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128.魔術の強化

「おー、なんか変なのが来たなぁ」


 僕はマルスが相手しているステラが召喚したものを見て1人で呟く。確かステラは英霊召喚とか言っていたね。って事は過去の英雄があのクソ女神の配下になっているって事かな?


「俺たち相手にして余所見とは余裕だなぁ、コラァッ!!」


 少しマルスの方を見ていたら、火の玉がいくつも飛んで来た。僕は下がりながら暗黒魔術で短剣を宙に作り、火の玉を防ぐ。


 その火の玉の中を進んで僕の側まで迫って来た勇者ノエルが、低い姿勢から聖剣を振り上げてくる。両手に逆手に短剣を持ち、ノエルの聖剣を受け止める。


 聖剣から放たれる聖気がピリピリと僕の肌を焼くけど、それを気にしている暇はない。ノエルは直ぐに聖剣を引いて切りかかってくるからだ。


 振り下ろしてくる聖剣を短剣で逸らしながら、宙に別の短剣を作り、ノエルに向かって放つ。ノエルは振り下ろした聖剣で短剣を全て弾き、鋭い突きを放って来た。


 確実に心臓を抉るように突き出された聖剣。その剣先を僕の目の前で作った漆黒の球体で包み込み受け止める。


「っ!? 魔力を!」


 その球体で何が行われているかわかったノエルは、直ぐに後ろへと下がる。しかし、聖剣を辿ってノエルの魔力を吸い込んだ球体は、大きく膨れ上がる。


侵食ノ太陽(イクリプスソル)


 そして、限界まで膨れ上がった球体から幾多もの棘が伸びる。前までは魔力を持つ者全てに伸びるようにしていたけど、今回のは指向性を持たせて、全てノエルへと向かうようにした。ノエルは聖剣を構えて何か技を放とうとしたけど


「俺を忘れんじゃねえ!!」


 と、赤髪の男がノエルの前に立ち、迫る棘に向かって炎を纏わせた拳をぶつける。態々貫かれに行くなんて。そう思ったけど、彼らの実力を甘く見ていたようだ。


 僕が放った漆黒の棘の先端が溶けて無くなっていたのだ。奴の手に纏っている炎はかなり高温らしく、僕の魔術が溶かされてしまった。


「ったく、俺よりどんどんと前に出やがって。勇者に何かあれば俺が怒られるんだよ」


「メテロ」


 赤髪の男は、そんな事をノエルに言って彼より前に出る。メテロと呼ばれた男の体から魔力が流れ出し、その魔力が炎となって周りを焼いていく。


「あの聖女様たちと知り合いのようだが、お前が女神様に宣戦布告した男か?」


「そうだけど、なに? 君もクソ女神ラブなわけ?」


「クソ女神!? くくっ、あははははっ!! んな事を言う奴初めてだぜ! 別にあの女神の方が好きなわけじゃないさ。あの女神がどうなろうと知ったこっちゃねえし。ただ、あんな女神でも、信仰している奴らがいるんだよ。そいつらの希望をてめえにやらせるわけにはいかねえんだよ」


「……そうかい。それなら君も殺すまでだ」


「殺せるもんならやってみな!」


 全身から炎を噴き出し迫るメテロ。僕は宙に数百にもなる短剣を作り出し、全てメテロへと放つ。


「はっ、お前に出来ることが俺に出来ないと思うなよ!」


 メテロがそう言うと同時に宙に炎の短剣がいくつも舞い始めて、メテロに向かう僕の短剣とぶつかっていく。


「僕もいるんだよ!」


 その間に体に光を纏わせたノエルが迫り聖剣を振り下ろして来た。直ぐに右手に剣を作り受け止めるけど、即席で作った魔力の剣と、腹の立つ女神の力が付与されている聖剣では、当然僕の方が負ける。


 軽々と切られた剣を手放しながら後ろに下がる。宙に舞う短剣を増やしてメテロとノエルに向かわせるけど、メテロは同じように炎で短剣を作り出し、ぶつけて防ぎ、ノエルはご自慢の聖剣で飛んできたものを全部切っていく。


「どうした? これがお前の本気か? なら俺たちには勝てねえな! 炎轟魔術、炎神化!」


「聖天魔術、聖神化」


 どうしたものかと考えていると、メテロが少し残念そうな表情を浮かべながら魔術を発動した。それに合わせてノエルも。すると、2人から大神木やロウになる前の神獣だった時に似た魔力を感じる。


 クソ女神にあってわかったけど、これが神が持つ魔力のようなものなのだろう。そして、2人の速度は先程とは別人のように格段に上がった。


 全身に……というより全身が炎に変わったメテロは、僕の目の前に現れて右腕で殴りかかってくる。僕は暗黒魔術で両腕を何重にもコーティングして、交差させて受け止めるけど、骨の芯まで焼けるような衝撃を受けて吹き飛ばされる。


 腕に纏わせた魔力は意味もなく焼き尽くされたようだ。両腕は黒く焼け崩れて、胸元まで焼けていた。背中と胸にかなりの痛みがあり、口から血が止まらない。


 そこに、ノエルが聖剣を突き出してくる。レルシェンドのブレスのように真っ直ぐと伸びてきて、僕の体を貫く。そしてそのまま


「終わりだ」


 腹に聖剣を突き刺してきた。腹に聖剣が刺さった瞬間、焼けるような痛みが体全身を襲う。


 ……ははっ、まさかあんな技があるなんて。呆気なくひっくり返されちゃったじゃないか。両腕は炭のように焼かれて、胸元も同じように。背中は瓦礫にぶつかった衝撃でボロボロで、腹には聖剣が刺さり、そこからクソ女神の力で体が焼かれていく。


 このままだと死んじゃうなぁ。……はぁ、ここではやるつもりは無かったけど、まあいいか。半分ぐらい生かせば。


「っ!? メテロ! 直ぐに離れるよ!」


「ちっ、わかってるよ!」


 僕の魔力が膨れ上がったのがわかったのか、僕の腹から聖剣を抜き下がるノエル。メテロもノエルの声に合わせて下がる。


 暗黒魔術で従えているベルギウスとロウには、マルスたちを下がらせるように命じる。同時に僕の血を使って魔術を発動する。


血ノ触手(ブラッディテンタクル)


 かなりの魔力と血で作った赤黒く染まる触手が現れて、見境無く獣人を掴んでいく。そして、絞るように捻り潰す。触手を辿って流れる血から魔力を吸収して、僕の糧とする。


 200人ぐらい殺した辺りで僕の腕と胸と腹の傷が元に戻る。その光景を見ていたメテロが


「……これは確かに生かしてはおけねえな」


 なんて言っていた。別に君らが僕を悪魔だと狙って来なければこんな事をする必要もなかったんだけどね。


「ぎぃ……は、はなして……」


 おっと、そういえばもう神のかけらを持った獣人がいたんだっけな。僕は触手に捕まった彼に向かって掌を向けて、パーからグーに変える。すると、グシャッと潰される獣人。同時に彼の魔力を全て吸収する。


 彼のしょぼい魔力に乗って流れてくる神のかけら。僕の暗黒魔術のかけらと混ざって、1段階上になる。これなら


「黒神化」


 体全身を闇が包み込む。彼らの感じからしてこんなもんかな?


 ……さて、第2ラウンドを始めようか。

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