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127.獣国での争い(2)

「……ハルトのクソ野郎がぁ!! 俺を舐めやがって!!」


 俺の前でハルト様を見ながら怒りに叫ぶ白銀の鎧を着た金髪の男。やべぇ、凄えキレてる。俺の方なんて全然見ないで、今は赤髪の男と勇者と戦っているハルト様の方を視線だけで殺せそうなほど睨んでいた。


 他の場所でもベルギウス様が空で相手の竜と戦い、少し離れたところでロウ様が雷を纏った男と白いローブを着た男と戦っていた。


 そして、俺は目の前の男とその後ろにいる銀髪の女性を任されたわけだけど、全然俺のこと眼中に無さすぎて笑ってしまうな、これ。


 しかし、やっぱこの人らはとんでもねえわ。少しぶつかっただけで、俺たちがいた公園の周りの家屋や木々は吹き飛んでしまった。


 獣人たちは逃げ惑い、兵士たちは近づいて来られず、子供たちは泣き叫ぶ。ここの人たちからすれば、日常が地獄に変わった瞬間だろう。


 ……そして、それをやったのが他の誰でもない俺たちだという事だ。ハルト様の故郷がある国でも思ったが、あの人にとって自分の物以外の人に対する命の価値が軽すぎる。


 敵対した人に対しては容赦無いのはわかるけど、それ以外の人に対してもだ。ハルト様の過去に何があったのかは簡単には聞いているけど、話に聞いただけと、実際に実際に体験したのじゃあ、価値観が違うのだろう。


 ……俺は、それがいつ俺たちに向いてくるのかわからないのが怖かった。今は隷属されて少なからず信用はされているとは思うが、それがいつ無くなるか。なんかの拍子で無くなれば、あの人は簡単に俺たちを殺すだろう。


「マルス、どうしたの?」


 そんな事を考えていたらティアラが後ろから声をかけてくる。……どうなるかわからない事を考えても仕方ないか。いざとなれば……ティアラを守るために俺はあの人と刺し違ってでも……。


「ティアラ、お前は後ろの子供たちを頼むよ。俺はハルト様に頼まれた通りあの2人を相手する」


「……わかったわ。気を付けてね。話に聞いていたからわかっていると思うけど、男の方は聖騎士で、女の方は聖女だから」


 俺はティアラの言葉に頷く。色々と思う事はあるが、今はとにかく目の前の事を済ませよう。俺は職業の力を願い発動する。


 シュッと俺の全身を包み込む鎧。元から俺の体の一部だったかのように体に合って動きやすい。右手には漆黒の剣を、左手には漆黒の盾を持っている。リーシャ様との訓練で覚えた装備召喚。この力のおかげで俺はティアラを守る事が出来る。


 俺は剣を握る右手に力を入れて踏み出す。確かリーグと呼ばれていたかな? 白銀の鎧に身を包む男は、さっきからハルト様を睨んで動かなかった。俺はその隙をついて向かったが


「っ!! リーグ、危ない!!」


 と、後ろにいた聖女、ステラがリーグに声をかける。その声で俺に気が付いたリーグは慌てて剣を振り上げて俺の剣を受け止めるが、バランスが悪いため、リーグの剣を弾くことが出来た。


 俺はそのままガラ空きになったリーグの顔に向かって盾を振る。盾は真っ直ぐとリーグの顔に入り、殴り飛ばす事が出来た。


 吹き飛んで地面を転がるリーグに追い打ちをかけようとしたが、俺を阻むように聖女のステラが光魔法を放ってくる。


 俺は近づく事が出来ずに、盾を構えて向かってくる魔法を逸らしながら距離をとった。ステラは顔を押さえるリーグの元へと行き魔法で治療をする。さすが聖女ってところか。治癒速度が半端ない。


「……お前、あのクソ野郎の側にいた奴だな。よっぽど殺されたいらしいな?」


「ハルト様からの命令でな。お前たちは捕まえるように言われているんだよ。大人しく捕まってくれないか?」


「……はぁ? ふざけるのも大概にしろよ? ハルトの野郎もお前も舐めやがって! ぶっ殺してやる!!」


 どうやら、リーグは沸点が低いようで少し煽るとキレてきた。こんなのリーシャ様の前でやったらボッコボコにされちまうぞ。


「おらぁっ!!」


 大雑把に振り下ろしてくるリーグ。俺はそれを盾で逸らして、リーグの眼前に盾を持っていくように動かす。弾かれた側から目の前に盾があるため、そこから一歩が踏み出せないリーグ。


 なんて軽い一撃なんだろうか。こいつの剣には重みが感じられない。リーシャ様なら盾を弾かれ腕を痺れさせた上で、懐に入って来て更に剣を振るってくるのに。


「ちぃっ! 職技光爆波!!」


「馬鹿野郎が。職技反黒壁」


 俺の隙を狙う事なく苦し紛れに職技を放とうとしてくるリーグ。そんな雑な技が当たるわけがないだろうが。


 俺は振り下ろしてくるリーグの剣に合わせて盾を前に出して職技を発動する。盾の周りに黒い波紋のようなものが浮かび上がり、剣が触れた瞬間白い爆発が起こるが、盾に接している部分を全てリーグに跳ね返した。


 リーグは爆風に巻き込まれて吹き飛ぶ。そこに合わせて俺は飛び出し、リーグの光爆波に似た技、黒爆波をリーグへと放った。


 しかし、倒れるリーグの前にステラが立ち、手に持つ杖を前に出しながら職技を発動した。


「職技英霊召喚!!」


 ステラの職技が発動した瞬間、空から光の柱が落ちて来て、俺の職技を逸らした。そして、その柱に流れるように降りてきたのは天使の女性だった。ハルト様、流石にアレの相手はきついですよ?

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