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126.獣国での争い

「……2人は知り合いなのかい? それに伝書鳩って」


「……まさか、テメェが!!」


 笑いながら教えてあげると、ノエルが2人の方を見て尋ねるが、僕の言った事に気が付いたリーグが、剣を振り上げて迫って来た。


 周りは慌てて止めようとするけど、既にリーグは僕の目の前に。そして


「死ねぇぇぇっ!!!」


 光り輝く剣を振り下ろして来た。リーグの職業は確か聖騎士だったっけな。聖なる力を纏った剣が左側から斜めに振り下ろされる。


 僕が何も反応せずに剣を振り下ろせたため、僕を見下したように笑みを浮かべるが、残念だけどそうじゃないよ。君の攻撃なんて


「なっ!?」


 防ぐのに動く必要が無いんだよ、悪いけどね。左肩で振り下ろす事が出来ずに止まった剣を見て驚くリーグ。


 そのまま固まる事なく直ぐに動き出して、首を切り落とすように横に振って来たのは良いけど、理解力が無いようだね。再びガッと止まるリーグの剣。


「残念だけど、君程度の実力じゃあ、僕に傷はつけられないようだね、リーグ」


「くっ……くそがぁっ!!」


 僕が蔑むように微笑んであげると、思った通り憤慨し、めちゃくちゃに剣を振ってくる。僕はそれを一歩も動く事なく全て受け止める。勿論無傷で。


 流石にこのままでは不味いと思ったのか、雷を纏った男とノエルがそれぞれ剣を構えてやって来た。左右からそれぞれ剣を振り下ろしてくるのを、僕は周りに短剣を作り出して受け止める。流石に体では受け止められないからね。


「アルノードさん、いまのうちに!!」


「ああ!」


 そして、ノエルが更に迫ってくるのと同時にアルノードと呼ばれた雷を纏った男は、リーグを掴んで後ろに下がる。


「はぁっ!」


「ははっ、流石に君は警戒しないとね。僕と同じ力を持っているようだから」


 僕は後ろに下がりながら短剣をノエルの四方八方から放つ。ノエルは全てを把握しており、舞うように動きながら迫る短剣を弾くか避けるかをし、そのまま僕に近付いてくる。


 全ての短剣を掻い潜り目の前まで迫って来たノエルは、顔目掛けて聖剣を突き出して来た。顔を逸らして避けるけど……熱っ!? 顔の側にあるだけでピリピリと熱いんだけど!


 僕は慌ててノエルから離れると同時に更に短剣を作り、近寄れないようにする。熱く感じた頰を触れると、爛れたように傷付いているでは無いか。


 これは、聖剣から発せられるクソ女神の力のせいかな。絶対に僕用に強化して来てるね。今回出会ったのは全くの偶然だろうけど、明らかに僕を意識しているのはわかる。


「ねえ、ハルト! どうしてあんな事をしたのよ!? 同じ村の家族だったのに!」


 ノエルも僕を警戒して距離を取っていると、その後ろからクソみたいな声が聞こえて来た。声のした方を見ると、両手を胸の前で合わせて祈るように話しかけてくるステラの姿があった。


 僕はその言葉を全く理解が出来なかった。思わず固まってしまった隙をノエルに狙われて聖剣が迫ってくるけど、それが目に入っていながらも動く事が出来なかった。


「ハルト様!」


 後ろで僕の名前を呼ぶ声がと右肩から走る痛みが脳をかけるけど、今はそんな事を考えている暇はなかった。


 ……同じ村の家族だと? お前の言う家族が僕にした事を忘れたのか? 大切な母さんにした事を忘れたのか!?


「なっ、ぬ、抜けない!?」


 僕の肩に食い込んだ聖剣をノエルが抜こうとするけど、暗黒魔術を発動して、影で聖剣を絡めているため中々抜けない。


 ジュゥッと焼けるような音がするけど、焼けた側から新たに影で覆うため問題ない。そして、僕から膨れ上がる魔力を感じたのか、聖剣に無理に魔力を流して影を断ち切り、僕の側から急いで離れた。


 しかし、離れる寸前に暗黒魔術で作った槍を四方から出現させ放ったため、ノエルの体は槍の穂先に切り裂かれる。


「ステラ……まさか、君がそこまで間抜けとは思わなかったよ。君たちが僕に……母さんに何をしたのか忘れたのかい? 僕はそれをただ村の奴らにやり返しただけさ。それの何が悪い?」


「あ、あれは、仕方なかったのよ! ああしなかったら皆殺されていたもの!」


 必死に言い訳を放つステラ。別に今更何を言われようとも僕の心に響くことは無い。ただ、無残に無慈悲に君たちを殺したいと思うだけだ。


「来い、ベルギウス、ロウ」


 僕は空中に影で魔法陣を作り、離れた場所で待機してもらっているベルギウスを召喚する。同時に影の中で待機していたロウも呼ぶ。突如空に現れた竜に、ノエルたちは驚きの声を出すが、その中でも


『貴様は、ベルギウス!!』


 と、一際驚いたような声が聞こえて来た。声の主は、ノエルたちが乗って来た白竜だった。白竜はベルギウスを見るなり、翼をはためかせてベルギウスと同じ高さに飛ぶ。


『む? くはははっ、これは懐かしい顔だ。光竜リヒトよ。お前の親に似てきたではないか?』


『私の親を殺したお前がそれを言うか!? しかも、なぜ生きている!? 勇者に殺されたはずなお前が!?』


「ベルギウス、やれ」


『おっと、我が主人から命令されてしまった。悪いがお前も殺させて貰うぞリヒト』


 どうやら、竜同士の因縁があったようだけど、仲良く話しをしている暇は無くてね。残念だけど。ロウの方にはアルノードと呼ばれた男と白いローブを着た男が向かっている。僕の前にはノエルと赤髪の男が。取り残されたリーグとステラは……良し


「マルス、君に仕事をあげよう。あの2人は僕が殺すから、マルスは捕らえてくれ」


「わ、わかりました!」


 本当は全部自分がしたいのだけど、目の前の2人を放っておくわけにはいかないしね。僕と同じ神のかけらを持つ2人を。

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