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114.聖女御一行(2)

 2週間後

 魔国エステキアのある場所


 ◇◇◇


「グハハハハ! この程度か勇者どもよ! この程度の実力でよく我が魔王様を倒そうなどと息巻いたものよ!」


 高笑いしながら私の身長の倍近くある棍棒を地面に叩きつける魔族。その衝撃だけで地面は大きく揺れ、私たちは飛ばされてしまう。


 くっ、まさかここまで力の差があったなんて。私たちに立ち塞がっているのは鬼族の魔族で、その中でも最強の七大罪『憤怒(サタン)』の称号を持つ男で、ギルデ・サタンと呼ばれている。


「ちっ、うぜえんだよ! 職技『聖光斬』!」


 高笑いするギルデに向かうリーグ。もう、あの馬鹿は! そのリーグの行動に舌打ちしながらも助けに行くアルノードさんと、この前合流したピテさんが弓を引く。


「はぁあっ!」


 ギルデへと切りかかるリーグ。普通の魔物ならリーグの一撃で吹き飛ぶのだけど、ギルデは容易く弾く。追い討ちをかけようとするけど、そこにアルノードさんが振り下ろされる棍棒を受け止めた。


「ぐぅぅっ!」


「クハハッ、流石は雷光。この程度とはいえ受け止めるとは。だが……弱過ぎるわ!」


 ギルデが怒鳴った瞬間、今までとは比べ物にならないくらい圧が増した。そしてアルノードさんは一瞬で押し潰されてしまった。


 ピテさんの矢は、ギルデに届く前にギルデが放つ魔力に弾かれてしまう。このままじゃあ不味い!


「セイントアロー!」


 私はギルデに向かって聖なる矢を放つ。それと同時に回復魔法をリーグとアルノードさんにかける。少し距離が遠いため回復が遅いけど、無いよりマシなはず。


「ごめんみんな。待たせちゃって。ここからは僕がやる。職技『聖鎧武装』!」


 そう思っていたら、後ろで準備をしていたノエルからギルデに勝るとも劣らない魔力が吹き荒れる。そして、体を覆う輝かしい鎧。それに反応してか手に持つ聖剣も輝いていた。


 そこからはギルデとノエルの一騎打ちだった。私どころかアルノードさんでも間に入る事の出来ない戦い。一撃一撃が大地を削り、大気を震わせる。


「……クソが」


 その光景を見てリーグが悔しそうに歯を食いしばっていた。……リーグはいつもノエルを意識していたものね。多分悔しいのだろう。


「……まさか七魔将がこれほどとは。ノエル様以外、我々ではとても」


 それに、アルノードさんの言う通り、七魔将の強さは私たちが思っていた以上だった。この先はわからないけど、今のままじゃあノエルの足を引っ張るだけだ。


 ……でも、どうして聖王様は私たちに魔王討伐の任を与えたの? 長年戦って来た相手ならある程度の実力は知っているはず。私たち、ノエル以外は太刀打ち出来ないのを知っていたはずなのに……。


「クハハッ、流石は勇者だな。しかし、それでもまだ我には届かぬ。魔王様に届く前に潰しておくとしようか!」


 そして、更に膨れ上がるギルデの圧。まさか、まだ上があったなんて!? 私は出来るだけ強化魔法をノエルへと付与する。ほんの微々たるものしか無いだろうけど、それでも、かけないよりはマシ。


「くっ、なんて圧だ。体の奥底から震えそうだ……だけど、僕は引かない! 勇者としてあなたを倒す!」


「よくぞ言った! ならば、我が一撃を受けてみよ!」


 剣を構えるノエルと、そこに向かって棍棒を振り下ろそうとするギルデ。どちらの魔力も膨れ上がり空気が軋むのがわかる。そして、どちらも同じようなタイミングでそれぞれの武器を振るう。


 2人の武器が衝突する瞬間、空間が軋み、そして魔力が霧散していった。


「むっ?」


「……なんだ?」


 誰もが呆然とする中、2人の間に動く人影があった。


「いやー、間に合って良かったッスよ。危うく勇者様が殺されるところっしたからねー」


 2人の間にいたのは金髪の狐目の少年だった。確か、聖王様と一緒にいた……


「クハッ! まさか、十二聖天が1人が来るとは。わざわざ殺されに来たのか? 天秤座(ライブラ)よ?」


「はは、まさかー? 流石に僕じゃあ彼らを守りながらあなたを相手するのはキツイッスからねー。今日はこのまま引かせて欲しいッス」


 そうだ。聖王国で最強の十二聖天の1人の天秤座様だ。どうしてここに? アルノードさんも驚いているし。


「少し、聖女様たちに用があってッスね。ちょいっと帰らせてもらうッスよ」


「この我が許すとでも?」


「そこをなんとか許して欲しいッスよ」


 そう言いながら睨み合う2人。そして、2人から膨れ上がる魔力を感じる。な、なんて魔力なの? さっき勇者であるノエルと戦っていた時以上の魔力を2人は放っていた。私はその側で震える事しか出来なかった。


 一触即発の2人。このままどうなってしまうのかと見ていると


「ふむ、久しい故郷もこうも変わっておるとはのう」


 と、鈴の鳴るような凜とした声が聞こえて来た。みんなが声のする方を向くとそこには黒のドレスを着た金髪のツインテールの女性が、黒い日傘を指して立っていたのだ。

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