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32.入城

「やっぱり、烏合の軍では正規軍には勝てなかったな」


「ソレモ仕方ナイ。イタノハ1番上デ町ノ小隊長クラス。アンナノガ軍ヲ率イルナンテ出来ルワケガナイ。軍ヲ率イル事ノ出来ル兵士ハ皆王都ノ正規軍ニイルカラナ」


「そうだな。まあ、それ込みで考えていたからマイナスでは無いから良いんだけど。逆に配下が増えて最近軍を足止め出来て、作戦的には成功だろう」


 僕たちは仲良く並びながら歩いていく。仲良く話している姿からは、こんな話をしているなんて想像出来ないだろう。


 既に僕たちは、メストア王国の王都へと来ていた。貴族たちを使って反乱を起こさせたのは、軍の目をそちらに向けさせるため。別にこの王都の中で戦っても良かったのだけど、一般市民が巻き込まれるのは良くないからね。


 別に、可哀想とかそう意味ではない。働く者がいなければ国は回らない。そうなれば、食べるものなども入ってこない。するとどうなるか……リーシャが怒るんだよ。こいつは、本当に食事に関しては五月蝿いからな。あまり殺し過ぎると経済が回らないから、そういうのも考えないといけない。


 それに、戦えない奴より、戦える兵士を配下にした方が自力が違うしね。


「ふむ、やはり聖王国の王城に比べたら小さいな」


 そんな元凶のリーシャがとんでもない事をのたまう。……おい、王城の目の前でそんな事を言うなよ。兵士たちが睨んでいるじゃないか。


「そうですね。ハルト様が住むには小さ過ぎる気がします」


 こら、ミレーヌも乗らなくていい。確かに、ここを拠点とするつもりではあるけど、無駄に大き過ぎるのは好きじゃない。色々とあったけど僕の心は庶民だ。小さい普通の家の方が安心するんだから。


「デワ、建築ノ出来ルスケルトンニ作リ直サセヨウ」


 させなくていいから。しかも、何だよ、建築の出来るスケルトンって。そんなスケルトンがいたら……戦いで有利になるじゃないか! 


「お前たち、由緒ある王城に向かって何を言うんだ!」


 おっと、流石に聞こえているか。気が付いたら目の前には3人の兵士が僕たちを睨んでいた。遠巻きからは、王都の住人たちがヒソヒソと見ている。まあ、周りからしたら僕たちは怪しいからね。


 黒いローブを着た僕、フードまでかぶったネロ、全身黒の修道服を着たミレーヌ、黒と銀色の新しい鎧を纏ったリーシャ、こんな黒ばかりの集団を見たら、誰でも怪しく感じるよな。そんな事を考えていたら


「おい、貴様たち、聞いているのか!?」


 と、兵士の1人が怒鳴ってきた。かなり怒っているようで既に手で剣の鞘を握り僕たちを睨みつけていた。沸点低いなぁ。まあ、無視だけど。


「ミレーヌ」


「はい」


 ミレーヌが兵士たちに指を向けると、光の縄が兵士たちを捕らえる。その場に倒れた兵士たちを僕たちは見向きする事なく通り過ぎる。


「さあ、行こうか。自分たちの家になるんだ。真正面から玄関を潜ろうか」


 僕は暗黒魔術を発動する。右手に闇の弾を作り、王城の門へと放つ。大きな音と共に吹き飛ぶ門。僕たちは開いた門を堂々と通り抜ける。


「ネロ」


「了解」


 ネロに指示を出すと、ネロはローブの中から小袋を取り出す。取り出した小袋を宙に放り投げ、魔法で袋を破った。そして小袋から飛び散る石のかけら。


 石のかけらは、魔結晶と呼ばれる魔力が凝縮されて出来たかけらだ。それだけで魔法の発動媒体となるもので、主に魔物の体内で長い年月をかけて出来るものである。


 普通なら魔物を倒して取るか、魔力の密度が高い洞窟などで採掘しないといけないのだが、今回のは僕が無理矢理作った。


 これは、魔力の高い人なら誰でも出来るらしい。ただ、長い時間かけて出来た天然の魔結晶に比べたら、使える魔力の量は少なく脆いのだ。


 この世界にはクロノが考えて、聖王国に盗まれた魔道具がある。クロノが作ったのに比べたら粗悪も良いところだが、それを動かすためには魔結晶が必要で、皆壊れないように使うのだ。だから、人工の壊れやすい魔結晶は、魔道具には使えない……のだが


 僕の魔結晶を使いクロノが作った魔道具は問題なく発動した。この辺は実力の差だと思う。


 散りばめられた魔結晶は地面に落ちた衝撃で効果が発動する。その効果は対となる魔結晶を持つものを強制的にこちら側に転移させるものだ。罠とかでも使えるけど、今回は


「アアアアァァァァアア!」


「痛い痛い痛い痛い痛い!!」


「ころしてぇ、ころしてぇ、ころしてぇ、ころしてぇ!!」


 200体近くの異形、ネロはこいつらの事をオプスキラーと呼ぶ。そんなオプスキラーたちが僕たちの後ろに並ぶ。この光景を見た住人たちは叫び逃げ惑う。


「さて、行こうか」


 城を貰いにね。

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