、終わりが見えない。
そんなところに行くのは嫌だ。
もうそんなところは懲り懲りだ。
消滅するとはいっても肉体だけだ。
精神は消滅しようとしても出来ない。
ずっと何もないところで彷徨い続ける。
戻りたくない。
戻りたくないんだ。
だからどうかこんな私にも慈悲をくれ。
許してくれ。
他のことならなんでもする、します。
だから、どうか――――――――許して。