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73.次への準備

 さて、例の女弓兵はっと……おっ、いたいた。思ったより後ろの方に待機させられていた。あの辺りはまだ攻め切れていないな。それなら実験も兼ねて行くとするか。


 僕は黒炎の魔結晶に魔力を流して、炎を纏う。スザクと同じように炎を翼に変えてはためかせる……慣れないから上手くは飛べないが、まあ、あそこに向かうだけなら十分だろう。


 後ろの方で怒鳴り散らしている兵士に向かって僕は飛ぶ。理由は特に無い。強いて言うのなら近くに女弓兵がいたからかな。


 女弓兵は、飛んでから僕に気が付いて矢を放ってくるけど、黒炎の壁を前に作ると、矢が僕に届く前に燃え尽きてしまう。魔力を纏わせたとしても同じだった。


 僕は飛んでくる矢を無視してそのまま叫ぶ兵士へと降りる。兵士は避ける暇もなく僕が踏み、そして黒炎で燃え尽きてしまった。おおっ、よく燃えたな。


 空から降りて来た僕を見て戸惑う帝国兵たちだけど、僕の足元で燃える死体を見て大将とか言っている。えっ、この覇気もなく、実力も無さそうな奴が、この戦争の大将だったのか? 普通に殺してしまった。


「くっ、皆は距離を取れ! あの炎に触れるな!」


 女弓兵はそう言って帝国兵たちを僕から距離を取らせて、1人矢を放ってくる。これは好都合だ。彼女を兵士たちから引き離す手間が省けた。範囲の中が僕と女弓兵だけになったのを確認して


「ダークルーム」


 魔術を発動する。魔術を発動すると、僕と女弓兵を囲むように4本の黒い柱が地面からせり上がり、そこから更に柱へと闇の壁が伸びていく。女弓兵は慌ててそこから出ようとするが、間に合わず囲まれていく。天井も同じく。


 外から見ると突然黒い箱が現れたように見えるだろう。当然、この箱も僕の魔術で同じように魔力を吸収して放つ事が出来る。壊すにはこの箱の耐久力以上の攻撃をしなければならないが、外の連中に出来そうな奴はいなかったな。


 僕は睨みつけながら弓に矢を番える女弓兵へと近づく。まあ、そんな事をすれば当然女弓兵は矢を放ってくるのだけど。それを僕は人差し指と中指で挟んで防ぐ。女弓兵は驚きながらも矢を放ってくるけど意味は無いよ。


 でも、流石にこのままだと話も出来ないので、女弓兵を闇で捕らえる。地面から伸びた闇が両手を縛る。これで弓は撃てないだろう。


「そう、睨まないでよ。僕は君に提案をしに来ただけなのだから」


「……なんですって?」


 僕は睨みつけてくる女弓兵に対して一言


「愛する人の呪いを解いてあげるよ」


 ◇◇◇


「うぅぅーーー!」


 僕が目的を果たしてから少しして戻ると、配下たちと亜人たちが分かれて占領されていた街にいた。


 亜人たちは取り返した街の中を見回り、特にすることの無い死霊の配下たちは1ヶ所に集まっていた。ただ、誰かを囲むように。


 気になったのでそこに向かうと……駄々をこねる子供のようにレルシェンドが唸っていた。何やってんだこいつ。


「あっ、マスター。どうにかしてくれ。レルの奴がずっと駄々をこねて言う事を聞かないんだ」


 僕が近づいた事に気がついたリーシャが困った風にそう伝えてくる。レルって呼んでる分親しくはなっているのだろうけど……。


「それで、レルシェンドはどうして唸っているんだ?」


「戦い足りないそうですよ。先の戦いは彼女の中で満足するものではなかったそうです」


 エルフィオンの言葉で納得した。しかし、あれでも戦い足りないのなら生前どうしていたんだ? まあ、予想はつくけど。生前も我慢が出来ずに、最終的に同族を襲ったのだろう。その結果、同族に殺されたってところか。


「あっ、旦那! 戦おうぜ! みんな誘っても戦ってくれないんだよ! さっきのじゃあ物足りなくて! なあ、なあ!」


 レルシェンドも僕に気がつくと抱き着く勢いで迫って来た。尻尾もバシンバシンと地面を叩く。


 うーん、どうしようか。このまま放っておいたら生前のように仲間を襲うだろうし。仕方ない。


「わかった。ロウ。相手してやってくれ」


「ワウ」


 僕が呼ぶと僕の影から姿を現わすロウ。大きさは配下になる前の神獣の時から変わらないので、外に出ているとかなり場所を取ってしまう。


 ロウも狭そうにするので、それなら魔術で僕の影の中にいたら? と話すと、喜んで入って行ったのだ。それからは特に用がない時は僕の影の中で休んでいるのだ。


 戦いが終わった後は満足して影に潜っていたロウだが、僕の呼び声に反応して出て来てくれた。悪いね。


「おおっ! ワクワクして来た!」


 そんなロウを見て大喜びするレルシェンド。まあ、程々にしてくれ。1人と1頭は街の外へと走って行き、しばらくすると地響きと雷が轟く音が聞こえてくる。また、派手に暴れているな。


「それで、これからどうするのだ、マスター?」


「ん? 流石にこのまま帝国を攻めるのは無謀だから、一旦帰ろうと思う。リーシャには続きで帝国の周辺諸国を回ってもらいたいし、クロノの仕掛けもあるからね」


 僕がそう言うと、リーシャが物凄く嫌そうな顔をする。まあ、今回は大丈夫だよ。エルフィオンにも付いて行ってもらうから。だから、そんな嫌そうな顔をしないでくれよ。


 まあ、その前に一旦亜人国には戻るけど。上手い事女弓兵、セシラが動いてくれたら楽なのだけど。


 まあ、そこまでは望まずにいくかな……あっ、マルスが死にそうな顔で寝てやがる。初めての戦争で仕方ないが、もう少し鍛えないとな。マルスもリーシャに連れて行かせるか。

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