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130.とある兵士の話

「さて、ハルト様とは連絡を取る事ができました。皆様聞いていた通り、予定通り進めていきましょう。ネロ様」


「アア、準備ハ出来テイル。例ノ部隊モ死霊部隊ノ中ニ忍ビコマセテイル」


「ありがとうございます。ハルト様が数を集めてくださったとはいえ、数にはまだまだ差があります。更に後ろには天使が控えていますからね。効率良く殺して、兵を増やさないといけません。皆様、よろしくお願いします」


 ◇◇◇


「これは聖戦であるっ!! 愚かにも我らが女神フィストリア様に宣戦布告など、余りにも愚かしい事を行なった悪魔を討伐するための!!」


 聖王国の将軍が声を遠くまで届けることのできる魔道具を使って叫ぶ。1月前、聖王国に宣戦布告をしたといわれる魔国パンデモニウムとかいう国の軍が目の前に列をなしていた。


 ただ、並ぶ兵士たちは普通の兵士ではない。兵士たちの中に生きている兵士はおらず、1番前には体の肉が腐り、紫色へと変色したゾンビたちが革鎧を纏い列を作り、その後ろには骨だけのスケルトンが鎧を装備して並んでいた。


「魔法部隊前へぇ!!!」


 魔物でありながらも整然と並ぶ姿を見て、俺は思わず唾を飲み込んでしまうけど、将軍は怯むことなく叫ぶ。


 開戦前の口上なんてものは今回の戦いには存在しない。魔国からはすでに宣戦布告をされており、相手は魔物のなのだから。


 ザッと前列に出る魔法師たち。全員が手をかざすか、増幅器となる魔道具を前に出して、演唱を始める。


「放てぇぇぇっ!!!」


 そして、将軍の号令とともに一気に放たられ魔法。数的に10万は下らない魔法が、魔物の頭上へと降り注ぐ。


 しかし、一瞬にして魔物たちの頭上に黒い煙が広がり、魔法が魔物たちへと落ちる事は無かった。全て黒い煙に吸収されるように阻まれてしまったのだ。同時に進軍を開始する魔物たち。


 数は10万ほどでこちらより少ないとはいえ、魔法を容易く防がれた衝撃でこちらの動きが鈍かった。魔物たちは真っ直ぐとこちらへと向かってくる。


「ちっ、次弾放て!」


 将軍は向かってくる魔物に対して再度魔法を放つように指示を出す。その指示に従うように魔法師たちが再び魔法を放つが、魔国側も再度黒い煙で防いでしまった。


 これ以上魔法を放つのは意味を成さないと理解した将軍は魔法師を後ろに下げて、重歩兵を前に出す。重歩兵たちは1番前に並ぶとガシャンッと人を隠せるほど大きな盾を前に出して壁を作る。


 魔物たちの先頭を走るゾンビは盾の壁に気にした様子もなく突っ込んできた。しかし、ゾンビと言っても大人の大きさだ。それがかなりの数盾にぶつかったため、衝撃音が鳴り響く。


 だが、重歩兵は慣れたもので、ぶつかったゾンビたちを跳ね返す。吹き飛ばされたゾンビたちは後ろにいるゾンビにぶつかり倒れ、更に後ろから走ってきたゾンビに下敷きにされていた。


 連合軍とはいえ、かなり連携が取れているな。まあ、相手が知能の低いゾンビやスケルトンだからそう思うのかもしれないが。


「ロイド千人長。そろそろ俺たちも動きますか?」


 そんな光景を見ていたら、後ろに立つ副官であるゲインがそんな事を尋ねてきた。俺はその言葉に溜息を吐きながら首を振る。


「馬鹿野郎。何十万といる大軍なのに、千人程度の部隊が動くわけないだろう。それに、それぞれの国のお偉いさんが、聖王国に良い顔しようと頑張っているところに、態々邪魔しに行く必要は無いだろう。無駄に傷付きに行く理由も無いしな」


 倒れ込んだゾンビたちに盾の隙間から槍を突き刺す重歩兵たち。しかし、相手はゾンビだ。そう簡単に死なない。今も槍に突かれながらも動いて掴みかかろうとするゾンビたち。


 あー、重歩兵たちは魔物、それも死霊系の魔物の相手に慣れてないのか? 奴らは普通の魔物と違って痛覚を持っていない。だから、足を刺そうと腹を刺そうと怯む事は無い。やるなら頭を潰さないと。


「あーあ、あそこの一角攻め込まれていますよ。どうします?」


「どうもしねえよ。このまま待機だ。ここから行けるわけがないだろう。それに、後ろの兵士たちが穴を埋めている。今日は出番は無いかもな」


 数だけで言えば5倍近くの兵力だ。早々俺たちに出番は来ないだろう。


「それよりも、敵をよく見とけよ。今まで相手してきたのは全然違うんだからよ」


「どういう事ですか?」


「聖王国に喧嘩売るような国だぞ? 普通に考えて普通じゃ無いだろ? それに、天使が出てきてるのに逃げる素振りも見せねえ。奴らには天使にも勝てる何かがあるんだろうよ。だから、お前らも死にたく無かったらあの国を注意しとけよ?」


 俺は死にたくねえからな。

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