9.2人の配下
僕の前に佇む2人。2人はそれぞれ自分の肉体を観察している。茶髪の男性の方は普通に自分の手足を見るのだが、首無し騎士の女性の方は、自分の頭を掲げて自分の体を見えるようにしていた。美人な女性が生首を掲げる姿はなんだかシュールだ。
「おおっ! 何年振りかの肉体だ! しかも生前よりも体が軽いぞ!」
女性はそういうとその場で跳んだりして、体の調子を確認していた。少しすると自分が見られている事に気が付いたのか、恥ずかしそうにするが。
「こ、これは失礼した、マスターよ。我が名はリーシャ・アインスタイン。フィスランド聖王国元聖騎士団長をしていた。再びこの世に蘇らせてくれたマスターに忠誠を誓う」
……なんだか物凄く堅そうな人だな。片膝をついて騎士の礼をする姿はかっこいいのだけど。その横に立っている男性の方は、そんな首無し騎士、リーシャを見て面倒臭そうに口を開いた。
「あ〜、僕の名前はクロノ。ただの平民だからこの生首騎士みたいに礼儀は無いけど、まあ、よろしく、ボス」
2人のテンションの落差が激し過ぎる。物凄くキラキラした目で見てくるリーシャに、物凄く眠そうにしているクロノ。なんだか不安になる2人だな。
「僕の名前はハルト。魔力で伝わったと思うけど、僕は聖王国へ復讐するために君たちを蘇らせた。君たちは何のために僕の僕になったんだ?」
2人は僕の意志に賛成したから、僕の魔力を受け入れてここに来たんだ。なら、何のために彼女たちが僕の意志に賛成したのかを知りたい。ただ、生き返りたいとかだったら消すだけだけど。
「ふむ、それは当然だな。私が受け入れた理由は、今もいるかわからないが、聖王国で聖騎士団長をしている家系を潰したいためだ。
見た目の通り私は若いがそれなりの実力を持っていた。それが、当時私の部下にいた副団長が妬んだのだ。自分が女で若い奴に負けるわけ無いと。
その結果、私の家は無実の罪を着せられ、家族全員死刑となった。ただ、死刑になったのなら、権力争いに負けたと諦められるのだが、あの男は、私の妹たちを!」
……なるほど。そこまで言われれば恨む気持ちもわかる。次を促すためにクロノを見ると
「僕は自分の実験を聖王国に取られたんだ。物に魔法の能力を付与する方法を。その方法を聖王国に話すと、担当の奴が相談すると言って持って行ったんだけど、いつの間にかその担当の手柄になっていたよ。
まあ、あの時の僕が安易に教えたのが不味かったんだけどね。
その研究の成果で手に入れたお金で妹の病を治すつもりだったんだけど、当然金は入らず、妹は死んだ。その後、残りの研究成果を僕から盗むために、その担当の奴が刺客を放って僕を殺させたんだ。
だから、僕の願いは彼女に少し似ているかな」
クロノはもういいかな? と言いながらそっぽを向いてしまった。なるほど、2人ともそれなりに恨みは持っているみたいだ。それに2人から感じる力はかなり高い。
聖騎士団長をしていたリーシャは当然としても、平民であるクロノも魔法師としてはかなりの才能があるのだろう。これはいい拾い物をした。
「君たちが僕の意志に賛成した理由がわかった。これからは僕の手足となって貰う。ただ、今すぐ出て行っても数の暴力に僕たちは勝てない。それは2人とも理解しているはずだ」
2人は僕の言葉に頷く。彼女たちは数人程度なら余裕で殺せるだろうけど、それが国レベルになれば話は違う。聖王国はこの世界で1番大きな国だ。人口は1千万ほとの国に喧嘩を売ろうと思えば、最低でも100万は兵士が欲しい。
だけど、今の僕じゃあダルクスのような大軍は作れない。いくら神の力の一部を持っていたとしても、それを使う僕の能力が低ければ、ただの宝の持ち腐れだ。
まずは魔力の底上げだな。今はリーシャとクロノを蘇らせただけで、僕の魔力は枯渇している。実は立っているのも辛い。こればかりは何度もやって耐えるしか無いね。
幸い、この空間なら幾らでも実験が出来る。ついでに兵士も増やせるし。指を切られるより辛くは無いだろう。
暗黒魔術に関してはダルクスに教えて貰うとして、後はリーシャに近接戦闘を教えてもらおう。僕自身が少しでも戦えるようになっている方がいいだろうし。
クロノには世界のことを調べてもらおう。聖王国を攻めるにしても足がかりとなる土地があった方が良いだろう。それに村の奴らも殺したいし。
まずは
・自分の戦力アップ(リーシャに近接術、ダルクスに魔術)
・クロノに世界の情勢を調べて貰う(足がかりとなる土地の選定)
この2つを直近の目標にしよう。早く動きたいが、僕は才能も無ければ実力も無い。このまま攻めても勝てるわけが無い。少し考えて動かなければ。
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配下 2人
リーシャ・アインスタイン
元フィスランド聖王国聖騎士団長
聖黒首無騎士
クロノ
平民
レイスウィザード
協力者
ダルクス・ブラッドレイ
暗黒魔術師
ナタリア
堕天使
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