141.暗黒魔術師vs天弓
「オールレンジアロー!!」
天弓のアタランテがそう言いながら弓を引いた瞬間、彼女の周りに矢が大量に出現する。そして、僕を四方八方から撃ち抜こうと迫って来た。
僕は1歩も動かずに周りに闇の壁を展開する。それだけで、アタランテが放った矢を取り込んでしまう。アタランテは分かっていたのだろうけど、苦虫を潰したような表情を浮かべる。
「どうしたんだい、アタランテ。そんな顔をして」
「別になんでもありませんわ!」
アタランテはそのまま同じように矢を大量に放って来る。このまま同じような事を続けるなら捕らえるのは簡単なのだけど、聖天使の1人がそんな簡単なわけがない。
同じように矢を放っているように見えて、時々種類の違う矢が飛んで来ているのがわかる。それらも今のところ闇の壁に阻まれているけど、この壁を突破しようと色々と試行錯誤しているようだ。
このまま突破出来るのを待ってみても良いのだけど、そこまで余裕があるわけでもないから僕からも攻めるか。
僕は矢を放って来るアタランテに向かって右手を伸ばす。アタランテは僕の右手を見て警戒するけど、残念ながらこれはただ右手を上げただけ。
本当は僕の後ろから溢れ出た闇が空高く登ってアタランテへと落ちていく。降り注ぐ途中で全てが針のように変わり、アタランテへと降っていく。
アタランテは翼をはためかせて針を次々と避けていくけど、流石に雨のように降る闇の針を避けるだけでは避けきれない。ただ、そこは『天弓』と呼ばれるだけはある。
空から降る闇の針を矢で撃ち落としながらも、僕の方へと矢を放つ事が出来るのだから。僕の配下の中にはこれ程弓術に長けた配下はいないからね。
降り注ぐ闇の雨を次々と撃ち抜いていくアタランテ。僕はそこに召喚したマッドデーモンを向かわせる。中身は獣人国で吸収した獣人の死体を使っている。しかも、黒神の力で作った闇を纏わせた特別製だ。
「っ! 死体からこのような化け物を作り出して! 死者を冒涜しているのですか!?」
「別にそんなつもりはないよ。ただ、使えるものを使っているだけさ」
「……これらも矢を吸収して。仕方ありません、エクスティンクションアロー!!」
先程まで放っていた矢とは魔力の質が変わった矢が放って来た。今まで放っていた矢に比べれば数はかなり少ないが、その矢はマッドデーモンに向かっていく。
そして、本来なら闇の力で矢を吸収させるのだけど、その矢がマッドデーモンに触れた瞬間、闇が消えて風穴が空いた。その矢はそのまま真っ直ぐと僕の方へと飛んでくる。
矢を防ぐために闇の壁を目の前に展開するけど、それも貫く特殊な矢。これなら貫けるとわかったアタランテは次々と放って来る。
しかし、アタランテの矢も全てを貫くわけではないようだ。何度も闇の壁で防いでいると気が付いたけど、少しずつ貫く範囲が小さくなっていく。そして、8枚目の闇の壁にぶつかると、アタランテの矢を吸収してしまった。それならと、僕は闇の壁を厚くする。それだけでアタランテの矢はこちらに届かなくなった。
一瞬突破口にも見えた特殊な矢だったけど残念だったね。また悔しがっているのだろうかとアタランテを見るけど、アタランテの表情は変わらずに闇の針を撃ち落とし避けながらも僕を狙っていた。
不審に思いながらもアタランテの足元から闇を伸ばしていく。そろそろ捕まえないとね。そう思っていたら次の瞬間左側が暗くなった。続いて焼けるような熱さが顔を襲う。
更に右肩、右脇腹、右膝と次々と衝撃が走り、その後に熱さが僕の体を襲った。直様衝撃のあった箇所を見てみるとそこにはアタランテの矢が刺さっていた。
……なぜだ? 飛んで来た矢は全て闇の壁で防いでいたのに。訳もわからずにアタランテを見ると、僕を見て微笑んでいた。そして
「これで終わりです」
何も番えていない弓を僕に向けていたアタランテが矢を放つ動作をした。次の瞬間には顔に衝撃が走り、僕は後ろへと倒れるのだった。
1巻が発売して1週間が経ちました!
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